シングルタスクVSマルチタスク 効率がいいのはどっち!?
編集というのはかなりマルチタスクな業務です。
原稿を読み、時に書き、デザイナーやライターなどの関係各所と連携をとり、企画を考え、販促を検討し……、そして、そもそも同時に何本もの企画を動かしています(さらに、このnoteも……!)。
「今週はゲラチェックのみだけ!」みたいなシングルタスク的な仕事の進め方だったら、集中して取り組めるのに……と思うことがありますが、仕事柄、それは許されません。
ちなみに、シングルタスクとマルチタスク、効率がいいのはどちらかをGoogleで調べると、以下のようにAIが回答してくれました。
1行にまとめると、「シングルタスクの勝ち」ということです。
ところが、日本におけるロジスティクス工学の第一人者である鈴木邦成先生は、『はかどる技術』のなかで、そうした意見に異を唱えています。
確かに、これを読むと、私はないものねだりと根拠のない「シングルタスク信仰」に陥っているのではないか、と感じました。
みなさんはいかがでしょうか?
該当箇所を抜粋してお届けします。
損をしているシングルタスクの信奉者!
人の脳はシングルタスクに向いているという話を聞いたことがあります。長時間、集中して勉強するのが効率的なのではないか―このように長時間の集中学習のメリットを主張する人もいます。
しかし、シングルタスクがよいのかマルチタスクがよいかは、その人個人の状況や習熟度・熟練度次第なのです。
ただし、一般的には、適度なブレイクを挟みながらマルチタスクで勉強するほうが、長時間、メリハリなく、シングルタスクを行うよりも効率的になるといわれています。これは、短い休憩を取ることで脳の疲労が軽減されることが関係しています。
実際、大谷翔平選手の活躍で注目されている野球の二刀流もマルチタスクの一種です。投手と打者を両立させることで、気持ちや視点の切り替えもできるわけです。
マルチタスクと相性のよい分散学習
こうしたマルチタスク型の勉強方法は「分散学習」と呼ばれ、その効果は多くの教育心理学の専門書で提唱されています。分散学習の研究の歴史は古く、19世紀の終わりに実験的な研究が行われ、その効果が確認されています。
12個の無意味なスペルを被験者に覚えさせたところ、集中学習では75回の反復が必要でしたが、分散学習では38回で済んだというのです。
一夜漬けで丸暗記しても長く覚えてはいられませんが、「毎日30分ずつ勉強していれば試験が終わっても記憶が定着する」というイメージです。また「30分勉強したら30分家事をして、それから30分また勉強する」といったように、マルチタスクにすることで記憶に定着させるのも分散学習です。単純な暗記系科目などでは分散学習のほうが集中学習よりも学習効果が上がるわけです。
近年はスマホなどを使った短時間学習が1つの流れになってきているので、これまでとは異なる視点からの研究も増えてきています。
ただし、一般的には「集中して勉強したほうが効果が大きい」という認知バイアスが浸透しています。そのため、「資格試験などでは覚えることも多く、集中して勉強しなければ合格できない」と思ってしまうのです。
しかし、マルチタスクで勉強を進めていけば、短い息抜きと、気分転換が適度に得られます。それにより勉強のモチベーションも維持しやすくなります。
試験勉強の合間に休憩時間を入れ、その際に、メールやSNSの確認、会社の資料の見直しや文書作成などを行う。滞りの解消という視点からも理にかなっているやり方といっていいのではないでしょうか。
マルチタスクの優先順位や並行手順などについては、スマホのリマインダー機能を使えば十分です。いちいち時間をかけて「ToDoリスト」をつくっても、つくっている間に頭に入ってしまうので時間のムダです。
学生と違って時間の余裕がないビジネスピープルの場合、分散学習の考え方を取り入れていくことで資格試験の勉強もやりやすくなります。国家試験でいえば合格率10~40%くらいの「1年勉強すれば受かる可能性のある試験」ならば効果は絶大です。
ちなみに物流の世界でも、マルチタスクで効率を上げる「セル生産方式」が知られています。各作業者がシングルタスクを請け負うのではなく、マルチタスクを行うことで効率化をはかる手法です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(編集部 石くろ)
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