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【フォレスト出版チャンネル#87】出版の裏側|編集者になるには?
このnoteは2021年3月16日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
「中高生がなりたい職業ランキング」の意外な結果!?
今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティーを務める今井佐和です。本日はフリートークで「編集者になるには?」というテーマで、編集部の森上さん、寺崎さんとお話していきます。森上さん、寺崎さん、どうぞよろしくお願いいたします。
森上・寺崎:よろしくお願いします。
今井:今日は「編集者になるには?」というテーマなんですけれども、「中高生のなりたい職業ランキング」というものがありまして、この最新版を見たところ、1位がプロスポーツ選手、2位が薬剤師、3位がYouTuberと、時代を反映してるなぁという感じなのですが、編集者がなんと24位にランクインしているんですけれども、実際編集者は今でも人気職業なんですか?
森上:どうなんですかね。
寺崎:24位は意外ですね。
今井:えっ? 意外???
森上・寺崎:意外と高いなって。
今井:(笑)。もっと低いと思っていたんですか?
森上:めちゃくちゃ低いと思ってた。
寺崎:圏外じゃないかなと思ってたんですよ、編集者。
今井:何でですか?
森上:いやー。斜陽産業だから、出版業界。
寺崎:30年ぐらい前からずっと斜陽産業って言われているもんね。
今井:30年前から言われてるんですか(笑)?
寺崎:たぶん(笑)。わからないけど。少なくとも20年前は言われていた。
今井:えー。
森上:意外と高いなと思いましたね。テレビ業界関係が75位。それより高いなんてびっくりしました。テレビはYouTubeの影響で大変なんだろうけど。
寺崎:中高生だからね。
森上:そうなんですよね。
寺崎:実情をまだ知らないんだなーっていう。
今井:(笑)
森上:それはありますね。そういう意味ではもう1つ、今度は大学生のランキング。企業就活ランキングで見ると、出版社は19位に講談社が入ってる感じですよね。でも意外と高いですよね。もっと下かなと思ったんですけど。
寺崎:やっぱり漫画編集者になりたい人じゃないかな、講談社人気は。
森上:そっか。
寺崎:ほとんどだって言うもんね。
森上:確かに。
寺崎:講談社とか集英社とかって。
森上:そっかそっか。集英社さんもそうですよね。小学館さんも100位以内に入っていますけど、すべて三大大手の出版社は漫画持っていますもんね。まあ、そうなっちゃうのかな。やっぱそうだよなあ。そう考えると、大学生ぐらいになってくると、やっぱり現実が見えてくるという感じなんですかね。でもうれしいじゃないですか。中高生ぐらいだと、編集者っていうのは、(漫画)ってなってるかもしれないけど。
寺崎:そっかそっか。
森上:24位っていうのはちょっと「おー!」と思いましたね。意外というか、高いイメージ。
編集者に興味を持ったきっかけ
今井:ちなみに森上さんは、小さい頃から編集者になりたいっていう感じだったんですか?
森上:そうですね。実はきっかけというか、寺崎さんには前にチラッと話したことあるんですけど、うちの親父がイラストレーターなんですよ。
今井:ええーー!!
森上:そうなんですよ。フリーのね。で、自宅で仕事をやったりとか事務所でやったりとかしていて、イラストを取りにくるんですよ、編集者が。図鑑の鳥とか、花とか魚とか。細かい絵を描く、図鑑系の仕事をやっている人だったので。だから出入りする編集者がいたので、それがもう身近だったんですよね、出版業界の人が。それが1つの大きなきっかけというか、出版にはこういう仕事があるんだっていうのがあった感じですよね。それが始まりです。寺崎さんはどんな感じなの?
寺崎:僕も近いかもしれないですよ。おじさんがマガジンハウスの前身の平凡出版っていうのがあるんだけど、そこの立ち上げのメンバーで、雑誌業界では有名な人だったんですよ。そのおじさんを子供の時から見ていて、アメリカのヘビーデューティーとかノース・フェイスみたいなものを日本に持ってきた人で、正月に会うんだけどかっこいいんですよ、ミニクーパー乗って。で、ジョンレノンみたいな髪型とメガネしてね。編集者で尖ってたんですよ。で、子供の頃に編集者ってなんか楽しそうな仕事だなあっていうのがあって。うちの親父は会社員なんで、うちの親父との対比で、編集者ってすごく自由で楽しそうっていうのは原体験としてあります。
森上:1970年代、80年代?
寺崎:そう。1970年代、80年代。
森上:雑誌とかも一番すごいときですよね。
寺崎:そうなんですよね。マガジンハウスも当時めっちゃ給料がよかったらしいんですよ。広告もバンバン入ったし。今はわかんないけど。
森上:原体験はそこなんですよね。
どうやって編集者になったのか?
今井:そうすると、森上さんと寺崎さんの大学時代の就職活動はもう編集者狙い1本っていう感じだったんですか?
森上:そうですね。私はやっぱり出版社っていうのをメインで。その前まで、新聞とか受けたりはしたんですけど。まあ、大手(出版社)は全部落ちてね。大手さんは全滅で。で、どうしようかなと思っている中で1つ出版社が決まって、山、海、堂で山海堂って言うね、明治29年創業の、歴史だけは古い、社屋も古かったけどね。そういう出版社でお世話になるっていうのが始まりですね。寺崎さんは?
寺崎:僕は就職活動全然しなかったんですよ。
今井:しなかったんですか?
寺崎:そう。もう意味がわからなくて。リクルートスーツ着て、「会社に入れてください」って言うのが。ひと言で言うと、落ちこぼれなんですよ。
森上・今井:(笑)
寺崎:バイトも続かないクズ人間だったんです。で、どうしようかなと思って。消去法じゃないけど、なりたい仕事はいくつかあって、そのうちの1つが編集者だったんで、とりあえず潜り込めればなんとかなるだろうって思って。フロムエーで編集プロダクションの某大手版元の下請けの編プロがあって、そこに入ったんですよ。そこに6年ぐらいいて。
森上:そこでいろんな本をつくったんですか?
寺崎:いや。そこはちょうど電子版の百科事典が出た時期で。
森上:あー。2000年手前ぐらいですね。
寺崎:そう。1997年くらいかな。電子版はシャープが端末を出して、電子百科事典が盛り上がった時代なんですよ。それで大改訂があって。
今井:大変そうですね。
寺崎:大変なんですけどね。ここの社長が、日米安保世代の元共産党員。
森上・今井:(笑)
寺崎:相当でしょ?いや、もうこの落ちこぼれの荷物が落ち着く感じ。
一同:(笑)
今井:逆に。
寺崎:逆に。それでこれは向いてるなと思って。
今井:そこで向いてるなと思ったんですね(笑)?
森上:居心地よかった?
寺崎:居心地よかった。まわりのおじさんたちもちょっとみんな左寄りなんですよ。
森上:そうなんだね。
寺崎:そう。確実に。なので、そこに居ついちゃって、そのあとずっといるって感じですね。
森上:そう。僕も山海堂にいて、今とは全く関係ないモノをつくってましたね。今はビジネス書とかつくってるじゃないですか。最初入ったところでは、いわゆるスポーツ医学系のモノだったり、体シリーズみたいなものがあったり、筋肉の本とかそういうものがあったり。あとね、すごい体験としては、建設業界の専門誌っていうのをやっていたんですよ。月刊誌を。
今井:建設業界の専門誌! ピンポイント、ニッチですね。
森上:そう。めちゃめちゃニッチでしょ? それをやってね。「土木施工」っていう雑誌なんだけど、例えば、環状道路の建設中の工事現場に取材に行ったりとか。
寺崎:すごくワクワクするね!!
森上:すごいでしょ? そういう意味でも貴重な体験させてもらったんですけど、なんだかんだそこにずっといて、2006年にまたちょっと違う出版社に移って、そこではもう完全に書籍編集ですね。今もうちがいろいろお付き合いしている、三五館っていう会社で。そこにいたボスが、僕がずっと憧れてる編集者で、その方の下で働けるっていうことで(応募し、転職した)。まあ、かなりパワハラな会社だったけども。あんまり大きな声じゃ言えないけど(笑)。
今井:言っちゃった(笑)
森上:言っちゃったけど(笑)。かなりワンマンな会社だったんだけど、結構そこでいろいろと勉強させてもらって、憧れの編集者の下で仕事させてもらって、で2011年10月にフォレスト出版に移って来たという感じの流れなんですよね。寺崎さんって、その後は?
寺崎:その後は、編プロに潜り込んだ後にやっぱこのままじゃあかんなと。ちょっと親に申し訳ないなと思って、ちゃんとした出版社入らなきゃと思って。でも、なかなか転職が決まらなくて、なんとかまた潜り込んだのがパソコンの出版社でちょうどビジネス書をやり始めるっていうところで、自分はビジネス書がやりたかったんで入って。そこで初めて書籍の編集をイチから始めて、そこには7年ぐらいいたのかな。そこはもう管理がガチガチで、すごい居心地悪いんだけど、書籍づくりに関してはめっちゃ自由だったから。
森上:それいいね、現場はね。
寺崎:もう、やりたい放題。もう会社の金使って勉強してやろうみたいな感じで、やったって感じで。その後にフォレストに移ってきたって感じですね。
森上:だから、入ったのがほとんど同じタイミング。
今井:そうなんですか。
森上:で、たまたま同じ年っていう。
今井:え!!
寺崎:学年は1個違うんだけど。
森上:そう(寺崎さんの)学年は1個上。
今井:同い年って知らなかったです。
森上:そうです。違うところから来たって感じです、お互い。それが、9年前、10年前ぐらいになっちゃうんですよね。そんな経緯ですね。
だから、編集者はやめられない
今井:なるほど。そうすると森上さんも寺崎さんも長い間、編集者としてやってこられたかと思うんですけど、途中で別の職業になろうとかいう浮気心は沸いたりはしなかったんですか?
森上:そうですね。どうですか? 僕はなかったんだよね。
寺崎:僕もないね。
今井:一筋。
森上:他の業界行っちゃったら、通用しないんじゃないかなっていう感じ。なんかそんな感じがして。
寺崎:なんだかんだおもしろいよね。
森上:うん。おもしろい。
今井:どんなところが編集者の魅力なんですか?
森上:いくつかありますよね。やっぱり名刺1つで……。
寺崎:誰にでも会える! 基本的には。会おうと思えばね。
今井:会えるんですか!?
森上・寺崎:会えます!
森上:これは結構デカいですよね。中身はどこの馬の骨かわからないけれども、名刺で、出版社でって言うことで。名刺渡してアポイント取ったりとかして。そしたら一応会ってはくれますからね。それすごいいいよね。誰とでも会えるよね、基本は。よっぽど嫌われてない限り。
今井:(笑)
寺崎:あとこの仕事をおススメしたい人はね、飽きっぽい人。
今井:飽きっぽい人?
寺崎:飽きっぽい人に合うと思う。僕もそうなんですよ。バーって熱くなるんだけどまたすぐ冷めちゃう。「もう飽きた!」「もういいや!」って。書籍の場合、1冊ごとにそれができるんですよ。ガーっと1つのテーマを追求して著者とつくって出したら、もういい。あとは次のテーマ、また次のテーマって感じで広く浅く興味、好奇心のある人は向いているんじゃないかなと思いますね。
森上:そうだと思います。例えば年間何冊もつくってるじゃないですか。うちの編集者は各自だいたい9冊くらいつくってるのかな。やっぱりテーマがビジネス書って言っても全然著者が違ったりとか、実用書をつくるときもあるし、先月は美容系の健康系の本をつくってたのに……。
寺崎:次は金融とかね。
森上:金融とかね。いろいろ勉強になりますよね。1冊1冊作ってると。
寺崎:そう。やっぱり本で読んだり、雑誌を見たり、ネットを見たりっていうんじゃなくて、 直に著者から最初の読者として一次情報に触れられるっていうのが。
今井:それは!
寺崎:すごい醍醐味。
森上:めちゃくちゃ貴重だよね。そこが一番ワクワクするところですよね。これから出て行く情報をまず最初に手に入れられるというか、触れられるっていうかね。基本的には本をお書きいただく方っていうのは、その世界でやっぱりある程度ね。
今井:第一人者というか。
森上:第一人者の方が多いじゃないですか? スペシャリストからいろいろと話が聞けるっていうのが、この仕事をやっていておもしろいなあと思うところですね。
寺崎:あと、著者のメッセージなり、編集者のメッセージなりって、ある種、編集者と著者が共犯者のように。
今井:共犯者。
寺崎:何かを作り上げて世の中に発すると、そのメッセージに反応する人たちが出てくる、読者というかたちで。もしかしたらその読者の人生を変えちゃうかもしれないぐらいのことが、可能性としてできる、一人の人間が。これって、なかなかできないと思うんですよね。
今井:確かに。
森上: SNSで個人の発信ができてっていうのもありますけど、それとはまた違う楽しみではありますよね。ある種、ちゃんとお金を払って買っていただいて、それを読んでいただいてっていうかたちになるわけじゃないですか? それは1つの体験として、SNSとはまた違う貴重な体験というかね。
今井:この1冊で私の人生変わりましたみたいな方も結構いらっしゃいますもんね。
森上:そうですね。そのきっかけみたいなね。そういう反応があるとうれしいですよね。
寺崎:あと、今は紙の本をつくってるわけだけど、今まさに始動し始めているけど、デジタルに展開していく、デジタルのコンテンツとして提供していくっていうのも強まっていきますよね。
森上:そうですよね。だから文字のコンテンツっていうところでもね。もちろん紙っていう従来のもの(書籍)以外でも発信する出口が増えてるって感じがしますよね。
寺崎:でも、やることは一緒なんですよね。
森上:そうですよね。だから、人なのかテーマなのかわからないですけど、どっちかを決めて、そっから未来の読者の皆様とそこを橋渡ししていくっていうかね。そういった役割っていう意味で言うと、今までやってきて、楽しいなと思うことはこれからも続く職業であってほしいよね。
寺崎:あってほしいし、テーマはなくならないからね。世の中の問題とか課題は。
森上:確かにね。永遠に。常に新しいことが起こっているわけだからね。変化がね。そういう意味では一生やっていきたい仕事。
寺崎:そうですね。
今井:おーーー!!
寺崎:体力の続く限り。
森上:そうだね。そっち(体力)のほうが問題じゃないかっていうね。まあ、斜陽産業、斜陽産業と言われるにせよ、まだまだいろいろと楽しいことができるんじゃないかなという。
寺崎:可能性はあります。
森上:だからそういう意味では、冒頭の話じゃないけど中学生あたりが24位って言うね。(漫画)かもしれないけども、編集者っていう仕事に対して興味持ってくれてる若い子がいるっていうのが、またうれしいですよね。
寺崎:うれしいし、あのアンケートに答えた中高生にYouTuberよりおもしろいぞって言いたい。
森上:そうだよね(笑)。それ言いたい。まあ、YouTuberはYouTuberで言いたいことがあるかもしれないけど、こっちも負けないくらいおもしろいぞ、と言うことで、いつか同じ業界で今の中学生と一緒に働けるんじゃないかなと思うと楽しみですね。俺たちよりも相当いろいろと知識を持ってるだろうけどね。
今井:編集者業界はいつでもウェルカムです、ということで皆さんのお越しをお待ちしています。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)