#273【ゲスト/編集者】33万部突破の人気シリーズ、売れている理由
このnoteは2021年11月30日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
一人出版社・三五館シンシャの中野長武さんがゲスト
渡部:フォレスト出版チャンネル、パーソナリティの渡部洋平です。今日は編集部の森上さんともお伝えしてまいります。森上さん、よろしくお願いします。
森上:よろしくお願いします。
渡部:今日のゲストの方なんですけれども、実は僕が対談した中ではかなり記憶に残っていまして……。
森上:そうですか(笑)?
渡部:はい。この放送を流しちゃって、大丈夫なのかな? みたいな。
森上:確かに(笑)。そのゲストの方はかなりきわどいことをおっしゃっていましたよね。
渡部:そうですね。
森上:他の出版社の名前をバンバン出して……。
渡部:そうですね。本当に刺激的な内容だったので(笑)、過去の放送もよろしければ聞いてもらうとおもしろいのかなと思うんですけど、さっそくですが、森上さんから今日の素晴らしいゲストの方をご紹介していただいてもよろしいでしょうか。
森上:はい。Voicyのフォレスト出版チャンネルは昨年の11月16日にスタートしたんですけど、昨年12月にお越しいただいた、出版社の社長さんであり、編集者でもいらっしゃいます、三五館シンシャ代表取締役社長で、編集者の中野長武(なかの・おさむ)さんです。中野さん、本日はどうぞよろしくお願いします。
中野:代表取締役です。よろしくお願いします。
森上・渡部:(笑)。
中野:とにかくこれを聞いている皆さんに、インパクトを残したいなというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いします。
森上:ありがとうございます(笑)。ぜひ、爪痕をバンバン残してください。
中野:頑張ります。
森上:普段は社長なんて呼ばれないんですか?
中野:社長って呼ぶ人は1人もいません。
森上:(笑)。
中野:そもそも社員がいませんので。
森上:(笑)。
中野:イエスマンがいない状態でやっておりますので。
渡部:1人社長ですね。
中野:そうです
森上:そうなんですよね。三五館シンシャさんは前回、12月にお越しいただいた時にいろいろとお話を伺って、今回2回目、もう1年ぐらい経ちますもんね。
中野:そうですね。1年ぐらいですね。1年の間にガンガン成長しておりまして。
渡部:いや、すごいですよね。
中野:いいネタがどんどん入っていますので。
渡部:今、素晴らしいご活躍ですもんね。
森上:ほんとですよね。リスナーの皆さんに、三五館シンシャさんというのは、うちの会社とどういう関係なのかっていうことを、渡部さんに説明してもらってよろしいですか?
渡部:そうですね。前回、ゲストでお越しいただいたときにもお話をしているので、チェックしてもらいたいんですけれども、三五館シンシャさんはフォレスト出版が販売というところ、営業をしている、関係性の深い出版社さんなんですよね。要は三五館シンシャさんがつくった本をフォレスト出版が売っているという関係性なわけですよね。
森上:そういうことですね。中野さん、そういう説明でよろしかったですかね?
中野:そうですね。三五館シンシャって、皆さん、変な名前だなというふうに思っていると思うんですけども、そもそも三五館っていう出版社がありまして、私はそこにいたんですけれども、それが2017年の10月に潰れちゃったんですよ。それで、私が「シンシャ」と言うのを立ち上げて、立ち上げたのはいいけど、流通どうすんだっていう話になったときに、助けてくれたのがフォレスト出版なんです。ですから、もうフォレスト出版に私は足を向けて寝れない状態になっておりまして。
森上:いやいや(笑)。それは全然(笑)。
中野:とにかくフォレスト出版のおかげで、今、生きていると。
森上:いやいや(笑)。
中野:酸素を吸えているのも、フォレスト出版のおかげだと思っていますので、本当にありがたいです。
森上:すごいですね(笑)。うちの代表の太田がご一緒させていただくということを中野さんにご提案申し上げてっていう感じはありますけどね。
中野:そうなんです。
森上:以前もお話しましたけれど、僕も元々は三五館にいた人間なので。
渡部:そうですよね。聞いていました。このお話がきたときに、「三五館って、聞いたことある名前だな」と思って、「このカタカナのシンシャってなんだ?」って、思っていた記憶があります。
中野:三五館に一度足を踏み入れた者には、焼印みたいなものが押されて、一生涯背負っていかなければならないので。
森上:(笑)。
中野:そういうふうになってしまっていますので。
森上:じゃあ、僕も何らかのかたちで(笑)。
中野:ええ。背中に焼印があると思いますので。
森上:なるほどね。僕は、2006年から2011年まで、中野さんとご一緒していましたね。で、そこからだから、もう15年ぐらいですかね、中野さんとのお付き合いは。
中野:そうですね。
森上:15年ですよ、中野さん。
中野:ええ。
森上:うちの娘がもう16歳ですから。
中野:そうですよね。早いもんです、本当に。
森上:早いもんですね。本当にお世話になってばっかりで、ありがとうございます。
中野:いえいえ。とんでもないです。ありがとうございます。
担当編集者が語る、シリーズが人気の理由&最新刊について
森上:それで、渡部さんもご存じの通り、うちが発売ということで、営業代行というかたちでやらせていただいている、三五館シンシャさんのご本と言えば、渡部さん知ってますよね?
渡部:はい。すごく有名シリーズですよね。最初、僕が去年の12月にお話させていただいたときは『交通誘導員ヨレヨレ日記』。
森上:そうですよ。これがずっと職業別の日記シリーズということで、すごく人気のシリーズで、今はこれシリーズ何冊ぐらい出ている感じですかね?
中野:これは、シリーズで、漫画もやったりしているので、それも含めると丁度10冊目ですね。10点、出ています。
森上:10点! そのうち職業はいくつの職業ですか?
中野:職業は7つです。
森上:交通誘導員が、一番最初で。
中野:交通誘導員、派遣添乗員、メーター検針員、マンション管理員、出版翻訳家、非正規介護職員、ケアマネージャー、それで新刊がタクシードライバーです。
森上:なるほど。これは、シリーズ累計で、どのくらいいっているんですか?
中野:累計33万部です。
森上:素晴らしい! 交通誘導員が、やっぱり1番売れている感じですか?
中野:そうですね。一発目が1番売れていまして、10刷で7万6000部くらいいっているんですけども。
森上:ほうほう。
中野:その後もだいたいよくてですね。もう3冊目で終わるかなと思ったんですよ。交通誘導員が1番売れて、その流れで、次に派遣添乗員をやりまして、その売れ方が半分ぐらいだったんですね。
森上:派遣添乗員はバスですか?
中野:バスもあるし、飛行機もあるし、旅行に付き添って行く人ですね。
森上:なるほど。
中野:ですから、バス旅行もあるし、新幹線旅行もあるし、飛行機旅行もあるし、いろんな……空港でよく旗を持って、「こちらですよ」って、日本旅行とかって書いてあって、誘導している人がいますよね。あの人たちの職業で、あれは旅行会社の社員だと、皆は思っているんですけど、実はほとんどが派遣の人なんですよ。だから、あるときは近畿日本ツーリストに行って、あるときはJTBに行ってとか、転々としているような感じの人たちなので、そのような裏話も含めてやったんですけど。
森上:すみません。ちょっと話を遮っちゃって、私の悪い癖が出ちゃったんですけど。
中野:いえいえ。私もどんどん遮っていこうと思いますので。
森上:(笑)。
中野:それで、3冊目で、メーター検針員というのがありまして、それでもうだんだん右肩下がりに下がってきたんですよ。
森上:そうでしたか。
中野:そうなんです。だから、3冊目で、もうそろそろシーズン終わりなのかなと。
森上:なるほど。
中野:始まりがあれば、終わりもありますし。私も行き当たりばったりやっていますから。もうそろそろジリ貧になってきたなと。俺の人生と同じだなと。
森上:(笑)。
中野:そういうふうに思っていたんですけど、そしたら、マンション管理がちょっと盛り返しまして、さらにその後、非正規介護職員というのをやったら、それが売れまして、その後にケアマネージャーと言うのをやりましたら、それも売れまして、一回ダメかなと思ったのがまた盛り返してきて、勢いがよくなっているんですよ。
森上:なるほど。これって、いわゆる、「ロッキー」1、2、3で終わりだと思ったら、4、5、6、7といっちゃったって感じですね。映画で言えば。
中野:そうですね。だらだらだらだら、やれるところまで、「ロッキー」もやっていますけど。
森上:そうですよね(笑)。
中野:やるしかないなと思っていますね。スタローンも、もうヨレヨレになっていますけど。
森上:(笑)。
中野:もう筋肉も落ちきっちゃっていますけど、それでもやっぱりやるしかないんですよ、あれは。
森上:(笑)。
中野:もうロッキーだって戦いたくないんですよ。
森上:(笑)。
中野:でも、まわりの奴らが「やろう、やろう」って言うから、スタローンもしょうがないんですよ、あれは。
森上:(笑)。
渡部:行けるところまでやると。
中野:それと同じです。
森上:このシリーズは、最初が売れて、だんだん落ちてきて、また売れたと。シリーズ全体として見た場合の人気の理由っていうのは、どんなふうに見ていますか?
中野:やっぱり1番初めの交通誘導員の本のサブタイトルで、「当年、73歳」というふうに銘打ったんですけれども、その著者に近い年齢の人たちが買ってくれているなという印象がありまして、ですから、その後もそれぞれ、できるだけ著者の年齢も打ち出しながら、「こういう年齢でこういう仕事をしていますよ」というふうに打ち出しているんですけれども、そういう同じような世代の人たちが、「自分も70過ぎても働かざるを得ないけれども、こういうふうに仕事をしている人もいるんだ。じゃあ、自分も頑張ろう」みたいなかたちで、共感しながら読んでくれるという側面があると思っていますので、それで基本的には高齢者の方々の働き方というところに焦点を絞って、打ち出しているという感じですね。
森上:なるほど。これは、その辺の読者層、購入者層がはっきりしているんですね。
中野:はっきりしていますね。ですから、新聞広告なんかやると、すごく反応がいいんですよ。新聞も今、読者の人たちの高齢化が進んでいるんじゃないかなと思っていまして、新聞広告をやって、反応があるものと反応がそれほどないものっていうのがあるんですけど、このシリーズっていうのは、やっぱり新聞広告やると反応があって、新聞の読者層って、60代、70代っていうところが1番コアになっているかなと思うんですけど、そこに響くような本なのかなって、自分では分析していますね。
森上:なるほど。これは男女比も半々ぐらいなんですか?
中野:男女比はあんまり考えたことがないんですけど、このシリーズをつくっているとおもしろいのが、直接、事務所に電話がかかってくるんですよ。明らかにお年寄りだなっていう声色の人で、「次はどういう本が出るんですか?」とか、「次を楽しみにしているんです」とか、そういう人がいて、本をつくっていると、直接、そういう声が聞けることってあんまりないので、私はすごくそれがうれしいんですね。今日も実はまた電話がかかってきて、「読んでいますよ」って、「図書館で10人待ちでした」って言われたので、キレようかなと思って。
森上・渡部:(笑)。
中野:図書館で読んでいる奴は、私は読者だと思っていないので、「お前、いい加減しろ」って言いたかったんですけれども、そこはやっぱり丁寧に対応しないといけないので、「ありがとうございます。励みになります」って、言いましたけど、心の中では「早く切りたいな」って思っていましたね。
森上:(笑)。
中野:とにかく買ってほしいと思っております。
森上:そうですよね。これ定価が1400円ぐらいですか?
中野:税込みで1430円ですね。
森上:じゃあ、本体価格は1300円ですね。なるほど、なるほど。(値段は)少し抑え目にいっていますね、今の定価事情からしたら。
中野:はい。
シリーズ最新刊『タクシードライバーぐるぐる日記』
森上:なるほど。それで、シリーズの最新刊が『タクシードライバーぐるぐる日記』と。
中野:そうです。
森上:これがどんな内容かというのも、いろいろとお聞きしたいんですけど、著者はタクシードライバーなんですよね?
中野:そうです。他の(シリーズの著者の)人たちもそうなんですけれども、普通に生きてきた人があるところで、挫折するんですね。この人の場合は、50歳のときに自分がやっていた会社が倒産しちゃうんですよ。それで、50歳で手に職がなくて困って、どうしようってなったときに、この著者の方がそういう言い方で言っているので、私が言っているわけじゃないですから許してほしいですんですけど、「タクシードライバーしかやることがなかった」と。
森上:ほうほう。
中野:自分がやろうと思って仕事を探したら、それぐらいしか就く職業がなかった。それで、タクシードライバーを始めて、子供も養わなきゃいけない、年老いた両親が2人いて、それも養わなきゃいけないっていうかたちになって、やりたくなかったけども、タクシードライバーをやって、65歳の定年まで15年間、都内を……、タクシーってだいたい、1日300キロぐらい走るらしいんですよ。
渡部:えー。
中野:毎日、それをやりながら、子どもも育てて、ご両親はお亡くなりになって、勤め上げたという体験をまとめたのが今回の本です。
森上:この日記の中には喜怒哀楽がいろいろあるわけですね。
中野:そうです。本当にいろんな客がいるので、人と人との触れ合いで、いい話もあれば、突然罵倒されるようなことがあったりとか、どうやらそっち系じゃないかっていう客が乗ってきて、「こっち行け! あっち行け!」と、引きずりまわされるような話があったりですとか、それからもう明らかに詐欺師みたいな人が乗ってきてのトラブルの話があったりですとか、本当にタクシードライバーって一期一会で、1日数十人の人を乗せるわけで、それがみんな初めての人で、それなりのエピソードがあるので、なかなか毎日、おもしろい話が起こるので、読んでいただけるとタクシードライバーの日常と、どんな苦労があるのかっていうようなところもおもしろく読んでもらえるんじゃないかなと思います。
森上:そうですね。僕、このタイトルを聞いて、すぐ思いついたのが、昔の本で、梁石日さんの『タクシードライバー日誌』。それの現代版っていう感じですかね?
中野:そうなんです。これは持ち込みなんですけど、この人と会ったときに、私はすぐに梁石日さんの『タクシードライバー日誌』を読んで、昔に読んだことがあったんですけど、もう一回読んで、やっぱりどうしてもこれを超えたいなあと思いながらつくって、超えられたとは思っておりませんが、あれもずっと古い話で、梁石日さんの考え方みたいなものもガンガン出てくるんですけど。
森上:入っていますよね。
中野:すごい癖のある、梁石日調なんで、それよりはもうちょっとニュートラルと言うか、そんなに主張が強いわけじゃなくて、淡々と日々の出来事をおもしろおかしく書いているというのが、今回の本ですね。
森上:なるほど。すごくおもしろそうですね。渡部さん、どうですか? タクシードライバーの日常が書かれたご本ですけども。
渡部:お話を聞いていて思ったんですけど、タクシードライバーさんって、ものすごくいろんな人の人生に日々かかわっているんで、おもしろそうなお話になりそうだなと同時に、大変な時は大変なんだろうなっていう。
中野:大変なのは、まさに今ですよ。
森上・渡部:あー。
中野:コロナで……、この人は辞めてしまっているので、この人自身も現役で今、やっている昔の同僚に取材したりして、今のことも書いているんですけども、もう半分ですよ。営業収入、営収って言うんですけど、その営収が今まで1日6万、売り上げていた人が、もう3万になっちゃっていると。で、運転手さんの取り分っていうのが、そのうちの60%ぐらいですから、そうするとなかなか食べていけないっていう実情があるので、コロナが終わってはいないにせよ、収まったら、やっぱりタクシーにも乗らなきゃいけないなと思いますね。
森上:いやー、本当ですね。今は緊急事態宣言が解除された後にこれを収録していますが、それでもまだ戻ってきてないですもんね、完全にはね。
中野:今の今は戻ってきてないでしょうね。
森上:街中を見てもね。やっぱりそうですよね。じゃあ、その辺の部分の悲哀、笑える話を含めて、ほのぼのする話とか、そういったものがいっぱい詰まったご本であるということですかね。
中野:はい。
森上:このシリーズはまだまだ続きそうですか? この人気は。
中野:このシリーズは、あと3冊は確実にやることになっておりますので。
森上:おー!じゃあ、3冊が6冊になる可能性は十分ありますね。
中野:3冊が6冊になって、「ロッキー」のように、ですね。
森上:(笑)。
中野:「ロッキー」が何作までいっているのか私は知りませんけど、ロッキーがボロボロになっちゃって。
渡部:「ロッキー」、ファイナルってありませんでしたっけ?
森上:ファイナルってあったよね(笑)。
中野:ファイナルって全何作……。
森上:「ロッキー」は超えてますね、もう(笑)。
中野:「ロッキー」を超えて、「寅さん」になってますから。
森上:「寅さん」(笑)。「寅さん」は「寅さん」で50作ありますから(笑)。
中野:ええ。「寅さん」になるかもしれませんし、場合によっては「こち亀」になるかもしれませんし。
森上:「こち亀」(笑)。
渡部:職業別日記シリーズ界の「こち亀」。
中野:やれるところまで、やりますよ。
森上:そうですよね。いやー、楽しみです。楽しみにしています。
中野:ありがとうございます。
渡部:ここまで、三五館シンシャさんの大ヒットシリーズ、職業別日記シリーズについてお話ししてもらいました。そして、シリーズ最新刊は、『タクシードライバーぐるぐる日記』ということで、こちらについてもいろいろとお伺いしてきましたが、お時間になってまいりました。このチャプターに最新刊『タクシードライバーぐるぐる日記』のURLを貼っておきますので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。
中野さんには明日もゲストでお越しいただけますので、明日は、日記シリーズ以外の三五館シンシャさんのイチ押し書籍について詳しくお伺いしたいと思います。それでは明日も楽しみにお待ちください。中野さん、森上さん、本日はありがとうございました。
中野・森上:ありがとうございました。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)