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超ダークサイド心理学入門『心の中の悪魔』まえがき公開

こういう人、身近にいないでしょうか?
あるいは自身の行動に身に覚えはないでしょうか?

平気で嘘をつく/自身が「HSP」であると自己呈示する/ネットで誹謗中傷を繰り返す/マウンティングをとる/リーダー的立場につくことが多い/パワハラやモラハラをする/寝取り寝取られ経験が多い/セフレがいる/男女ともに反フェミニズム傾向/第一印象はよかったが……...etc.

じつは、これらは「ダークトライアド」の傾向が高めの人が示す言動パターンとのこと。
「ダークトライアド」とはナルシシズム、マキャベリアニズム、サイコパシーの3つのパーソナリティの総称で、しばしば三角形で表現され、自己中心的で他者操作的、かつ共感性の欠如などが共通した特徴です。

こんなダークな心理を一般向けに解説した新刊が出ました。それが喜入暁『心の中の悪魔』です。

書影をクリックするとamazonの商品紹介ページへリンクします。

「ダークトライアド」は誰もが持っている邪悪なパーソナリティなのか?
相手や自分の中の“悪魔”を飼いならす方法はあるのか?
興味が尽きない本書の「まえがき」を全文公開します。
身近にエクセントリックな人がいる方、自分のなかの望ましくない感情を自覚している方、人の心の闇に関心がある方……、ぜひ手にとってみてください。


まえがき より豊かな生活を送るために、あえてダークな心を覗き込む

 セクハラ、パワハラ、裏切り、嘘、マウンティング……私たちは人間関係を通してさまざまな嫌な思いをしますし、もしかしたらさせているかもしれません。
 自分が味方だと信じていた友人が実は敵だったり、苦楽を共にしてきた同僚が簡単に自分のことを見捨てたりといったことは、物語やマンガだけの話ではなく、むしろみなさんも少なからず経験してきた事実ではないでしょうか。
 あるいは、自分自身がそうだったかもしれません。味方のふりをして近づいて、情報を引き出したら、あとはお払い箱にしたり、今まで仲良くしていたという過去があっても、同情や躊躇なく、自分にメリットがないと思えば、その人物を容赦なく切り捨ててきたかもしれません。
 このようなダークな人間関係などないに越したことはないのですが、そうもいきません。それであれば、少なくともそのようなダークな問題を起こしがちな人を先に見破ったり、自分のダークな行動を制御するような内省ができれば、今より少しは豊かな気持ちで日常生活を過ごせるはずです。
 ダークな人間関係や行動が引き起こされる要因には、そのときの状況や関係性などさまざまなものが挙げられますが、その人自身の個人特徴、いわゆる性格(パーソナリティと呼ばれます 。本書でもパーソナリティと表記します)も大きな要因の1つです。
 人間関係や社会にとっての負の側面と、それに関連するパーソナリティの研究は、心理学の一大テーマですし、これまでも多くの研究がなされてきました。どんな人が不安になりやすいのか、落ち込みやすいのか、怒りやすいのか、感情を押し込めやすいのか……、などです。
 しかしその中でも、先ほど挙げたダークな人間関係を形成しがちだったり、社会的な問題行動や迷惑行為をとりがちな人に共通する特徴として、3つのパーソナリティが注目を集めています。そして、この3つのパーソナリティをまとめてダークトライアド(Dark Triad)と呼び、包括的に扱った研究が活発に進められたのは、2010年代以降と比較的最近のことです。
 個別の3つのパーソナリティとしてはこれまでも研究されてきたのですが、ダークトライアドという形で3つのパーソナリティやその共通点・相違点に注目すると、ダークな人間関係や社会的な問題行動・迷惑行為を、どんな人が、なぜとり得るのか、ということがより精細にわかり、あるいは新しい発見が生まれました。つまり、ダークトライアドという概念が、さまざまな問題を解くカギになりそうだということです。
 本書では、このような現状に鑑み、現在進行形で活発に研究が進められている最新テーマの1つであるダークトライアドと、その心理・行動パターンとの関連を紹介します。学術的に明らかにされた研究知見を、論文を通して理解することは専門家でもなければなかなか困難です。そのため、本書を通してできるだけそのような研究知見を簡単にわかりやすく紹介し、読者のみなさんの生活の豊かさに少しでも貢献できればと考えています。
 筆者自身も、ダークトライアドの研究を通して意図せず自己理解が進んだようです。
 筆者がダークトライアドというテーマに飛びついたのは2014年前後で、当時は大学院生でした。ダークトライアドの研究も黎明期から全盛期に至るくらいの時期だといえるでしょう。後ほどカミングアウトしますが、筆者自身もダークトライアドの傾向がやや高く、それによる問題も起こしてきましたし、おそらく自分自身でも気づいていない問題行動もとっているでしょう。しかし、ダークトライアドに関する研究を10年も続けると、否応なく自分自身と向き合うことになりますし、それによって少なくとも自分のことを意図的に制御できるようになり、以前より豊かな生活を送ってい(ると思い)ます。「人(知見)のふり見て我がふり直せ」ということですね。
 まえがきとしてはとりとめもない形になりましたが、本書を読むことで、客観的な視点から自分自身や人間関係を見つめ直すことにつながれば幸いです。言い換えれば、自分の在り方を変えたり、人間関係を変えたりするといったことは二の次だと考えています。何かを変えたり、そのためのシステムを構築するにはまた他の専門家や組織の助けが必要になるでしょう。
 本書では、善悪や「○○すべき」ということには言及せず、事実と視点を伝えることに主眼を置きたいと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 い し黒 )

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