書籍編集者が仕事で愛用しているツール10選
フォレスト出版編集部の寺崎です。
かれこれ、編集の仕事を始めて20年以上が経ちます。これまで仕事で使うツールについてはあれこれ試行錯誤してきました。検索するブラウザひとつとっても、いまでこそ主流のタブブラウザがマイナーだった時代にはDonutPを愛用したり、メールソフトもあれこれ試してきました。
現時点、自分の中で「これは鉄板」と納得できるツール群がほぼ確定した感じがします。これらが日々の生産性向上を助けてくれています。
そんなツールたちを今回はご紹介します。
ツール① テキストの編集には「Microsoft WORD」
「え、超ベタじゃん」
ですよね。
でも、ワードほど汎用性の高いソフトはないです。付き合う著者のほぼ100%がWORDユーザーだし(最近はGoogleドキュメント派もちらほらですが)、DTPに入稿するデータもWORDでつくるため、なくてはならないソフトです。
バージョンアップのたびにインターフェイスを微妙に変更されるのが困りますが。
WORDの使い方が普通のひととは違うかもしれないのが、紙面の文字数を想定した「見開き」の状態で編集する点です。
たとえば、本文縦組み1ページにつき38文字×14行の紙面を想定した場合、38文字×28行(14行×2)の「見開きの状態」に設定して編集作業を進めます。
図版をどこに差しはさむかといったシミュレーションもWORD上でつくります。
こうすることで全体のページ数もざっくり把握できますし、実際の紙面に近い状態で「見出しをどこに入れればテンポよく読めるか」「太字強調ゴシックは効果的か」などが感覚的にシミュレーションできます。
人によっては「太字は<BL></BL>」といったHTMLのようなタグで入稿するケースもあり、編集者によってやり方はさまざまですが、私の場合はWORDの状態で編集するのがいちばんラクです。
ツール② テキスト形式の強みを発揮する「秀丸」
秀丸はWindows標準のメモ帳、マックのテキストエディットのように文字を「テキスト形式」で扱うテキストエディターと呼ばれるソフト。
Wordはテキスト処理が独自のWord形式のため、さまざまな書式情報を含んでいるため、かえって扱いにくい場合があります。たとえば、WebブラウザやPDFのテキストをコピーしてペーストすると、書体などの書式情報が残ったまま貼り付けられるため、下のような状態になります(赤字がコピペした箇所)。
これをいちいちWORD上で指定し直すのはめんどくさいので、いったんテキストをエディタ(秀丸)にコピペしてテキストデータから「書式情報」を消し、さらにそれをコピペしてWORDに貼り付けることが多いです。
「それだったらメモ帳とか使えばいいじゃん」と言われそうですが、じつは秀丸には編集者泣かせの優れた機能があるんです。
それが「grep」の機能。
grep機能はテキスト本文から「見出し」を抜き出すときにめっちゃ便利です。
たとえば、8万字のテキストがあった場合。それぞれ章タイトルの頭に■を付けて、節見出しの頭に★、文中小見出しの頭に▼をつけて原稿作成したとしましょう。
さわりはこんな感じです。
このテキストから「章タイトル」「節見出し」「文中小見出し」を一瞬で抽出できるのがgrep機能です。つまり、grep機能は「目次の生成」が一瞬でできるのです。
検索メニューから「grepの実行」を選択します。
「検索する文字列」に
■|★|▼
と入れます。
すると・・・こんな感じで瞬時に目次のできあがりです。
逆に「目次の文字列」から文書全体の該当箇所に飛ぶ「タグジャンプ」の機能も便利です。もともとはプログラマー向けに作られたこれらの機能が文章の編集にも便利なわけです。
テキストエディターには、ほかにも便利な「マクロ機能」などがたくさんあります。
「Wordでもできるじゃん」と言われそうですが・・・Wordのこの手の機能は高機能すぎて、使いこなせず。汗
ツール③ 使う頻度が増えてきた「Googleドキュメント」
最近増えてきたのがGoogleドキュメントでのやりとりですね。Googleドキュメントのリンクをメールに貼って送ってくる著者が増えてきました。
古くは「紙に書いた原稿が郵便で届く」という原始時代も知りつつ、次に「メールで原稿がデータとして届く」時代に感嘆したのもつかのま、いまやクラウドの時代に。
今後はGoogleドキュメントを使い倒すことになりそうです。
ツール④ なにげに必須のキャプチャ―ソフト「Winshot」
画像をキャプチャーするのに、Winshotほど軽快なソフトはないです。超おすすめ。
ZOOMで打ち合わせや会議をする機会が増えて、画面共有された画面を保存しておきたいときにも便利。
Ctrl+Alt+F9同時押しすると、マウスで囲った選択範囲がキャプチャーされる機能があり、これがかなり便利です。
(2024年追記)
ノートパソコンが新しくなってからはWindows標準の「切り取り&スケッチ」を普通に使ってます。なにげにこっちのほうが使いやすいです。
ツール⑤ Webページの赤字指示ができる「AUN」
LPなどのWebページの修正・変更指示に便利なツールがこれ。
プリンターで出力して、紙に赤字を入れてそのまま担当者に手渡す・・・という原始的なやり方がいちばん早いのですが、自粛期間中のリモートワークのときに困りました。さて、どうしよう。いろいろ試したのですが、これがいまのところいちばん便利です。
こんな感じでWordにコメントを入れる感覚で赤字入れができます。赤字を入れたら、制作者にURLリンクを送ればOK。保存期間が7日間の点のみ要注意ですが。
ツール⑥ デジタル校正時代の文字入れ「GoodNotes」
これまた自粛リモート期間に「これからはデジタル校正や!」と意気込んで、いろいろ試した結果、「これならまあまあ使えるかな」というのがipad用のアプリGoodNotes。
PDFなどのファイルを読み込んで、タッチペンで文字入れができるソフトです。ただ、現状では書籍のゲラの赤字入れといった細かな書き込み用途には厳しいですが、デザインの変更指示といった、ざっくりしたやり取りには十分に活躍しそう。
ツール⑦ プリンターとスキャナーを兼ねる安価な「複合機」
ツール⑤、ツール⑥でなんとかしのいでいたものの、200ページを超える書籍の編集作業となるとやっぱりプリントアウトしないと無理です。
そこで、フリーランスの編集者の先輩方に「ゲラのプリント出力どうしてる?」と聞いて回ったところ、だいたい次の2パターンでした。
A コンビニや出力センターにデータを流して紙に出力
B スキャナー、プリンターを自宅に備えて出力
いちいちコンビニに出力しに行くのめんどくさいなぁ・・・と思っていたら、フリーランスのパイセンから「この①と②を揃えておけば最強よ」とのメールが。
①【プリンター】
ざくざく出力しても、かなり安く、インクも1年持つ(純正1セット6000円程度)。ゲラ出力用に最適。
②【スキャン用】
スキャンするなら、スキャナーはNG。不具合多し。スキャナー買うより、複合機。50枚、連続スキャンして、1枚のPDF化。
うーん・・・なにげにプリンター高い。しかも2台買うのは予算オーバーだったので、とりあえず②のCANONの複合機を買ってみました。複合機って、オフィスにあるイメージでしたが、個人用のもあるんですね。いまのところ快適なプリントアウト&スキャン生活で満足してます。
(2024年追記)
インクジェットは壊れやすいのですが、例のごとくずいぶん前にCanon複合機が猛烈な異音とともに紙詰まりを起こし、完全ぶっ壊れたので、現在はインクジェットではなく、家庭用のモノクロレーザー複合機を使用してます。
機種はこちら。
この複合機はマジでおすすめです。安いのにめちゃくちゃ優秀。
CANONインクジェット複合機より出力スピードは劣りますが、安定感は抜群。プリントアウトでも複数枚のスキャンでも紙詰まりがほぼ起きません。
もう2年ほど使い続けてますが、一度も不調なし。
「カラー印刷できないの不便じゃない?」とよく言われますが、カラー印刷したければ会社の業務用レーザーでプリントアウトすればよく、逆にモノクロのほうがプリンター、スキャナーとしての動作安定性が高い気がします。
ツール⑧ 鉄板ツール「GoogleChrome」「Thunderbird」
これまでのブラウザ遍歴に終止符を打ったのがGoogleChromeでした。なんといっても、Googleアカウントにログインさえすれば、会社のWindowマシン、自宅のWindowマシン、Macのノートブックなど、すべて同じ環境でブラウジングできる点が便利すぎます。
昔、環境が変わるたびに、いちいちブックマーク(お気に入り)をエキスポートしたりインポートしたりしてたのは、なんだったんだ。
ちなみに、Googleが検索結果を情報操作しているような検索ワードもまれにこの世には存在するので、そーいう危ないキーワードを調べるときは、こちらの検索エンジン「DuckDuckGo」を使ってます(この検索エンジンであればプライバシーも保たれます)。chromeの拡張機能にインストールすることも可能です。
メーラーのThunderbirdに関してはすでに15年ぐらい使ってますが、Thunderbirdのデータをほかの端末にそのままコピーするだけですぐに使える設計がシンプルで秀逸です。
「Gmailでいいじゃん」と言われそうですが、メールをフォルダごとに振り分けるフィルター機能が便利すぎて手放せない。Gmailはインターフェイスがフラットすぎて(=ゴミも宝物も並列)、どうしても「メールを見落とす」ことが増えるのが怖いです。
(2024年追記)
社内のセキュリティ上の都合でThunderbird禁止令が出まして、現在はふつうにOutlookを使用しています。乗り換え当初は違和感がありイライラしましたが、人間って慣れるもんですね。いまではふつうに快適にメールライフ送ってます。
ツール⑨ ToDo管理には「Microsoft ToDo」
ToDoって、すぐにメモしないと、即座に忘れてしまいませんか。「あ、そうだ、あれやらないといけないんだった」と気づいて、部屋を移動したら「あれ?なにしないといけないんだっけ?」ってことがよくあります。
「○○を調べよう」と思って、検索エンジンを立ち上げたものの、「あれ、何を調べようとしてたんだっけ?」もよくアルアル。
そんな脳細胞が日々減少していく中高年にとって「いますぐ手元でToDoを書き込めるツール」が必須です。そこでおすすめなのが「Microsoft ToDO」です。
これをパソコン、スマホの両方に入れておいて、思いついたToDOを片っ端から入れておきます。で、ToDoが完了したらチェックボタンをクリック。
ToDo完了の合図である「チャリーン」という音がこれまた達成感があって気に入ってます。「やり終えた音が気持ちいい」はけっこう大事な要素です。
ツール⑩ メールより便利かもしれない「ChatWork」
ビジネスで使われる2大チャットツールとして「Slack」と「ChatWork」があります(Teamsもそうなのかな?)。両方使ってみた感想としては、「ChatWorkのほうがシンプルで使いやすい」でした。
この手のツールの便利なところは「リアクションボタン」ひとつで返せるところ。メールだと、いちいち「承知しました!」と1本返信しないとならないのが面倒です。
以上、書籍編集者が仕事で愛用しているツール10選でした。
なにかの参考になれば幸いです。