コメダ珈琲店の無料トーストを1週間断り続けることができるか?
日本では、ヴィーガンは、それ以外の人たちから揶揄をされがちです。一般の人たちからすれば、その極端な行動ゆえに珍獣を見ているような感覚というと大げさですが、変人みたいにうつるのでしょう。
しかし一番の原因は、彼らが自分たちの主張を周囲の人に押し付けているように感じるからかもしれません。
最初に断っておくと、日本人の著名人の中にもヴィーガンやそれに近い食生活をしている人はたくさんいるようですが、かれらがその思想信条を声高に発信しているのは、個人的には見たことはありません。
ところが、海外ヴィーガンの「動物にも心がある。それを人間の都合で殺して食べるなど、あってはならない」といった動物愛護や環境問題に結びつけた主張が独り歩きして、どうもヴィーガン全体のイメージに結びついているような気がします。
その主張の是非はともかく、それを押し付けられた周囲の人は無駄に罪悪感を抱かされたり、批難されているような感覚に陥り、つい反論したくなるはずです。
以上のように、他人とは違う「極端な行動」をするのであれば、無用な反感を買わないためにも、周囲への配慮が必要になります。しかし、その配慮が過ぎるあまり信念を持って行っている「極端な行動」を大きく制限するのも本末転倒。つまり、一定の自制が必要であり、社会性との両立が大切ということです。
そこで、「ミスター極端な行動」とも言うべき男――1日平均45分以下睡眠を10年以上実践、週3食を推奨する堀大輔さんによる、自らの「極端な行動」の経験から得た教訓を参考までに紹介します。
以下は、『食べない人ほど仕事ができる!』(堀大輔)の中から、本記事用に一部抜粋したものです。
職場や家族の環境を整える
自分が断食やファスティングなど、一般論と違う食事をしている場合、世間の目は想像以上に冷ややかな場合があります。
断食やファスティングが正しいこと、健康的なことだと思い込んでいる人ほど、社会との乖離が発生します。したがって、会社や家族とも、うまく折り合いをつけることが週3食になるために重要なことです。
「自分は自分の健康のために食事を選んでいるだけで、ほかの人は関係ない!」と思う人もいるかもしれませんが、周囲の人との関わりは、時として食事よりも重要な場合があります。
私はお酒に弱い体質(単純に普段飲んでいないし、お腹が空っぽだからかもしれません)ですが、接待などの飲み会で、飲めないお酒をたくさん飲むこともあります。1杯目から断るということはほぼありません。「空気を読む」というニュアンスに近いかもしれません。
お酒が健康に良いとは当然思っていませんが、その場の雰囲気を崩さず、むしろ盛り上げることの価値は自分だけが健康になるよりもはるかに重要なことです。
もし食事などにこだわるときは、外の席は別という認識を持つか、あらかじめ食事に関する注意点などを上司や友人に伝えておくことをおすすめします。
「自分が健康になったらわかってくれる」というご意見もいただきますが、結果として健康を手に入れたところで、相手はほとんどわかってくれません。それどころか、次のように思われたりします。
「いずれガタがくる」
「今だけ良い状態なのに自慢されても……」
「あ!? 俺が悪いって言いたいのか!」
私が会社員として働いているとき、毎日ランニングをし、週3食の食生活をしていたときも、周囲からの目は厳しいものでした(もちろん、短眠もしていました)。タバコも吸わないため、タバコミュニケーションもなく、またランチも食べないことで、部署以外の人と話をすることが極端に減りました。
3カ月ほど経過し、20%近くあった体脂肪率が安定して1桁となり、健康診断もすべてA判定が出たときに同僚に言われた言葉を忘れられません。
「おまえくらい暇だったら自己管理も簡単だよな」
周囲との関係が険悪で、しかもまわりは自分の健康に劣等感を持っている状態で、一人だけが健康になることは逆にイヤミに映ってしまうことがあります。
だからといって健康状態まで周囲に合わせろと言っているわけではありません。まず、コミュニケーションにおいて、自分だけのことを考えているわけではない姿勢を見せて、相手に合わせるべきところは合わせたほうが、後ほど自分にとって好都合な環境をつくり出しやすいのです。
さまざまな栄養理論が乱立していますが、食事が優秀なコミュニケーションの場という認識は同じはずです。
何を食べるのかは完全に自由です。だからこそ、自分でも気づかないうちに考え方や立ち居振る舞いが、ほかの人から見えてしまうものです。食事に自分なりのポリシーを持っている場合、無意識に他人の食事の内容を責めてしまったり、否定してしまったりすることがあるので気をつけてください。
断る能力も身につける ✚コメダ珈琲店での実験
コミュニケーションが重要とはいえ、週3食生活を送るには、もちろん「断る能力」も必要になります。
「さっきは社会性が大切だと言っていたじゃないか?」と思われるかもしれませんが、社会性を守るために、すべてにYESという発言をしては本末転倒です。時には断ることが大切な場合もあります。断る能力は、集団にいるときだけではなく、個人で活動しているときにも活きてきます。
日本人は断ることが苦手です。したがって、たとえば飲食店に「おすすめですよ!」と強く提案されたら断れなくなります。そしてなんとなく「まぁいっか」と思い、ついサービスで出された料理から食事のリズムが崩れてしまい、そのまま食べ続けるという事態も発生します。
小石のような事象かもしれませんが、少食で生活することを恒久的に続ける場合、小石を取り除くことが大切です。マラソンコースに小石がたくさん落ちてしまっていては、マラソンランナーは走ることに集中できず、すぐにバテて息切れをしてしまいます。
コメダ珈琲店では、朝11時までであればトーストを無料でサービスしてくれます。私はその誘惑に勝てるかどうか、しっかり断ることができるかどうかを検証するため、毎朝コメダ珈琲店に行って、トーストサービスを断るという行動を1週間ほど続けました。
「そんなに威張ることではないのでは?」と思われるのはごもっともです。しかし、威張るようなことでもないくらいの難易度からはじめることが非常に重要ということです。
自分の意思や意見を持っておくことは大切であり、その意思や意見を出すべきタイミングかどうかを考えて行動していきましょう。
社会性との両立は、イレギュラーに対する柔軟な決断の連続があってこそなのです。
自分の決断力や断る力も磨きつつ、ほかの人の存在やTPOを忘れず、人生の中の食事という大切な時間を過ごしましょう。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(編集部 石黒)