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著者プロフィールのつくりかた

フォレスト出版編集部の寺崎です。

書籍を作るにあたり、重要な要素のひとつに「著者プロフィール」があります。なぜ重要なのかというと、タイトルが気になって本を手に取った読者が次に関心を寄せるのが「誰が書いたのか?」だからです。

ですから「このテーマを書くのに日本一ふさわしい実績を持つ著者」というファクトが読者に伝わるのが最強の著者プロフィールです。

ゆえに編集者は著者のプロフィールを「最強の著者プロフィール」に仕立て上げるべく、苦心します。

論より証拠ということで、いくつか担当した事例をご紹介します。

アピール材料は全部盛り込む

いささか古い本になりますが、天台宗の故・荒了寛大僧正の書籍『365日を穏やかに過ごす心の習慣。』を担当したときのこと。

「大僧正」といえば、天台宗の教えを極められた高僧です。そんな荒さんのような方になると、書籍タイトル、カバーデザイン、著者プロフィールなんかにはいちいち口出ししません。

基本的にすべて「よきにはからえ」です。

というわけで、著者プロフィールもイチから考案する必要がありました。

そこで材料を集めました。

荒 了寛(あら・りょうかん)
1928年福島県生まれ。10歳で仏門に入る。大正大学大学院博士課程(天台学専攻)修了。仙台市仙岳院、清浄光院(仙台)、大福寺(福島)などを歴任。現天台宗ハワイ開教総長としてハワイ在住。ハワイおよびアメリカ本土で布教活動に従事。その傍ら、ハワイ美術院、ハワイ学院日本語学校などを設立、日本文化の紹介、普及に努める。独自の画法による仏画も描き、サンフランシスコ、ボストン、ニューヨークなどで個展を開催。日本各地でも毎年個展を続けている。

『蓮華の花の咲くように』(里文出版)より

当時、他社さんから出ていた書籍に掲載していたのが、このプロフィールでした。これではちょいアピールが弱いなぁと正直感じました。

そこで考えます。

「荒さんはズバリ一言で言うと何者か?」

これがつまり「肩書」

冒頭に掲げた、本を手に取った読者が抱く「誰が書いたのか?」にすぐに答える必要があります。

「荒さんは・・・やっぱり天台宗をハワイに広めたすごい人だよなぁ。しかも阿闍梨ではなく大僧正というのも他にはないバリューがある」ということで肩書が決まりました。

天台宗ハワイ開教総長・大僧正

ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

さらにプロフィールをモリモリにしていくために、著者のアピール材料を実際に取材するなか拝借したり、ネットの過去記事から拾ってきたり、あれこれ材料を集めます。

そして完成したのが、次のプロフィールです。

荒 了寛(あら・りょうかん)
天台宗ハワイ開教総長。大僧正。
1928年、福島県生まれ。10歳で仏門に入る。大正大学大学院博士課程で天台学専攻。仙岳院法嗣、清浄光院(仙台)、大福寺(福島)住職など歴任。1973年、今東光師らの推薦により初代天台宗ハワイ開教総長としてハワイに渡り、ハワイおよびアメリカ本土で布教活動に従事。海外には檀家・信徒の少ない天台宗のハワイ開教は困難を極めたが、宗派を超えた活動が重要と考え、現地人向けの仏教・教学の振興に取り組みながら、ワイキキ近くに日本語学校を開校。別院内にも「文化教室」を開いて、書道、日本画、茶道、生け花などを指導。1978年「ハワイ美術院」を創設、本格的に日本文化の紹介と普及に取り組む。
自らも独自の技法で仏画を描き、インド、パキスタン、西域、チベットなどシルクロード沿いに十数回に及ぶ取材旅行を重ね、仏教伝道を兼ねて作品展をニューヨークやボストンなどで開催。最近は、東京、広島、仙台など日本各地で毎年定期的に個展を続けている。その収入は別院経営の重要な役割を担っている。
奉仕団体として結成した「ハワイ一隅会」は、事業の一環として日本人移民の歴史をビデオテープなどに収録。100本を超えるテープはハワイ日系人史を知るための重要な資料となっている。1986年からワイキキの運河で始めた「ホノルル灯籠流し」は、仏教界はもとより、キリスト教の聖職者や知事、市長、アメリカ海軍の司令官も法要に参列、ハワイ最大の宗教行事となった。
2011年、日米の友好、相互理解のために尽力した功績で、宗教家としては異例の外務大臣賞が授与された。現在もハワイの日系社会の重鎮として各種日系団体の役職を務めながら、オーストラリア開教をめざして現地の僧の育成に取り組んでいる。
主な著作に『慈しみと悲しみ』『人生の要領の悪い人へ』『娑婆を読む』『生きるとはなぁ』『生きよ まず生きよ』『ハワイ日系米兵―私たちは何と戦ったのか』『画文集・シルクロードの仏たち』など。京子夫人は比叡山で修行、尼僧の資格を取得、別院の教育事業と住職の出版活動を支えている。

「ながっ!」と思われたでしょうか。

でも、いいのです。どの要素に読者が刺さるかわからないので、「著者プロフィールは盛り込めるだけ盛り込め派」です。

思うに、入社当時のフォレスト出版の著者プロフィールがモリモリで、これまでのビジネス書のスタイルを壊していた点に影響された気がします。

ただし、著者によってはこのスタイルを嫌い、ごくシンプルな短文のプロフィールを好む方もいらっしゃいます。そこは著者の意向を尊重して、モリモリ封印。

客観的な「数字」は最大の武器

もうひとつだけ、事例を出しましょう。

中尾隆一郎さんの最高の結果を出すKPIマネジメントの著者プロフィールがこちら。

中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)
株式会社FIXER執行役員副社長
1964年5月15日生まれ。大阪府出身。
1987年大阪大学工学部卒業。89年同大学大学院修士課程修了。同年株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)入社。主に住宅、人材、IT領域を歩み、住宅領域の新規事業であるスーモカウンター推進室室長時代に同事業を6年間で売り上げを30倍、店舗数12倍、従業員数を5倍にした立役者。
リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、2018年4月から現職。2017年6月より株式会社旅工房社外取締役を務める。専門は事業執行、事業開発、マーケティング、人材採用、組織創り、KPIマネジメント、管理会計など。良い組織づくりの勉強会(TTPS勉強会)主催。
29年勤めたリクルート時代は、約11年間にわたってリクルートグループの社内勉強会において「KPI」「数字の読み方」の講師を担当、人気講座となる。
著書『転職できる営業マンには理由がある!(共著)』(東洋経済新報社)、『リクルート流仕事ができる人の原理原則』『リクルートが教える営業マン進化術(共著)』(全日出版)。

ポイントは太字にした2か所。これによって「リクルートで圧倒的な実績をあげたすごい人」であることと、「KPIをリクルート全社グループで教えているぐらいだから、KPIマネジメントの専門家であるに違いない」と想像します(実際にそうです)。

圧倒的な実績をドーン!と示すにあたって絶対に入れるべきは「数字」です。

6年間で売り上げを30倍、店舗数12倍、従業員数を5倍
29年勤めたリクルート時代
約11年間にわたって

「29年務めたリクルート時代」という表現から、外部コンサルタント的な立場でKPIマネジメントに関わってきたのではなく、現場たたき上げのKPIマネジメントを実践してきたことが伝わります。

というわけで、今日は著者プロフィールをテーマに語ってみました。

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