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「しっかり寝ないと睡眠不足になる」はウソ

先日、ある打ち合わせで、「受験生は何よりも睡眠をとることが大切だ」という意見が出ました。
『できる人は超短眠!』という短時間睡眠を薦める本を編集した自分としては、いろいろ言いたいことがあったのですが、そこはグッと飲み込みました。

「睡眠時間と睡眠不足は関係ありませんよ」
「寝ても疲れは回復しませんよ」
「寝るのは健康に良くないかもしれませんよ」
「“寝ないといけない”が逆にプレッシャーになりますよ」...etc.

「普通の人」からしたらバカな意見だと思われるでしょう。だから口を出さなかったわけです。
しかし、10年以上、1日45分以下しか睡眠をとっていない著者・堀大輔さんの『できる人は超短眠!』を読むと、これまで抱いていた睡眠の常識に対して疑念が生じてくるはずです。

ここでは、「しっかり寝ないと睡眠不足になる」という常識に対して反論した箇所を、本記事用に一部抜粋してお届けします。

時計がないと人は睡眠不足にならない――ダーラムの驚愕

「じゃあ、7時間が眠りすぎなら何時間眠ればいいんだ?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
 この疑問にお答えする前に、ある興味深い調査報告についてお話しします。
 睡眠時間という考えは、時間という概念を持っている人固有のものである、と示唆したものです。
 1908年、イギリスの旅行家エディス・ダーラムが、北部アルバニア山岳地帯にて現地の人々の生活を調査しました。当時の北部アルバニアには時計がなく、現地の人々は太陽の傾きを見ながら生活をしていました。彼らは太陽が一番高い正午に1回目の食事をし、日が落ちて1〜2時間後に2回目の食事をして床につき、日の出前に起きる生活を習慣としていました。
 夏至のころは20時ごろに日が沈むので、21〜22時ごろに食事をしてから眠ります。そして4時ごろに日が昇りはじめるので、3時ごろには起きて活動をはじめます。したがって、睡眠時間が4時間ほどしかなく、食事と食事の間は9時間もあります。
 逆に、冬至のころは17時半〜18時ごろに食事をはじめて、20時ごろには寝床に入ります。翌日は8時ごろに日が昇りはじめるので、7時過ぎに起床して1日の活動をはじめます。したがって、睡眠時間が11時間もあり、食事と食事の間は5〜6時間ほどしかありません。
 そんななか、時計を持ってやってきた闖入者ダーラムはどうなったでしょう。夏、1日4時間睡眠でも活発に活動する現地人を尻目に、酷い睡眠不足を訴えたのです。
 冬が近づくにつれて、生活リズムに変動があることをダーラムが伝えても、北部アルバニアの人たちはまったく理解を示さなかったそうです。
 この調査報告が教えてくれるのは、夏と冬で睡眠時間が倍以上違っても、睡眠時間という概念を持っていなければ睡眠不足にならないということです。

思い込みが睡眠不足を生む――カスケイドンの実験

「昨日2時間しか寝なかったから、今日は眠いわ〜」と言ったり、言われたりしたことがあるでしょう。よく、ウザい人の口癖としてネタにされますよね。
 しかし、睡眠不足と睡眠時間に因果関係がある、というわけではありません。
 睡眠時間を自分の生活習慣を測定する一つの定規として使用するのはいいかもしれませんが、この定規は睡眠不足そのものをはかる定規としては用をなさないのです。
 睡眠時間が長くても睡眠不足になることもあれば、15分の仮眠(パワーナップ)で睡眠不足が解消されることもあります。
 ふだんとまったく同じ睡眠時間でも、それが深夜バスの中だったら、日中に倦怠感や睡魔に襲われることがあります。睡眠の質というものが本当にあるかどうかはさておき、明らかに睡眠時間以外の要因が考えられます。
 また、前日の睡眠時間が短いという認識そのものが睡眠不足を誘発しています。
 メアリー=カスケイドンは、陽の光が入らず、時計もない部屋で被験者を生活させる実験をしました。
 2つのグループを用意し、いずれのグループともに3時間睡眠をとらせました。しかし、一つ目のグループには「8時間眠っていた」と伝え、もう一方のグループには「3時間しか寝ていない」と伝えました。
 結果は、8時間睡眠と認識している一つ目のグループはほとんど睡眠不足を訴えなかったのですが、3時間睡眠と認識しているグループの全員が睡眠不足を訴えました。睡眠不足と睡眠時間の因果関係に疑いを持たせる実験結果だといえるでしょう。

90分しか寝ないインドの少年が幸せな理由

 世界は広くて、毎日90分睡眠でも睡眠不足を訴えない少年もいます。
 受講生の1人がインドを旅行した際の興味深いエピソードを教えてくれました。
 彼は、とある現地の少年と仲良くなったそうです。その少年から、彼はカースト制度について非常に多くのことを学びました。少年はシュードラという最も人口の多い階級でした。
 シュードラは給与が非常に低く、家族全員が毎日のほとんどの時間を労働に当てています。少年の給与も日本円にして1日250円ほど。朝市で売買し、その後夜中まで仕事をするため、睡眠時間は90分しかないとのこと。受講生は一緒に生活させてもらったそうですが、実際には睡眠時間はもっと少なかったといいます。仮眠も日中に10分ほどとっているだけでした。また、休日はなく、毎日その生活の繰り返しだそうです。
 受講生は少年に幸せかと尋ねたら、即答で「幸せだよ!」と返ってきたそうです。
「僕には健康的な手があって、足がある。病気もしたことがほとんどない! 毎日とても忙しいけど、これが僕の人生なんだ! 家族と一緒に生きて、仕事でたくさんの人と接することができている。僕はそれで十分幸せだよ!」
 彼や彼の家族には睡眠時間の常識はなく、自分の睡眠時間を疑うことなく生活しているのです。当然、睡眠不足という自覚はなく、少年も少年の家族も受講生が宿泊している期間、寝不足を訴えることはなかったということです。
 逆説的になりますが、現代の日本人こそ、睡眠時間は7時間でなければならないと思い込みすぎているために、不眠症や睡眠不足という症状が起こっているのです。

これだけではまだ信用できないかもしれません。
しかし、『できる人は超短眠!』と『睡眠の常識はウソだらけ』では、可能な限り理詰めで独自の理論を開陳しています。


興味のある方はぜひ手にとってみてください。

(編集部 石黒)

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