猫好き集まれ! 猫本の楽しみ方
編集部の稲川です。
我が家では猫を2匹飼っていますが、猫好きの私は、書店で猫本(ネコに関する本、またはタイトルに猫が付いている本)を見かけるとつい買ってしまいます。
さて、その猫ですが、いまや犬を飼う人と猫を飼う人が逆転しました。
2019年12月に発表された日本ペットフード協会の「2019年(令和元年)全国犬猫飼育実態調査」によると、犬は879万7000頭、猫は977万8000頭(犬猫1857万5000頭)が飼われていて、猫の飼育頭数が犬を上回りました。
表を見ればお分かりの通り、飼育世帯数は犬のほうが多いものの、平均飼育数で猫が上回り、全体的に猫の飼育数が逆転しています。
これは猫の場合、多頭飼いが多いための結果と見ていいでしょう。
犬を1匹飼っている人と猫を数匹飼っている人の差ですが、たしかに犬を散歩させている人を見ると、断然1匹が多いですし、猫の繁殖率(生まれる頭数も)の高さも、猫の増加に拍車をかけているのでしょう。
ちなみに、「猫の日」は2月22日、「犬の日」は11月1日。
なんのひねりもないですが、この2つの記念日は上記の日本ペットフード協会により1987年に制定されました。
と、ここまでは一般的な話ですが、さまざまな事情で猫を飼えない人にも、猫カフェだけでなく猫本で楽しんでもらえれば、猫を飼っている人は猫の可愛さをより実感してほしく、何冊かの猫本をご紹介します。
◆猫をつづった本にもジャンルがある
ひと口に「猫本」と言っても、いくつかのジャンルに分かれています。
飼育本や猫雑誌などは動物を飼ううえでは必須ですが、猫が与える魅力やその不思議な生態について書かれた本や、もちろん小説にも猫はたくさん登場します。
そこで、猫本の種類について挙げてみました。
◆猫本といってもさまざまなジャンルがある
・猫の飼育本(実用)
・猫に関する雑誌
・猫の写真集(真面目系から面白系、いやし系など)
・猫の研究本(特徴や生態)
・猫に関する社会問題本
・猫を描いた小説
・猫と関わる生活エッセイ(幸せ)
・猫いやし本
・猫のあるある本
・猫検定本
・ペットロス本
・猫マンガ
・猫カレンダー
ざっくり挙げると、こんな感じでしょうか。
この中で、実用書、雑誌、写真集、カレンダー、マンガについては「猫本」の範疇から外して考えます(猫マンガについては、いつか紹介したいですが)。
私は猫本編集者ではないので深くは述べられませんが、「猫の研究本(特徴や生態)」「猫を描いた小説」「猫と関わる生活エッセイ(幸せ)」「猫いやし本」などは、猫に興味を持つ以上、何冊か触れてきました。
まず、猫好きとして知っておきたいのは、やはり「猫とはどんな生き物なのか?」を理解することです。
動物について書かれた本は、動物行動学者などが数多く発表していますが、猫の生態調査について書かれた本は、人間の心理的側面(人間が猫に対してどう思うか)から語られることが多いのが特徴です。
『ネコのこころがわかる本』は行動学者マイケル・W・フォックスという方が書いた名著です。
彼は動物行動の研究で学会から高く評価されている獣医師で、ロンドン大学で行動学の博士号を得ています。ワシントン大学の心理学準教授として教鞭もとられ、全米動物愛護協会の副会長もされていました。
もちろん猫だけでなく、『イヌのこころがわかる本』も書かれています。
本では、家畜化の歴史、生態学・生理学から猫の超能力、猫語、素敵な猫に育てる方法など、動物への慈愛にあふれながらも真面目につづった、“本格的ネコ派”にとっては魅力的な本です。
もう1冊『猫はこうして地球を征服した』は、米国雑誌『スミソニアン』の記者、大の猫好きアビゲイル・タッカーが書いた、ニューヨーク・タイムズのベストセラーになった本。
猫はたしかに可愛いが、その実、猫がライオン(ネコ科)から家畜化されるくらいに“進化”を遂げ、人間社会に適応(溶け込んだ)していったという面白い視点でつづられています。
人間は猫の虜となり、その孤高さに従順に従ってしまうという、猫の皮を被ったオオカミならぬ、ライオンの皮を被った猫の知られざる真実に迫ります。この本も意外や真面目に切り込んだ本で、思わず唸ってしまう内容です。
その昔、イルカが地球を征服するなんていうのがありましたが、あの猫版、もしかしたら地球制服計画は着々と進んでいるのかもしれません。
◆猫はなぜ小説の主人公として登場するのか?
猫の小説と言えば、誰もが夏目漱石の『吾輩は猫である』を思い浮かべるでしょう。
実は文豪たちの猫好きは有名です。
内田百閒の『ノラや』、谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のをんな』、梶井基次郎の『愛撫』など、ほかにも多くの文豪たちが猫を題材に小説を書いています。
宮沢賢治の『猫の事務所』なんかも、読まれた方も多いのではないでしょうか。ミステリーの世界でも赤川次郎の「三毛猫ホームズシリーズ」が有名ですね。
もちろん、現在でも猫好きの作家は多く、有名なのは猫と言えば村上春樹氏でしょう。
ここ最近の猫小説でのヒットは、『旅猫リポート』(有川浩著)ではないでしょうか。
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主人公サトルは、路上で鳴く猫の声に気づきマンションを降りて行った。
すると、そこには車にはねられ後ろ足の骨が飛び出してしまった状態の猫がいた。
治療も終わり、やがてサトルとその野良猫ナナは一緒に暮らし始める。
しかし、ある時サトルはナナを手離さなければならなくなり、ワゴン車に乗ってナナを飼ってくれる人を探す旅に出る。
懐かしい人、旅で出合う風景を1人と1匹はそれぞれ感じながら、旅は終わりを迎える……。
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内容についてはネタバレするので書きませんが、この本は猫好きの方でなくてもハマりますよ。
猫小説、あなどれません。
◆猫が人生を救ってくれる。いやしを超えた愛すべき猫たち
やはり猫といえばいやし系。
SNSでは猫の写真や動画があふれ、私たちの疲れをいやしてくれるものです。
ちなみに私が参加しているFBグループに「ニャンコの学校」があります。
会員の方が猫の写真や動画を挙げているだけなのですが、いわゆる普通の猫が登場するので、普通の猫を飼っている私も親近感を持って覗いています(私はほとんど投稿しませんが)。
さて、そんないやし系猫本は、猫好きなら手に取ってしまわざるを得ない“危険な本”です。
とにかく猫について書かれたエッセイで共通していることは、「猫が幸せをくれる」「猫によって救われた」というものです。
ドラマ化にもなった『捨て猫に拾われた男』は、コピーライターで『「言葉にできる」は武器になる』のベストセラーを生み出した梅田悟司さんが書かれた本。梅田さんとはその昔、猫談議で盛り上がってしまい、本の企画(ビジネス書)はおざなりになってしまったことがあります。
梅田さんは野良猫との出会いに人生が救われていったそうですが、私も同じような気持ちです。
思春期の息子を抱え、長男がやんちゃすぎて警察から何度も電話があり、そのつど頭を下げて引き取りに行った日々。家族がバラバラになりそうだった毎日に、それでも猫がいてくれたおかげで、息子たちも部屋にこもりっきりになることはなく、不思議と猫の周りに集まりました。
もし猫がいなかったらと思うと……私もまた猫によって救われたのかもしれません(梅田さん、本の内容に触れすすみません)。
さて、そんな幸せをくれる猫ですが、猫の生き方に学ぶフランスのベストセラーが『猫はきまぐれに幸せをくれる』(ステファン・ガルニエ著)。
15年間一緒に暮らした猫の日常から、猫の生き方に学んだ提言も書かれています。提言だけ挙げると、
「この世の美しさを見つめるとは、静けさに耳を傾けて地球と人につながり、その真ん中に自分自身の美しさを見つめること」
「必要なものを必要なだけ食べようと思ったら猫の食べ方を見習うといい」
「世の中に小さな幸せというものがあるわけではない。幸せの計量の仕方、世の中の見方の問題なのだ」
など、猫と暮らしている人なら、じっと猫を見つめて人生を顧みてしまうのではないでしょうか。
最後に、『ねこサプリ』。
この本はフォトブックスで、一般から応募された猫の写真とともに、猫たちからの励ましや教訓を言葉にした本です。
あのベストセラー本『人生はニャンとかなる!』の写真&言葉だけの本と考えてもらえればわかりやすいかもしれません。
ここに登場するのも、いわゆる普通の猫たち(応募ですから)。
その豊かな表情に付けられた言葉に思わず、いやされます。
写真をお見せできないのは残念ですが、この本を見つけたのは東京谷中の路地裏にある書店「ひるねこBOOKS」さん。
店長の小張さんが1人で経営している「1人書店」で、猫の本や、絵本・児童書、衣食住など暮らしの本、アート、北欧関連本など、新刊・古本問わず販売している、思わぬ猫本に出会える素敵な空間です。
猫を通じて、こんな書店さんに出会えるのも、猫たちのおかげかもしれません。
以上、猫と本にまつわることを書き連ねましたが、やっぱり猫はいやしてくれます。
もうこんなカッコされたら、「猫に支配されてもいい」と思ってしまうのです。