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【フォレスト出版チャンネル#193】ゲスト/心理|どうしてもやめられない習慣や癖から卒業する
このnoteは2021年8月10日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
ストーカー犯罪の心理カウンセリングの実態
今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。本日は「日本で唯一無二のカウンセラーが教える悪習慣をやめる技術」ということで、素敵なスペシャルゲストをお呼びしています。『やめたいのにやめられない悪い習慣をやめる技術』の著者の小早川明子さんと、フォレスト出版・編集部の杉浦さんです。小早川さん、杉浦さん、よろしくお願いします。
小早川:よろしくお願いします。
杉浦:お願いします。
今井:では、早速ですが、私の方から小早川さんのご紹介をさせていただきたいと思います。小早川さんはカウンセラーでNPO法人「ヒューマニティ」理事長でいらっしゃいます。ご自身がストーカー被害にあったことを契機にストーカー問題、DVなど、あらゆるハラスメントに対する活動を開始しました。それ以来、680人を超えるストーカーと向き合い、カウンセリングを行い、下総精神医療センターと提携し治療に結びつけるなど、特定の他者への固着した関心から発生するストーカー犯罪の防止に大きな成果を上げていらっしゃいます。通常であれば、ストーカー被害に遭われた方のケアをされるカウンセラーさんが多い中、小早川さんはストーカーをした側のカウンセラーということで、本当に唯一無二のカウンセラーさんとなっています。ちなみに杉浦さん、書籍の企画のきっかけはどのようなものだったんでしょうか?
杉浦:はい。本が出たのが2020年の7月で、ちょうど1年前になるのですが、2019年の後半くらいに、「依存」について調べていた時に、小早川さんのインタビュー記事だとか、コラムみたいなものがヒットしまして、それで今ご紹介にもあったように、ストーカー被害者ではなく、ストーカーをしてしまう加害者の方を対象にカウンセリングをされているカウンセラーさんというところにすごく興味を持ちまして、それで色々と記事を読む中で、タバコとかアルコールとか薬物と同じで、ストーカーというものも、特定の人に対して固着、一般的な言葉で言うと依存しているという話があって、なるほどなーと思ったんです。それがすごく印象深くて、あとは薬物の事件とかも同じ人が何度も再犯している印象があるんですけど、必ずそういったものからも卒業できるということをおっしゃっていたことがすごく印象的で、それを例えばビジネスマンだったらタバコだったり、お酒だったりとか、あと遅刻してしまうとか、何かそういう日常的な悪習慣をやめるための方法として、執筆してもらえないかなと思ったのがきっかけでした。
今井:ありがとうございます。小早川さんはストーカーの加害者をカウンセリングする貴重な存在として、先日もAbemaTVにご出演されるなど、ご活躍されていると伺っているんですけど、今メインにされている活動というのも、やはりそういった依存をやめさせる方法の様なカウンセリングなんでしょうか?
小早川:そうですね。私のところに相談に来られる方の多くがストーカーの被害に遭っている方ですから、ストーカーの被害にもう遭わないように、力をかしてあげたいという、そういう活動ですので、まずは被害者の安全確保をするところから、逃げているだけではまた追いかけられてしまうので、追いかけている側ですね、ストーキングをしている側に「やめてくれませんか」ってお願いをしたり、「どうしても連絡したいなら、私通してくれませんか?」と伝えたりするところから、ストーカーをしている人に関わっていき、最終的にはそのストーカーをしている人が、被害者に対して、標的にしている相手に対して、関心が落ちていく、追いかけなくてもよくなるところまで、関わり続けるという仕事をしていますね。
被害者だけでなく加害者にも心のケアが必要
今井:ありがとうございます。なんとなく依存というものは、先ほど杉浦さんからもお話があったんですけども、一生ついてまわるみたいなイメージがあって、やめられるというのがすごく驚きでした。具体的にこんなことが他のカウンセラーさんと違うみたいなところはあったりしますでしょうか?
小早川:それは、両方に会うのはおかしいというのが一般的な考えですよ。対立している人間がいて、カウンセラーはどちらかの相談に乗るのが一般的なんですね。だから、被害者が相談に来たら、被害者のためにカウンセリングをする。で、加害者が「僕、やめたいんです」ってカウンセラーのところに来たら、その方、加害者とカウンセラーが話す。決して両方に関わらないというのはある種、常道なわけですね。私のやっていることは異端的な、一般的ではないものなんですよ。だから、そこが大いに違うところだと思いますね。しかし、夫婦カウンセリングとか親子カウンセリングとか、関係療法という領域がありまして、家族療法みたいな感じで、1人の人の悩みは家族全体の病理と捉えて、家族全体に対して働きかけるカウンセリングをするというのはあり得るわけですから、これがストーカーとストーカーの被害者の間で、関係療法的に関わっていると言えるのではないかなと私は考えているんですね。
今井:確かに両方に関わるというのは、はじめて聞いた気がします。
小早川:でも、学校のいじめでもそうなんですけど、いじめられている側から相談があった時に、よしよしと匿っているだけでは、解決しないと言うか、やっぱりいじめている方がいじめないようになるように指導しないといじめの問題もなくならないじゃないですか。それと同じなので、被害を知った時に、やはり加害者をどうやって止めるかということも、その人本人がやらないまでも、考える必要があるのかなと思いますね。
今井:はい。ちょうど昨日読んだ本にそのお話が書いてあって、日本だといじめられた側が「心のケアをしないと。かわいそう、かわいそう。被害者、被害者」というような風潮があるらしいんですけど、海外ですと、いじめられた側がいじめた子を「あの子、何か心の問題があるみたいだからカウンセリングしてあげて」っていうふうに、いじめた側をカウンセリングするという風潮らしいんですね。そんなふうに違うんだと、ちょうど驚いたので、今の話になるほどなと思いました。
杉浦:そうなんですね。今井さんもそのような本を読まれたとのことで、なるほどと思ったんですけど、確かに人をいじめちゃうとか、必要以上に追いかけちゃうとかって、その人自身に病理があるわけじゃないですか。本当はそっちを見るのが本来であって、被害を受けている方を・・・、もちろん心の傷を受けるわけだから、そこをケアするというのは大事なんですけど、そっちばっかりをしていくと、どんどん自分が悪かったんじゃないかみたいな、そういう方向にいきそうな気がして、もちろんそれもケアする部分でもあるし、大事な部分ではあるんだけれども、やってしまう側のことを考えるというのは大事だなと思いました。それが今まであまりやられていなかったというところにちょっと驚くと言うか・・・そんな考えです(笑)。
まずはストーカー加害者と被害者の「窓口」になる
今井:ありがとうございます。ちなみに加害者、被害者、両方の方に会われて、トラブルみたいなものはあったりしましたか?
小早川:いえ。驚かれるかもしれないのですが、加害者に連絡を入れるわけですよね。すぐに加害者に連絡を入れるわけではなくて、「これは止めて、連絡をいれなきゃいけないな」という時にだけ連絡を入れるんですが、連絡すると怒るとか無視するストーカーの人ってあんまりいないんですよね。
今井:そうなんですか!
小早川:ええ。私もはじめは驚いたんですけど、嫌がるかなと思ったら、ある種、加害者は反応を欲しがっているわけで、なんでストーキングするかと言うと、やっぱり反応が欲しいからやっているんですよね。それを連絡してもずっと無視されていて、餓えているわけですよね。そこに曲がりなりにも自分が追いかけている人のカウンセラーが「話を聞きたいんだけど」って来ると、そして、「あなたの言いたいことをその人に私を通して伝えることができますよ」って言われると、突破口が開いたかのような気持ちになるらしくて、喜んでたくさん話をしてくれるんですね。なので、「カウンセリングしましょう」みたいな、そういうことではなくて、「窓口になりますよ」っていうところから、窓口をやりながら、自然なかたちで、ストーカーをしている人が心の方向転換ができていくように関わりますね。
今井:なるほど。
小早川:なので、トラブルが起きたことは、やり方としてはないですね。「お前が入ったからとんでもないことになった」とか、そういうことはなくって、私と加害者の間では結構バトルしますけど、被害者に迷惑を被ってしまったっていうことはないです。私とストーカーしている人っていうのはトラブルっちゃあ、トラブルんですよ。彼の言い分が全然ダメな場合は、はっきりと「そんなダメなことはあの人には言えません」って断りますよね。「殺してくれって伝えろ」って言われたら、「そんなこと言えません」って断りますよね。そしたら、「なんでなんだ」と、「あいつは俺に死ねって言ったんだ」とか、こういう会話をやるわけですよね。だから、そこでは対立が生まれるんだけど、そこはあくまでも私とストーカーの間でやることであって、被害者が見聞きするところではないので、迷惑がかかったことはないですね。
杉浦:小早川さんとストーカーの方の対面の時はそれこそちょっと怖い言葉とか強い言葉を言われることはあるとは思うんですけど、そういう場面でもひるまず向き合うところにすごく小早川さんの使命感を感じます。
小早川:ものすごく辛いんですよ。「あんたはバカだ」って言われたり、特に女性のストーカーは私の対する攻撃が強いことがありますよね。最初に介入する時は突破口の様に思えても、「よりを戻させろ」って言わることもあって、「それは無理ですよ」と、「だって、あの人はあなたのことが嫌いですもん」とか言うじゃないですか。で、「嫌ってませんよ」って言うので、「いえ、嫌われていますよ」とか言うので、向こうはカーっとなるじゃないですか。「あんたは何も知らないくせに」とか、色々な批判を言いますよね。だから、その時はさすがに私も結構辛いなって思うこともありますので。でも確かに使命感と言えば使命感で、私が踏ん張らなかったら、被害者は常にこういうことをやられていたんだな、こうやって苦しめられていたんだなって思うと、私が代わりに受けてあげているので、救われているかもしれないなって。これでよかったって思うんですよね。そもそも盾になる仕事ですからね。
今井:ありがとうございます。では、まだまだお話をお伺いしたいところなのですが、お時間が来てしまいましたので、次回は実際に悪い習慣を辞める技術というものを、一般の人にも使えるようなかたちで小早川さんにお話を伺っていきたいと思います。本日はゲストに小早川さんとフォレスト出版・編集部の杉浦さんにお越しいただきました。どうもありがとうございました。
小早川:ありがとうございました。
杉浦:ありがとうございました。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)