謎の作家・じょじむらを追う。
先日、書影を見た瞬間「なんだ、これは」と度肝を抜かれた作品を発見しました。この『きみが元気のない時に見る本』(じょじむら作)です。
これは電子書籍のみで存在する、いわゆる「ボーンデジタル」の作品です。「うつねこ」という「だいたいいつも元気がない」主人公の猫が読者と対峙して語る。
お前も、元気ないの?
そうか・・・。
じゃあ、同じだね。
こんな対話から始まり、途中クスリとさせながら、最後は不思議に癒されてしまう全62ページ。作者は小学生でしょうか?
それにしては言葉の選び方に秀逸さを感じました。
『きみが元気のない時に見る本』には592件もレビューがついています(2020.9.19現在)。
kindleはいまや小学生でも表現を発表できる場として門戸が開かれたということなのか。。
・・・と、そんなことを考える矢先に『きみがさびしい時に見る本』という2巻目があることに気づきます。というか、「きみが見るシリーズ」の全2巻中の2巻がこれだった笑
「きみがみるシリーズ」っていうんですね。
なるほど、たしかに「読者(=君)」が「うつねこ」をみているから、ぴったりのシリーズ名かもしれない。
謎の漫画家・じょじむら。気になるので作者名をクリックすると、ほかにもありました。
鶏のお尻の肉「ぼんじり」を遺伝子組み換え技術を用いて「けつだけのとり」を作るとか、シュールすぎる。
「まぐろを水中でさしみにするそうち」という発想がいかにも小学生っぽい。そして、「じょじむらのじゆうちょうまんが!!」全3巻中の最終巻である3巻がこれ。
ご丁寧にも『じょじむらのじゆうちょうまんが!! (全3巻)』と合本版もある。
(すべて無料で読めます)
で、よくよくググってみると、どうやら「オモコロ」というサイトで「架空女児」という名前で活動されていました。どうも、小学生を模した大人が書いてるっぽいです。
『じょじむらのじゆうちょうマンガ!!』全話書籍化プロジェクトというクラウドファンディングもやってました。目標金額ゲッツしてるし。
この作品を目にして思い出したのが、これです。
文具マニアの小学6年生の男の子が、計168アイテムもの文房具を手書きの絵で歯に衣着せず評論している本。小学生らしいパワーが横溢したこの本は話題となってベストセラーとなりましたね。
子どもが描く粗削りでアンバランスな絵に、大人が惹かれる心理ってなんなんだろうと考えさせられます。
謎の作家・じょじむらさんはギャグ漫画でしたが、シュールなギャグ漫画的なタッチを極めて、頭角を現しているイラストレーターさんをご紹介したいと思います。
しまだたかひろさんです。
昭和っぽいけど、新しい。そんな魅力が溢れるしまださんの絵ですが、どこかサブカル文脈な現代アートの香りもします。しまださんとは『シンクロちゃん』(佐藤由美子・著)を通して出会いましたが、今後、要check this outな作家さんかと思います!
(編集部・寺崎翼)