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著者の原稿にある文末表現「(笑)」は地上から撲滅すべきか?

先日、職場の後輩から相談を受けました。
なにやら聞いてみると、以下のような迷い。

「著者から頂戴した原稿を精査しているが、文末に(笑)が多用されている。これはすべて割愛すべきか?」

自分は基本方針としては、文末の「(笑)」という表現はほぼ削除することが多い。まれに、あとがきに「著者個人のひととなりが伺える一文」が添えられることがある。プライベートのこと、趣味のこと、家族のことなど。そういう文章の場合には、あえて「(笑)」を残したりもする。

後輩の相談に対しては、このように返した。

===
ビジネス書の場合、文末に「笑」はNGです。
ビジネス書でなくても、使わない方がいいでしょう。

道がつづら折りになって、
いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、
雨脚が杉の密林を白く染めながら、
すさまじい早さで麓から私を追ってきた(笑)

これでは川端康成もノーベル文学賞を取っていないと思います。笑
===

後輩から「了解です」と返事があり、話はここで終わるものと思っていた。


文末の「(笑)」はなぜダメなのか?

ところが、翌日さらに連絡が。
どうやら、著者さんが「(笑)」の使用にこだわっているのだという。

その理由としては、書籍コンテンツのベースになっている講座が持つ、わかりやすく楽しい雰囲気、ニュアンスを文章でも表現したいという。そもそも「なぜ、(笑)がNGなのか、明確な理由を知りたい」とのこと。

そこで、考えました。
(笑)がなぜダメなのか。

NGな理由①
文章の格が落ちる=内容の信憑性に悪影響が生じるから

そもそも親しい間柄で使うようなくだけた文章表現を、万人に届ける(いわゆるオフィシャルな性格を有する)一般書籍で使用することそのものが、コンテンツの持つ情報の信頼性を損ねる可能性がある。

NGな理由②
文末の「(笑)」という表現を好まない人が存在するから

日常のコミュニケーションでも

「◯◯◯◯です。笑」
「◯◯◯◯です(笑)」
「◯◯◯◯ですwww」
「◯◯◯◯です。草」

こういう表現を好まない人はいます。

好まない理由としては・・・
・笑いを強要されているように感じる
・読み手を馬鹿にしてるように感じる
からだと思う。

この発言小町の質問が笑えた。

もちろん、日ごろの仲間内で馬鹿話なんかをするときは「笑」だろうが「www」でも「(爆)」でもなんでも、自由に使えばいいと思うし、私もよく使う。

ただし、(繰り返しになりますが)万人向けの「どんな人が読むかわからない書籍」においては、とてもリスキーだ。

以前、うんと先輩の編集者に細かなミスを指摘されたことがあります。そのときに「そんな細かいこと、気にする読者いますかね?」と、生意気にも反論したことがある。そのとき、このように叱責された。

「あのさ、本を読んでて『ここが気になる』とか『ここがイヤ』とか感じることってあるじゃん。それって、そう感じた読者が一人でも存在した場合、その後ろには同じことを感じる数万人、数十万人の読者がいるんだよ。もっともっと想像力を働かせないとダメだよ」

この言葉は今でも肝に銘じてます。

NGな理由③
そもそも文末の「(笑)」は何も表現していない常套句だから

ビジネス書に限らず、文章で退治、根絶しなければならないのは「常套句」です。「抜けるような青い空」とか、そういうフレーズ。

考えてみれば、文末の(笑)ほど、常套句中の常套句ではないか。

先の後輩から、最後にこう質問が添えられていた。

「『笑』に代わる表現などあったりしますでしょうか?」

私からの回答はこうだ。

「笑」を使わずに笑わせることです!

※以上は個人的見解です。

(フォレスト出版編集部・寺崎翼)

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