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「劣等感」と「使命感」が原動力となるソース・オブ・エナジー

フォレスト出版の寺崎です。

これまで3回にわたって『経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術』(小野壮彦・著)から、おいしいところをご紹介してまいりました。

▼第1回 「人を見る目」は鍛えられるのか?

▼第2回 人の本質を見抜くには「4つの階層」に分解すればいい

▼第3回 「知識・経験・スキル」を評価する人事採用はもはや時代遅れ!?

今日はいよいよ、最深部の「ソース・オブ・エナジー」について見ていきたいと思います。

地下3階の「使命感」と「劣等感」が人を突き動かす

目の前の相手を見抜く、人を選ぶためには地上1階の「経験・知識・スキル」、地下1階の「コンピテンシー(=行動特性)」、地下2階の「ポテンシャル」を順番にみていくわけですが、これだけでは説明がつかない事例を多くみてきた著者の小野さんはさらに深い部分に着目しました。

 これまで述べてきた、地上1階から地下2階のポテンシャルに至るまでの流れは、エゴンゼンダーで学んだことを、できるだけわかりやすくアレンジを加えて提示してきたものだ。
 大企業のトップマネジメントを評価するうえでは、ここまでで十分だったと思う。
 しかし、不具合が発生したのだ。
 前述のように、エゴンゼンダーを卒業し、ZOZOに勤めたのち、2019年よりぼくは、日本を代表する独立系ベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)に転じ、起業家を支援する仕事を担うことになった。
 ここでは、数々の起業家にお会いし、事業成長に向けたメンタリングをしたり、ときには自身の自己変革のためのコーチングをしている。
 だが、優れた起業家の特徴を理解するうえで、どうにもこれまでの地下2階までの理論では、説明がうまくいかないケースが体感的に増えてきたのだ。
 ポテンシャルよりさらに深い世界。そこには何が広がっているのか。
 起業家たちを起業家たらしめるものとは何か。
 新しい未来を作る天才たちが共通して発する、何とも言えないあの感覚は何なのか。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』より

著者は、楽天の三木谷さん、ZOZOの前澤さんという天才的経営者のもとで参謀を務めたのち、ベンチャーキャピタリストとして数多くのスタートアップ経営者と仕事をともにします。そこでアクの強い個性を放つ彼らには、従来の「ポテンシャル・モデル」を超えた何かがあると考えました。

 謎のヴェールに包まれた、さらなる地階へと続く階段の扉を開け、さらに深い地下3階へと進んだ先に広がっていたのは、ぼくが提唱するコンセプト「ソース・オブ・エナジー(エネルギーの源泉)」である。
 言い換えるとそれは、その人の精神性だ。
 この「ソース・オブ・エナジー」とは何か。
 ヒリヒリするような頑張りを生む力。
 それは、「使命感」であり、また、「劣等感」だと考える。
「使命感」はエネルギーの源泉となり、各階層のそれぞれの因子の発達において、加速合成をもたらす。
 例えば、医学の道を志す人の動機として散見されるのが「子どもの頃に家族を不治の病で失ったので、自分がいつかその病気を治したい」という使命感だ。あるいは、「若い頃に旅した発展途上国の子どもたちを何とかしてあげたい」と使命感に燃える実業家の話も聞く。
 それらは後天的かもしれないが、先天的なケースもある。ギフテッドと呼ばれる圧倒的な頭脳の持ち主たちだ。彼ら、彼女たちと会うと、物心がついたときから、「この能力は世のため人のために使うべきじゃないか」という使命感に駆り立てられていることに気付く。このように使命感は、ちょっとやそっとのことでは揺るがない強固な精神性を、その人物に授ける働きがある。
 では、「劣等感」とは何か。
 通常、劣等感というものは、ネガティブな意味で使われているだろう。しかしぼくは、人の成長という観点において、劣等感も使命感と同じく、その人の人生の発展にプラスに働く、ポジティブなものだと考えている。この点は強く主張したい。
 それは、劣等感が「ソース・オブ・エナジー」として確率変動を生み出していたとしか考えられない経営者を、ぼく自身が数多く見てきたからだ。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』より

「使命感」はとても美しいものです。
でも、多くの人にとっては無縁なことかもしれません。

一方で「劣等感」というと、普通はあまりいい要素とは思えません。できれば劣等感は持たずに生きていきたいものです。しかし、誰もが多かれ少なかれ劣等感を抱えて生きています。

そんな「劣等感」を強烈なバネにしながら成功している人物が周囲にいませんでしょうか?

「ああ、あの人がそうかも」

そんな風に思い浮かぶ人物が誰にもちらほらいるのではないでしょうか。あるいはご自身がそうだと自覚されているケースもあるかもしれません

しかも、この「使命感」と「劣等感」は陰と陽をなす要素だといいます。

「使命感」と「劣等感」は陰と陽で交じり合う

 全てのものは「隠」と「陽」に分けられるという陰陽の思想がある。
「使命感」も「劣等感」も、その人の根底にあるマグマのような情熱が元になっているが、かたや外面に向かうもの、かたや内面に向かうものというのが面白い。いわば光と影だ。短絡的に考えるならば、「使命感」を陽とし、「劣等感」を陰として捉えがちだ。そして、黒色の隠を負のエネルギー
と捉えてしまうだろう。
 しかし、それは違う。
 陰は例えるなら、月、夜、冬、静。
 陰と陽は、どちらが良くて、どちらが悪いといった類のものではない。
 反対側の存在があってこそ、もう一方も成り立ち、互いに緩く交わり合う関係で、どちらもポジティブとなりえるのである。
 しかし、陰も陽も、本人がひとたびダークサイドに堕ちてしまえば、そのどちらも、揃ってネガティブな力になり変わる。同じ使命感と劣等感が、今度は強烈な負のパワーとなり、周囲にまき散らしてしまうのだ。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』より
小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』より

 想いを強く持つ人であればあるほど、その裏は苛烈となる。つまり、「劣等感」が正のエネルギーになることもあれば、逆に「使命感」がダークサイドに誘うこともあるのだ。そう、陰陽の双方が、表として、ともに正のパワーにもなるし、裏として、ともに負のパワーを発揮しうるということを理解していただきたい。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』より

「劣等感」と「使命感」がダークサイドに堕ちたケースとして、本書では映画『スターウォーズ』のパルパティーン卿が事例として用いられています。

wkipediaより

 彼はシス(陰)としての活動のかたわら、ナブーの政治家(陽)として表の顔を演じ続けてきた。「使命感」があったかは定かではないが、「劣等感」は強く持っていたというのが、物語の設定のようだ。
 ひとたびダークサイドに堕ちてしまうと、パルパティーン卿のように、手から強烈な青白い雷撃を放つフォース・ライトニングを「ビシャー」と放つ力を得る(これは半ば冗談ではない。多少大げさかもしれないが、世界中で恐ろしい経営者による、似たような話をよく聞くものだ。米国のある著名創業者とのミーティングはいつも「Blood on the floor だ」というコメントを、某世界的企業の幹部から聞いたことがある)。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』より

恐ろしいですね・・・。

逆に劣等感と使命感を強烈な原動力にして成功した事例として、本書ではソフトバンクグループの孫正義さんが挙げられています。

 この「劣等感」や「使命感」は、もっとも深い層にあるがゆえに、他人からは見えにくく、わかりにくく、変わりにくい。そして、その上の層全てに影響を与えてしまう。
 この本を執筆中に亡くなった京セラ創業者の稲盛和夫氏は、「『考え方』×『熱意』×『能力』で人生と仕事の結果が決まる」と生前おっしゃったが、その「考え方」の部分に近いものがあるのかもしれない。ある意味では、その人の生きる哲学に近い。
 どんなに熱意や能力が高くても、考え方が間違っていたら成果がマイナスになってしまうのと同様、どんなに知識や経験を重ね、コンピテンシーを磨き、生まれ持ったポテンシャルが高くても、事を成す人となるには、行動の源泉である「使命感」や「劣等感」の強さと、矢印を他人や環境ではなく、自分に向けられるか否かにかかっているのだ。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』より

いかがでしょうか。あなたの周囲にいる「すごい人たち」に思い当たる節はありましたでしょうか。

最後にVoicyの人気チャンネル「スタートアップ営業ラジオ」のジェイさんが「この本はめちゃめちゃおススメ!」と紹介してくださっていました。すごくわかりやすい解説なので、どうぞ!


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