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部下に仕事が任せられないあなたへ
フォレスト出版編集部の寺崎です。
先日、上司と部下のマネジメントスタイルを決める「9BOX」という考え方をご紹介しました。
これは主に「仕事を移譲する」という場面で必要となるのですが、今日は具体的に仕事を部下に「委任(権限移譲)」をする場合、どうすればうまくいくか、中尾隆一郎さんの最新刊『現場が動くマネジメント』からご紹介します。
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正しい「委任」のやり方
「委任」の場合、上司は事前にゴールとOBゾーン(やってはいけないこと)を明確にし、それ以外は見守ることがポイントです。
「委任」の際に誤解が多いのは、委任する側が丸投げしてしまうこと。委任される側も、委任されたのだからと一切報告をしないで手前勝手にできるという誤解が生じがちです。
これらのコミュニケーションの齟齬(そご)により、後々問題が起きるのです。
では、正しい委任は、どうすればよいでしょうか。
委任する側は、❶ゲームのルール(やってほしいこと)、❷OB(やってはいけないこと)、❸報告内容、手法、頻度をすり合わせます。
例えば、権限移譲をゴルフにたとえると、カップにボールを入れる打数を最小にするのがゲームで勝つルールです。そして、OBラインを超えてはいけないなど、やってはいけないことがあります。加えて、ゲームボードを見れば、いつでも状況を把握することができます。これが報告の決まりごとです。
そして、委任される側も、きちんと報告をするようにします。そうすればコミュニケーションの齟齬は起きません。
委任側が、これを意識してうまくいっている事例、また逆にうまくいかなかった事例を紹介しましょう。
創業家から経営を委任されたケース
創業家から新社長として権限移譲された方の話です。
新社長は、創業家からかなりの権限を移譲され、自由に経営をされています。実際、新社長は、大きな業態変更を行い、それに伴い業績も大幅に向上させています。
しかし、創業家への報告も怠っていません。これは、権限移譲の話があった際に、創業家と新社長の間で決めたことだそうです。それは、毎日10分でも創業家と直接話をするということです。毎日です。毎日コミュニケーションを行うことで、相互に疑念が起きないようにしているのです。
1日、たった10分の時間で、疑念や齟齬が起きないのです。
投資対効果の高い時間の使い方ですよね。
逆に別のケースでは、創業家から新社長を任されて成果も上げたのに、うまくいかなかったということもありました。
新社長は、創業家から権限移譲され、数か月で過去最高の業績を上げました。ところが、創業家と新社長の間で、コミュニケーションについて取り決めをしていませんでした。結果として新社長は、創業社長への連絡を怠ってしまったのです。
創業社長は、業績はよいものの新社長から連絡がないことで、もしかして自分を追い出そうとしているのではないかと疑心暗鬼になったそうです。そして、創業家は、新社長を交代させたのです。新社長の能力への嫉し っ妬と だったのかもしれません。
委任した側、委任された側とも、定期的に情報共有をすることを忘れてはいけないということですね。
委任する際も、リーダーは、現場が見える状況を作っておかないと、後になって齟齬が起きがちです。
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「仕事を任せる」ってなかなか難しいことで、ついつい「自分がやったほうが早い」と考えて、仕事を抱え込みがちです。
その場合は・・・
❶ゲームのルール(やってほしいこと)
❷OB(やってはいけないこと)
❸報告内容、手法、頻度
・・・この3つを事前にすり合わせておくことが大事という話でした。
また、委任する側も委任される側も、双方で情報共有すること。
いかがでしょうか。みなさんのお仕事に役立てられれば幸いです。
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