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#438【ゲスト/編集者】「刊行点数」より「売れる」にコミットした本づくり

このnoteは2022年7月14日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

ジャンルレスで編集者独自の視点を重視した企画づくり

土屋:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める、土屋芳輝です。本日は編集部の森上さんとともにお伝えしていきます。森上さん、どうぞよろしくお願いします。
 
森上:よろしくお願いします。
 
土屋:本日も素敵なスペシャルゲストをお招きしているんですが、森上さん、今日はフォレスト出版ではなく、他の出版社の編集者がゲストに来てくださっているんですよね?
 
森上:そうなんです。今回も大変お忙しいにもかかわらず、ゲストにお越しいただいて本当にありがとうございます。
 
土屋:ということで、本日のゲストは飛鳥新社・出版部副編集長の古川有衣子さんです。古川さん、本日はどうぞよろしくお願いします。
 
古川:よろしくお願いします。
 
土屋:では、さっそくなんですけれども、古川さんから簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?
 
古川:はい。私は飛鳥新社という出版社に勤めていまして、書籍の編集者をしております。飛鳥新社という出版社は、ご存じの方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、今は、『私が見た未来』ですとか、『変な家』という文芸書が売れておりまして、かなり変わった出版社ですね。かつては、『くじけないで』とか、『おやすみ、ロジャー』とか、ミリオンセラーをかなり出している会社で、小さいながらも、そういう変わった本をどんどん売っていくぞっていう会社で働いております。
 

土屋:ありがとうございます。森上さんは古川さんとどのようなかたちでお知り合いになられたんでしょうか?
 
森上:実は共通でお世話になっているライターさんがいまして、郷和貴さん。
 
古川:はい。
 
森上:郷さんから古川さんのお名前はよく聞いていたんですよ。素晴らしい編集者がいらっしゃるということで、いつかお会いしたいなと思っていたら、先月ぐらいでしたかね? お目にかかったのが。
 
古川:そうですね。
 
森上:いろんな出版社の編集者で会合があって、そこで古川さんとお会いして、「あの古川さんだ!」と思って。ところで、古川さんは大学を卒業してすぐに出版社ですか?
 
古川:いえ、私はかなりフラフラしていまして……。「今までずっと編集者をしていますよ」って顔をしているんですが、実は全然そんなことはなく(笑)、ちょっと寄り道をしたあとに最初は編集プロダクションに入りました。
 
森上:編プロではどんなものをつくっていたんですか?
 
古川:編プロでは主に2種類あって、雑誌と書籍をやっていたんですけれど、雑誌のほうが今はもうないのかな? 「TVガイド」っていう情報誌、あとはNHKの「きょうの健康」という番組の雑誌ですね。
 
森上:はいはい。なるほど、なるほど。じゃあ、結構実用性の高いご本をやられていたっていう感じですかね。
 
古川:そうですね。ここでは割と健康とか、医療とかの本も社長がやっていたところもあって、「TVガイド」も昔……、すみません。名前が出てこないのですが、健康系の放送で、納豆が売り切れたっていう……。
 
森上:番組ですかね?
 
古川:番組です! その記事を書いていましたね。
 
森上:そうでしたか。それで、編プロの次は出版社ですか?
 
古川:当時、編プロの社長と今はなき中経出版というビジネス書の版元がありまして、そこの上役の方が仲良しで、月の半分ぐらいの中経出版に出向して、雑誌の編集をお手伝いしていたっていうのがあります。
 
森上:そうでしたか。出向というかたちで中経出版に行っていらしたんですね。
 
古川:そこでビジネス書を初めて知って、その後に中央法規出版っていう、介護とか医療とか看護を専門で出している会社の機関誌を編集して。
 
森上:それは雑誌になるんですかね?
 
古川:雑誌です。介護職向けの雑誌なんですけれども。で、それが残念ながら休刊になってしまって。で、その後に辞めて、あさ出版というビジネス書の版元に行き、その後にかんき出版で、今は飛鳥新社です(笑)。
 
森上:なるほど。結構渡り歩いていらっしゃって。聞く版元のお前が結構身近な……。我々の業界で一番身近な会社さんばかり(笑)。
 
古川:そうかもしれないですね(笑)。この辺の業界の方はよくご存じの。
 
森上:そうですよね。僕、古川さんのお名前を存じ上げたのが、さっきのライターさんから聞いたっていうこともあったんですけど、かんき出版さんにいらっしゃったときにもお名前をお聞きしていて、優秀な方がいらっしゃるんだなと思っていて、それでお目にかかったら、「あれっ?」って。お名刺が違って、びっくりしたっていう。飛鳥新社さんだったっていう。
 
古川:そうですね(笑)。
 
森上:(笑)。今、飛鳥新社さんって、編集者は何人ぐらいいらっしゃるんですか?
 
古川:今は嘱託の人も含めて10名ですね。
 
森上:10名っていうと、そこそこいらっしゃいますね。雑誌もやっているんでしたっけ?
 
古川:そうですね。書籍編集が10名で、雑誌が6名いますね。
 
森上:僕の記憶が確かならば、「月刊Hanada」って、花田さんって、御社でしたっけ?
 
古川:そうです。花田編集長の「月刊Hanada」という雑誌をやっています。
 
森上:そうですよね。今日の収録は7月5日ですが、飛鳥新社さんに移られてどのくらい経ちますか?
 
古川: 1年半ぐらいですかね。
 
森上:飛鳥新社さんは『私が見た未来』とか、『おやすみ、ロジャー』とか、ジャンルは結構幅広い感じですか?
 
古川:ジャンルが……、おそらく弊社のホームページを見ていただくとわかると思うんですけれども、本当にカオスと言いますか……。
 
森上:カオス(笑)?
 
古川:はい(笑)。とにかく編集者がおもしろいと思ったこととか、やりたい企画、売れそうと思ったものを出すというのを信念としているので、逆に売れ線とか、そういう感じで企画を出すと嫌がられるっていう、すごく変わった会社ですね。
 
森上:そういう感じなんですね。そういう意味でも、いい意味で「引っかかりがある企画」が多いんですね。
 
古川:そうですね(笑)。

自由と責任がセットになった本づくり

森上:御社の場合、新刊は月にだいたい何冊くらい出る感じですか?
 
古川:新刊はどのぐらいだろう? そんな感じの出版社であり、編集者が多いので、納得いかないと出なかったりとかで、月に1、2冊っていうこともあれば、いきなり8冊とか出ることもあったりしますね。
 
森上:なるほど。そこは意外と自由というか。いい意味で編集者任せというか。
 
古川:そうですね。
 
森上:でも、それはいい環境ですね。刊行点数に縛られる会社が多いと思うんですけど、うちも月にだいたい4冊ぐらいは出すっていうのがあるので。御社には、年間刊行点数のノルマみたいなものがあるわけでもない?
 
古川:一応、ありますね。明確な基準はないんですけども、「6冊ぐらいは出そうね」っていう目標で。はい。
 
森上:目標でね。そっか、そっか。そこは出せる人が8冊出したり、出せない人は4冊とか。そういうときもあるっていうことですね。
 
古川:そうですね。むしろ、やっぱり会社の考えが強くて、売れる本を出すっていうことに一番重きを置いているので、「点数よりも売れるもの」っていう。そんなうまくいかないんですけれど(笑)。
 
森上:いやいや。それは素晴らしい。編集者冥利に尽きるというか、なかなか実力勝負の会社だなという感じですね。
 
古川:そうですね。
 
森上:なるほど。かんき出版さんとはまたちょっとタイプが違う感じですよね。いい意味で。
 
古川:そうですね。もう真逆のところがあって。
 
森上:真逆ですか(笑)? そこまで?
 
古川:そうですね。かんき出版は打率を上げていくというか、いつヒットが出るかわからないので、本数は均してちゃんと出していこうねっていう、いつかヒットが出るっていう考えでやっていて、それはそれでいいなと思うんですけれど、今の飛鳥新社はどれだけ振ってホームランが打てるかみたいなところがあります。
 
森上:なるほどね。野球で例えると、かんき出版さんとか、弊社もそうですけど、打席がある程度あって、振っていく。たまにバントヒットとかよりも、飛鳥新社さんの場合は、大振りしていく感じですね。
 
古川:そうですね。だから10本中9本は三振でもいいから、1本ホームラン打てよ、みたいな。
 
森上:なるほどね。すごくおもしろい。差し支えない範囲でいいんですけど、企画はどうやって? 結構会議とかやるんですか?
 
古川:企画は月に1回、企画会議があるんですけど、プレ会議と本会議がありまして、プレが編集部の会議。そこには編集部のメンバーが出て、そこで決済が降りたら、次の本会議で営業部長ですとか、社長の前でプレゼンをして、本格的に通るっていう段階を踏みます。
 
森上:なるほどね。月に1回だから、そこには各編集者から尖った企画がバンバン出てくるわけですね。
 
古川:そうですね(笑)。尖っているものも、よくわからない石ころのようなものも(笑)。本当によくわからない企画がいっぱい出てくるって感じです。
 
森上:なるほど。コメントに困っちゃう。
 
古川:コメントできないものが結構あって。
 
森上:(笑)。
 
古川:全然わかんないんですよ。そんなの知らないなあっていうものばっかりで。
 
森上:いや、おもしろいな。それはすごくおもしろそう。そういう意味では編集者の個性が出るという感じですね。
 
古川:そうですね。個性以外の何もないっていう感じですね(笑)。
 
森上:なるほど(笑)。企画の立て方って、おもしろい事象、テーマから企画を考える場合もあれば、おもしろいちょっと変わった人から企画を考えたり。古川さんの中では企画を立てるときの傾向ってあったりするんですか?
 
古川:私は必ずテーマから入るほうで、たぶん編プロにいたからだと思うんですけれど、わりと自分で組み立てていきたいっていう感じの癖があって。なので、人から立てると、その組み立てがうまくできないっていうことが多いんですね。
 
森上:思いどおりにいかない。
 
古川:そうです、そうです。そういうちょっと自分勝手なところがありまして(笑)。なので、8割、9割はテーマからですね。たまに人っていう感じです。
 
森上:そうなんですね。そこもやっぱり人それぞれなんですかね? 御社の中でも、おもしろい人にコミットして出してくる編集者もいれば、古川さんはテーマからっていう感じで。
 
古川:そうですね。結構まわりの編集者に聞くと、半々かな。でも人のほうが多いんじゃないですかね。どうですかね?
 
森上:そうですね。いろいろと他の出版社の方にも聞くと、だいたい半々ですね。でも、意外とテーマの人が多いかもしれないですね。
 
古川:そうですか。
 
森上:それこそ企画が決まって、タイトルって、御社はどの段階で決めるみたいなのってあるんですか?
 
古川:タイトルは、かんき出版にいたときはタイトル会議っていうのがあって、編集者が「これ、どうだろう」っていうのを出していって、それをみんなであーだこーだ言いながら、営業部の人の意見も反映されたり、編集長の意見が反映されたりということがあったんですけれども、今は良くも悪くも編集者が全部決めるっていう感じで。
 
森上:おー。なるほど。それは、相当編集者が責任を持っているって感じですね。
 
古川:そうなんですよ。好きにできるけど、責任もやっぱり発生するっていう感じの考え方みたいですね。
 
森上:なるほど。自由と責任がセットって、いいですね。そのプレッシャーに耐えられない人にはキツイのかもしれないけど、自由と責任に覚悟がある人にとっては最高の環境ですよね。
 
古川:そうですね。たぶん、ある程度いろいろと経験してきて、自分のスタイルがある人にはすごく合うような気がします。
 
森上:それこそ、かんき出版さんとか、うちの場合ですと、ビジネス書が軸でメインですけど、御社のイメージといしては、いい意味で「ジャンルを問わず」という感じですからね。カオスというか。
 
古川:そうですね。本当にそうです。昔、通らなかったサブカルみたいな企画とかも通りますし。
 
森上:(笑)。じゃあ、古川さんがずっと前の会社とかからしたためていた企画を出したら通るみたいな。
 
古川:全然通りますね。
 
森上:(笑)。それはおもしろい。なるほど。やっぱり会社の色って本当に違うんですね。
 
古川:それはめっちゃありますね。
 
森上:今、古川さんのお話を聞いているだけでも相当違いがあるんだなってわかりますけど。それで、本ができて、販促とかになってくると、編集者がコミットするものなのか、そこは専門部隊がいるのかっていうと、飛鳥新社さんはどんな感じですか?
 
古川:さすがにパネルとかの作業とかは営業部がやるんですけれども、基本は本を企画して進めていきますよね。で、注文書は編集者が作成します。で、広告とかアマゾンのデザインとか、POPとかも編集者が全部考えて形にしていくっていうスタイルで、本当に全部やります。何でもやります。
 
森上:なるほどね。パネルとかのデザインは装丁をお願いしたデザイナーさんにつくっていただくっていう感じになっているんですかね?
 
古川:人によりますけれど、デザイナーさんにお願いすることもありますけど、もう完全に自分で書き起こしてつくってっていう感じです。
 
森上:すごい。へー。自由と責任が本当に実務にも反映されるっていう感じなんですね。
 
古川:もう完全にマイワールドですね。
 
森上:(笑)。すごい。改めてお聞きすると、すごくおもしろい出版社さんですね。ちょっとお時間が迫ってきてしまったのですが……。
 
土屋:そうですね。お時間が来てしまったんですけども、今日は社外秘レベルの貴重なお話まで、いろいろとお聞きできて、とても勉強になりました。そんな古川さんがご担当されたお勧めの本として、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』『マンガでよくわかる モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』という2冊があるんですけども、この本については明日、いろいろとお聞きしていきたいなと思っております。こちらの本はアマゾンのURLを貼っておきますので、タイトルを聞いただけで気になるという方は、明日の放送前までに電子書籍だとチェックできると思いますので、チェックしてみてください。ということで、古川さん、森上さん、ありがとうございました。

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古川・森上:
ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
 

 

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