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#439【ゲスト/編集者】担当編集が語る、ベストセラー2冊の制作秘話

このnoteは2022年7月15日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

ベストセラー『文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』制作秘話

土屋:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める、土屋芳輝です。本日も昨日に続いて、飛鳥新社・出版部副編集長の古川有衣子さんをゲストにお迎えして、編集部の森上さんとともにお伝えしていきます。古川さん、森上さん、本日もよろしくお願いします。
 
古川・森上:よろしくお願いします。
 
土屋:昨日は飛鳥新社さんのこと、そして編集者として古川さんについて詳しくお聞きしました。まだお聞きになられていない方はぜひ昨日の放送もチェックしてみてください。そして、本日は古川さんのご担当書籍についていろいろとお聞きしたいと思います。では、ここからは編集部の森上さんに進行をバトンタッチしたいと思います。森上さん、よろしくお願いします。
 
森上:よろしくお願いします。ではさっそく、1冊目の御本、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』、こちらの御本について、古川さんからご説明いただいてもよろしいですか?

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古川:はい。わかりました。これは、東大の教授で西成活裕先生という方がいらっしゃいまして、もともと物理、宇宙工学の専門家なんですけれども、特に「渋滞学」という、車の渋滞とか、人の渋滞を解消するような研究をされている先生です。その先生とこの「文系の私に数学を教えて」の前につくった本があります。それが『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』っていう本で、あさ出版時代にご一緒した本なんですけれども。それですごくおもしろい先生だと思って、いつかまた本を作りたいなと思っていたときに、こんな感じで編集者の方とお話している中で、「やっぱり文系って数学が苦手だよね」みたいな話になったんですね。何かの折に。私もずっと苦手で、小学校のときはできたけども、中学校になったらだんだん怪しくなってきて、もう高校で本格的に挫折っていう感じで。まわりにそういう人が多くて。編集者の人は文系が多いと思うんですけど。やっぱりみんなに聞くと、「俺も中学校のときぐらいはギリギリいけたけど、高校で本当挫折した」っていう人がすごく多くて。そういうのを解消したいなと思って、西成先生に、「そういう人たちわかりやすく教えてもらえませんかね?」って言ったら、快諾してくださったので、それでつくることになりました。
 
森上:なるほど。僕も典型的な挫折組なんですけど、そういう方が皆さんお買い求めになられて、これ相当売れましたよね?
 
古川:これは、そうですね。本が20万部で、たぶん電子が20万部とかだったと思います。
 
森上:素晴らしいですね。これは一大ブームを作ったなっていう印象が残っているんですけど、何年の本でしたっけ?
 
古川:2019年ですね。
 
森上:コロナ前ですね。
 
古川:そうですね。コロナ前です。
 
森上:これはすごくいい企画ですよね。それこそ、昨日は企画の立案のきっかけみたいな話をしていただいたんですが、これは担当編集者から見て、「売れている理由」って何だと思います?
 
古川:いくつかあって、私は本を作るときに全体的に同じことを考えてつくります。デザインでユニバーサルデザインっていうのがあると思うんですけれど、例えばトイレのマークとか、どの国に行ってもこれがあるとこれだってわかるみたいな。ああいうのをすごく意識していて、誰でも入ってきやすい間口というか、雰囲気とかデザインをつくりたいなと思っています。「誰も取りこぼさない」って言うと変ですけど、読めなかった人でも読めるよっていう感じの雰囲気にしたいなと思っていて。そういうのは本をつくるときにすごく気をつけていることです。
 
森上:なるほど、なるほど。
 
古川:例えば、今はどういうものが読みやすいのかなと思ったときに、今は皆さん、ネットで文章を読まれますよね。本よりもたぶんネットが多くて。そうするとだいたい横書きなんですよ。で、横書きがみんなにとって読みやすいのであれば、書籍も横書きにしたほうがいいのかなと思っていて。私が今つくっている本は横書きのものが多いです。
 
森上:本当ですか? そこまで!? そうなんですね。
 
古川:そういうのは心掛けています。
 
森上:判型は四六判で横組みっていう感じですか?
 
古川:A5判です。
 
森上:A5判がやはり横組みだと1番しっくりきますか?
 
古川:そうですね。あと、このときはユニバーサルデザインじゃないですけど、理工書の棚に行くだろうなって思っていて、理工書の棚を見に行ったんですね。そしたら、すごく青系の色が多かったり。
 
森上:確かに。イメージはそんな感じですね。
 
古川:コーナーも男性がすごく多くて。よく考えてみると、女性は結構数学とか苦手なのに読みにくい本が多いなって思っていて。
 
森上:なるほど。
 
古川:女の人でも読みやすいのってどういうつkりなんだろうなって思って、この本をつくるときにLINEをすごく参考にしたんですよ。LINEっていうメッセンジャーのアプリがあるじゃないですか?
 
森上:はいはい。
 
古川:あれって毎日みんな見ているし、読みやすいだろうなと思って。で、東大の先生と会話をLINEでやりとりしているみたいにつくろうと思って。
 
森上:なるほど。
 
古川:本の中にイラストを挟み込んでいるんですけど、これはLINEのスタンプみたいに取り入れて。
 
森上:なるほど。
 
古川:スタンプっぽくポコポコ入れると、さらになじみがあるかなみたいな。そういう感じで、かなり見た目の工夫をしました。
 
森上:なるほど。イラストのはめ込み方もまさにLINEを意識したっていう、それはおもしろなあ。その工夫が本づくりにおいて、読者に響いたということなんでしょうね。
 
古川:そうですね。「理工書の棚にない本を作りたいな」と思って。すごくいろんな理工書の棚がある書店さんに見に行ったりしたんですけれど、やっぱり硬いテーマだったり、難しそうな雰囲気が多かったので、とにかくゆるくつくろうって思って。
 
森上:なるほど。勉強になりますね。その時期って、『英単語の語源図鑑』も売れましたよね? あれも古川さんですか?

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古川:あれは別の編集者です。
 
森上:つくりも工夫されていましたもんね、やっぱりね。
 
古川:そうですね。「語源図鑑」と「数学」は割とセットでよく売ってもらっていて。
 
森上:だからだ! 印象に残っているのは。
 
古川:そうなんです。大人の学び直しみたいなものが割とブームとしてあったので、そのときに展開を一緒にしてもらってっていうのはありました。世界史とかは、かんき出版のときはあまりなかったんですけど。

数学も地図があれば怖くない

森上:なるほどね。この御本の中にはいろんな読みどころがあると思うんですけど、特にここを読んでほしいなっていうのはありますか?
 
古川:そうですね。西成先生ってやっぱりすごく偉い先生で、皆さん、東大の教授っていうと、すごく身構えてしまうと思うんですけれども、ものすごく優しくておもしろい先生で、1番本で強調していたのが、「わからない道でも地図があったら怖くないですよね?」って言われたんですよ。「数学も地図があれば怖くないよ」って言ってくださって。この本の特徴って、最初に全体マップが書いてあるんですよ。中学数学だと、こういう全体マップがあって、どういう道を進んでいくよっていうのが書いてある本なんですね。そのマップに最短で進めるルートを先生が書いてくださっていて。なので、誰も迷子にならないみたいなことをしてくださっていて。実際に私も迷子にならなかったっていうのがあって。
 
森上:迷子にならない読者さんがいっぱいいたっていうことですね。すごい。なるほど。その先生の言葉が入り口のコンセプトになっているんですね。
 
古川:そうですね。入り口に書いてあります。
 
森上:なるほど。そこが今回の御本の1つのキーということですね?
 
土屋:僕も今、聞いていて読みたくなって、カートに入れちゃったんですけども。
 
古川:ありがとうございます(笑)。
 
土屋:それぐらいお勧めの本なので、ぜひリスナーの皆さんも書店さんやアマゾンなどで、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』をチェックしてみてください。このチャプターにもアマゾンのリンクを貼っておきますので、ぜひチェックしてみてください。

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『マンガでよくわかるモンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』の制作秘話

森上:はい。そして、あともう1つですね。古川さんがご担当された興味深い御本がありまして、『マンガでよくわかる モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』っていう作品ですね。こちらはシリーズ10万部を突破されているということで、かなり売れているということなんですが、簡単に内容を教えてもらってもいいですか?

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古川:「モンテッソーリ教育」って、皆さんもご存じなのかどうなのか。今だと将棋の藤井聡太くんとか、囲碁で小学生のときにプロになった、仲邑菫ちゃんがやっていたことで、すごく有名になった教育法です。海外だと、アメリカは特に有名で、ビル・ゲイツとかザッカーバーグとか、ジェフ・ベゾスとか、大統領のオバマとかクリントン、あの辺の有名人がモンテッソーリ教育を受けていたということで、かなり日本でも有名になったものです。この教育は、今風といえば今風なんですが、指示待ちにならないように、だいたい自分で全部決めさせられるっていう内容のもので、今まではIQとか学力っていうものをすごく重視してきたと思うんですけれど、それでは測れないような能力、「非認知能力」っていうんですけれど、そういうものを高めてあげて、自分で生きていく、自立を促すっていうような教育です。
 
森上:なるほど。タイトルにある「ハーバード式」っていうのは、モンテッソーリ教育のことについて研究している、研究所みたいなものがハーバードの中にあったりするっていうことなんですかね?
 
古川:これは著者の伊藤美佳先生が実際にモンテッソーリの園でずっと働いていたんですけども、やっぱりモンテッソーリだけだと足りないんですよ。それですごく研究していて、ハーバード大学のハワード・ガードナーっていう、心理学者がいるんですけれども、その人が開発した「8つの知能」っていう、子どもには非認知能力も含めて、いろんな知能があって、コミュニケーション能力とかもあったりするんですけど、そういうものをアレンジして、伊藤先生ならでは理論を確立したというところですね。
 
森上:へー。そこがまとまっている。しかも元本があって、それからまた漫画版として出たのがこの御本という感じですかね?
 
古川:そうです。書籍が確かもうすぐ7万部で、漫画がたぶん8万部ぐらいだと思うんですけども。漫画のほうがあとに出して、売れたんですよ。珍しいパターンだなと思いました。
 
森上:そうですか。読者の一番のメインはお母さん方が多いですか?
 
古川:そうですね。私はずっとビジネス書をつくってきて理屈っぽいというか、エビデンスが入る本が割と好きなんですけど、そう思って1冊目を作って、まあまあ5万部ぐらいまでいったときに漫画もつくったんですけども。パブライン(紀伊國屋書店チェーンのPOSデータ)っていうデータを見てみると、客層はやっぱり女性が多いなあっていうことに気づきまして、思い切って漫画で女性向けにつくり直そうと思って、つくったっていう経緯です。
 
森上:なるほど。このVoicyの他のチャンネルでも、モンテッソーリだけでやっていらっしゃるチャンネルがあったりとか、子育て絡みのチャンネルがすごく多いので、たぶんそういった方もお聞きになられて、すでに読んだよっていう方もいらっしゃるんじゃないかな。
 
古川:ありがとうございます。
 
森上:この本について、リスナーの皆さんに何かひと言お願いできますか?
 
古川:はい。この本の最大の特徴が、伊藤美佳先生にしか書けないだろうなと思っている内容なんですけど。これって当事者、子供目線で作った本なんですね。大人がこうだよっていうふうにつくったのではなくて、著者が赤ちゃんの気持ちまで代弁できるんですよ。
 
森上:おー。伊藤先生が。
 
古川:そうなんですよ。「赤ちゃんってこういうこと考えているんだよ」とか、「こういうふうに思っているんだよ」ってことを通訳してくださるんですよ。それを漫画にしたんですね。「大人から見ると、赤ちゃんはこういうふうにしているけど、こういうふうに考えています」とか、「子どもはこんなふうに思って、こういう行動をしています」とかいうことが全部書いてあるんです。普通の先生は、こっちがどう思っているかとか、どうやってアプローチするかってことは書いてあるんですけれど、赤ちゃんの気持ちまでわかる先生ってなかなかいないなと思って。
 
森上:確かに、確かに。それはすごいわ。それこそ、自分も子どもがいて、もう大きくなってしまいましたけど、子どもが赤ちゃんの頃なんていうのは犬猫と一緒ですよね。何を思っているのかとか、行動の不可思議さとか、そのあたりを理解するのがやっぱり大変だなっていうイメージがあるんですけど、それを先生は通訳してくださるっていうことですね?
 
古川:そうなんです。みんな、赤ちゃんが泣くと、「お腹が減ったのかな」とか、「オムツを変えなきゃいけないのかな」とか、「眠いのかな」って、この3つを気にして対処するんですけど、実はそうじゃなくて、もう1つ大きな理由があるんですよ。
 
森上:何ですか?
 
古川:それは「子どもが、そのときに知能を伸ばしたい」。難しく言うとですけど。例えば、物を引っ張ったりするときがあって、それは指の力を使いたいっていうことなんです。
 
森上:ほー。
 
古川:そういう子どもが自分の能力を伸ばしたいときに制限されると、すごく泣いたりするんですね。
 
森上:確かに赤ちゃんの気持ちになったら、それは泣くわ。
 
古川:「覚えたい」とか、「やりたい」とか、「自分の持っている能力」を使いたいときに制限されると泣くので、お腹が空いている、眠い、おむつ以外で泣くことがあれば、必ずそれだっておっしゃっていて。私、電車に乗ったときに泣いている子どもに、それをやってみたんですね。一生懸命お母さんがあやしても泣きやまない子がいて、「話しかけたらどうだろう」と思って、いろいろと先生の視点でアプローチしてみたら、ピタッと泣き止んだんですよ。
 
森上:すごい!
 
古川:いえいえ。だから、「子どもが自分でやりたいこと」っていうのは、つまり「能力を伸ばしたいことなんだな」っていうのは、すごく本当に実感として思って、「やっぱり先生はすごい!」って思いました(笑)。
 
森上:本当ですね。その4つ目の選択肢って、知っているだけでだいぶ救われる方がいらっしゃいますよね。
 
古川:そうですね。
 
森上:それはすごい話だな。だいたいその3つだもんな、一般的には。
 
古川:そうなんですよ。「退屈する」っていうことに言い換えられることが多いんですけど、退屈っていうのは、能力が制限されているときなんですよね。
 
森上:なるほど、なるほど。その裏返しなわけだ、退屈っていうのは。
 
古川:はい。
 
森上:なるほど。今回の御本にはそんな話がいっぱい入っているんですか?
 
古川:そうなんです。「赤ちゃんの行動にはすごく意味があって、その行動は実は能力を伸ばしたいがゆえの行動だよ」みたいなことが書かれています。
 
森上:いや、これは……! 土屋さん、おもしろそうじゃないですか!?
 
土屋:そうですね。「子どもの才能の伸ばし方」という本ですけど、まさに才能を子どもが伸ばしたがっているということですよね?
 
古川:はい。そうです。
 
森上:それを制限しちゃダメなんだね。親がそこを制限しちゃっているんだね。そこだけでも知っておけばだいぶ救われるよね。
 
古川:そうですね。だから結構手紙でも「すごく子育てが楽になった」っていうお母さんが多くて。
 
森上:そうでしょうね。
 
古川:はい。いたずらとか、子どものやりたいことに全部意味があって、その子が伸ばしたい能力だったんだって気づくと、全然いたずらじゃなかったみたいな。そういうふうに思えるみたいです。
 
森上:なるほど。こちらの解釈が変わってきますよね。そういう意味では、同じ行動を見ていても。
 
古川:そうです、そうです。「自分がその子の能力を伸ばす助けをしてあげている」って思えるようになるので、肯定的に見られるようになりますね。
 
森上:すごい。それはもうストレスにはならないな、そう思えば。なるほど。もっといろいろとお聞きしたいんですけど、ちょっとお時間がね。
 
土屋:そうですね。お子さんをお持ちの方は悩まれている方も多いと思うので、ぜひこちらの本もチェックしていただければと思います。こちらもアマゾンのリンクを貼っておきますので、気になる方は読んでいただければと思います。最後に、古川さんからリスナーの皆さんにメッセージをお願いできますでしょうか?

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古川:このリスナーの皆さんは編集を目指されている方が多いんですか?
 
森上:いや。意外とそうでもないですね。本に興味のある方も結構いると思いますが、出版業界の裏話とかも結構しているので。一般の普通に子育てをされている方とかも結構お聞きいただいているというデータも出ていますね。
 
古川:そうなんですね。やっぱり書籍って、今の人たちにとっては動画やこういう音声コンテンツと比べると、なかなかハードルが高くなっているように思っていまして、手が出ないというか、なかなか気持ちが動かないって人が多いと思うんですけれども、私もいろんな方の本を読んだり、ハードルを下げた本をつくることで、すごくためになったとか、役立ったとか喜ばれることが多いので、ぜひ皆さんも楽しい本を見つけていい出会いにしていただけたらなと思っています。
 
森上・土屋:ありがとうございます。
 
土屋:ということで、今日は古川さんにお越しいただいて、森上さんとともにお話をお聞きしました。本日もありがとうございました。
 
古川・森上:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
 

 

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