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【実施レポート】はんのう森林みらい塾第2期・Session2(Day2)
持続可能な森林活用を、様々な視点で生み出すことを目的に発足したはんのう森林プラットフォームは、昨年に引き続き今年も「はんのう森林みらい塾」第2期を開催することとなりました。みらい塾は、森林と関わる働き方や起業支援を通じて将来の飯能林業を担う若手を育てる人材育成講座です。
9月・10月・11月ののべ6日間にわたって開催されるみらい塾のうち、本稿では、2024年10月12日(土)〜13日(日)の2日間に開催された「Session 2」2日目・10月13日(日)の様子をダイジェストでレポートします。
森の演奏会場
Session 2の2日目は、「体験するコース」「起業するコース」の合同開催で、東吾野にある森からはじまりました。
ご紹介いただくのは、この森を管理する西川バウム合同会社代表役員の浅見有二さん。
西川バウム合同会社は、西川材の利用を促進するために乾燥過程の木材を活用した「はしらベンチ」のレンタル事業をはじめとする、木の循環活用提案を行っています。また、この東吾野の森を整備して、西川材を使ったワークショップやイベントなども開催しています。
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▼▼「はしらベンチ」の取り組みについてはこちらのレポートもどうぞ▼▼
浅見さんから、西川材の歴史や森でのイベントについてお話しいただきながら、山道を登りました。整備されているとはいえ、傾斜のきつい道に息が上がります。
登りきるとそこに待っていたのは、西川材で作られたステージと木の椅子による森の中の演奏会場と、「かや×めぐみ」のお二人によるヴァイオリンとピアノの素敵な演奏でした!
森の中の演奏会場は、楽器の音色とともに自然音を一緒に感じながら演奏を楽しむことができ、音もよく響く自然の劇場です。
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桑原 香矢 さん(ヴァイオリニスト/左)、中ノ森 めぐみ さん(ピアニスト/右)
1曲目の「G線上のアリア」の演奏が聞こえてくると、歓声が上がり、プロの音楽家による生演奏にしばし聴き入りました。
演奏いただいたのは、飯能市内で演奏活動をされているヴァイオリニストの桑原香矢さんと、ピアニストの中ノ森めぐみさんのお二人。埼玉ハンノウ大学が運営する「おやこのキャンパス」で「森と音楽のひろば」の授業も監修されています。
続いて2曲目の演奏に入る際、「スマホやカメラはいったん置いて、森の演奏会場での演奏を全身で体感してほしい」という声掛けがあり、みなさん演奏に集中。風に揺れる木々の音や小鳥のさえずり、そして何よりも凛とした森の空気に包まれて、みなさん五感で音楽を楽しんでいました。
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演奏後には西川材の活用方法や、森の演奏会場でのイベントなどについて、次々に質問が上がりました。
「かや×めぐみ」のお二人に対しては、「演奏する側にとって、森で演奏すると響きは違うものですか?」という質問も。
お二人は、
「コンサートホールと違い、森の演奏会場は鳥の声や木々の音などの自然音が入ります。森の地形も影響すると思いますが、自然の環境の中にいると感覚や聴覚が鋭くなるように思います」
「西川材で作られた演奏舞台があって、演奏がしやすいことも大きいです」
とお話しされていました。
雑貨&カフェkinoca
次に向かったのは、吾野地区でカフェとして運営するスペース内に、西川材のアンテナショップとして西川材を使った商品も展示・販売されている「雑貨&カフェkinoca」です。
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ここでは西川材で作られたさまざまな商品を見ることができます。
kinocaさんが商品開発した西川材原料の糸からできたファブリックグッズシリーズ”Kiori”を始め、カトラリーやランプなど様々な西川材の商品が展示販売されています。
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吾野原木センター
吾野原木センターでは、森から切り出した原木が集まる木の市場で、月に二回市が立ちます。ご説明いただいたのは、吾野原木センター常務の鴨下昌之さんです。
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この地域での木材の取引が多かった過去から、現在までの流れや置いてある材の説明をしていただきました。
場内にはスギやヒノキを中心に、大小さまざまな原木が積まれています。一見すると沢山あるように見えますが、鴨下さんは以前はもっとたくさんの量を取り引きしていたそうです。質が高い材を求めて、遠くから買いに来るお客様もいたとのこと。
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「現在は質より量の時代になっているので、いい木が出ても値が付かないケースもあるのが現状」とお話されていました。
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たいら栗園
見学を終えた後、昼食のため、同じ吾野地区にあるたいら栗園へ移動しました。
たいら栗園は、季節の料理を提供するレストランと、裏手に広がる栗畑での栗拾いが有名で、秋のハイシーズンには遠方からの観光客で賑わいます。
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栗の終わりの時期ではありましたが、昼食には栗ご飯もあり、美味しくいただきました。
昼食後には、たいら栗園代表取締役の廣田祐子さんに、森やこの土地の資源を活用して観光客に来てもらう工夫などについて、ご紹介いただきました。
栗園という特性上、季節によって観光客の波があるので、閑散期にどう集客を増やすか、工夫を凝らすことが重要です。たいら栗園では栗などの収穫体験の他にも、地元の資源を活かしたワークショップなども定期開催されています。
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伐倒体験
午後は、たいら栗園の裏手にある山に移動し、林業家の指導の下、伐倒体験を行いました。講師は合同会社西川Rafters 代表社員の若林知伸さんと、同社共同設立者で木工房「木楽里」・有限会社創林 代表の井上峻太郎さんのお二人です。ちなみに、木工房「木楽里」さんは、今回のみらい塾の塾生名札も制作していただいています。
▼詳しくはSession 1・1日目のレポートをご覧ください▼
まず、東吾野地域で代々林業を営む林業家11代目の井上さんから、今回伐倒作業をする林地についての説明があります。井上さんは、この場所の森約2ヘクタール以外に、全部で約90ヘクタールの山を管理しています。
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続けて、井上さんから伐倒手順の説明がありました。
塾生は2グループに分かれて、伐倒に必要なロープ、手ノコ、滑車、なたを持ち作業地に入ります。
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最初に、今回伐倒する木を確認し、倒す方向について入念に説明を受けました。
倒す方向が分かったら、どのように切ればその方向に倒れるかが大切なポイントで、塾生は真剣に切り込みの場所や切り込む深さの説明を聞き、手順を確認します。伐倒にはチェーンソーではなく、手ノコと、なたを使い、作業を分担しながら進めます。
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切り倒す木にロープをかける「ロープ上げ」をして、半分くらいの高さまでロープを上げていきます。ロープを上まで上げるには、少しコツが必要で、苦戦しながら交代で挑戦していました。
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最後は滑車を使い、倒す方向へみんなでロープを引いて、木を倒しました。
一本の木を切り倒すまでの作業を体験でき、最後に木が倒れた時には、塾生から歓声が上がっていました。
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伐倒作業の中では、伐倒する木の見極め方や、獣害対策についても教えていただき、塾生からは様々な質問が上がりました。
西川ラフターズの取り組みについて
伐倒体験の後は木工房「木楽里」へ移動し、西川ラフターズさんが取り組む林業の課題解決についてお話をしていただきました。
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林業の大きな課題の一つが、山林の境界線がわからないこと。そこで西川ラフターズで取り組んでいるのが「山のお悩み相談会」です。これは、山主さんが直面するお悩みをヒヤリングする取り組みで、飯能市、日高市、毛呂山町、越生町内に森林所有者向けに、各地域にて不定期に開催しています。
市内の山の多くが小規模かつ個人の所有林である場合が多く、その大半は境界線が明確でない状況です。相談会では、山林の境界について山主さんへアドバイスをしつつ、必要に応じて一緒に確認する作業も行っています。
多くの山主さんとお話をする中で、「山をどのように活かしたらいいかわからない」と話す方がたくさんいらっしゃったことから、若林さんは、今後は山林所有者と活用者の仲介事業にも取り組みたいとお話されていました。
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今まさに直面している課題についてお話しいただいたこともあり、塾生からもたくさんの質問が上がり、熱気を帯びた雰囲気でSession 2 の2日目を終えました。
次回のSession 3 は、体験するコースは「森からはじまるWeekend」、起業するコースは「森林ビジネスを叶えるWeekend」をテーマに、一部プログラムが分かれる形で実施されます。そして最終日にはビジネスコンテストが行われます。
次回のレポートもお楽しみに!
(レポート担当:大川戸那奈 、新坂理沙/編集:渡辺佳枝)
地元飯能のご協力企業さま
<運営協力・会場提供>
東吾野地区 西川バウム合同会社
吾野地区 合同会社西川Rafters
東吾野地区 木楽里(有限会社創林)
<施設見学>
吾野地区 「雑貨&カフェkinoca」
吾野地区 吾野原木センター
<昼食>
吾野地区 たいら栗園