『リトルキャプテン』 14 〜ちっぽけな僕の壮大なストーリー〜
カフェのカウンターで、ジョーイはバトンがご馳走してくれたオレンジジュースを飲んでいた。「幸せ?そうだねー、僕の考えでは・・・」少し間が空きバトンが質問に答えた。「幸せとは一人に一粒与えられた種ってとこかな」ジョーイはバトンの言葉に惹きつけられた。「ハハ・・ちょっと哲学者ぽかったね」「僕は人間全てに幸せの種が与えられていると思っている。その種は植える場所や植える時期、そして育て方も全部自由に自分で決めていいんだ。ポイントは、その種を自分が持っているということに気付けるかどうかだね。そこが幸せになれるかどうかの別れ道かな」今、ジョーイはとても嬉しい気持ちになっていた。バトンがこんなにもあっさりと自分の質問に答えてくれたからだ。この後もジョーイとバトンはたくさんいろんな話をした。そして一息ついた頃、「近々僕の家でパーティーやるからジョーイくんも来なよ」とバトンが声をかけた。「行きます!」ジョーイは喜び、さらに嬉しい気持ちになった。メアリーがカウンターの中から「ジョーイ君はほんとについてるわね。そのパーティーは毎月恒例の億万長者パーティーなのよ」と教えてあげた。ジョーイは驚いて目をぱちくり開き、口をぽかんと開けたまま固まっていた。
翌週の土曜日がパーティーの日どりとなった。ジョーイはワクワクしながらパーティー当日を待ち焦がれた。バトンはジョーイの家に一度顔を出しに行った。ご両親に挨拶するためだ。ジョーイがまだ学生ということもあり、パーティーの日はそのまま自分の家に泊まってもらうようジョーイの両親に伝えた。バトンの配慮のある行動に、ジョーイの両親も心良く承諾した。
そして当日、夕暮れ時にジョーイはバトンの家に向かった。バトンからは前もって、連絡先と家の場所を書いたメモを渡されていた。自分の家の最寄り駅から3駅目で降りて、10分ほど歩いたところにバトンの家があることを聞かされている。家の周辺には豊富な自然があり、きれいな川も流れているらしい。「メモ通りだと、あそこの角を曲がったところに家があるはずだ!」とジョーイはワクワクしながら歩いてゆく。そしてその角を曲がり終えた時、ジョーイの視界に飛び込んできたものは・・・なんと、豪邸なんて言うスケールを遥かに超えた「巨大な城」だった。