『リトルキャプテン』 ① 〜ちっぽけな僕の壮大なストーリー〜

第１章　　運命の交差点

  少年の名はジョーイ。彼はすでに人生を楽しむことを諦めていた。投げやりな気持ちで惰性の日々を過ごす。なんとなく学校へ行きなんとなく授業を受ける。周りの生徒とは適当に会話を合わせ、人気者にもいじめられっ子にもならないように心がけた。家は比較的裕福で両親も愛情を注いでくれていた。毎日温かい食事をとり、ふかふかのベッドで眠っている。世の中で起きていることには興味なし。政治も経済も文化も流行も、少年にはどうでもよかった。「何のために生きているんだろう? 」時々少年の頭の中にはこのフレーズが浮かんでくる。でも少し考えると、またそれさえもどうでもよく思えてきて考えるのをやめた。周りの生徒が将来の夢について話をし始める時、少年はいつも適当な相槌をうちながら話を聞いた。そして心の中で「自分には関係無い事さ」と強く思っていた。

  その男はあてもなくひたすら歩いていた。空は徐々に暗くなり、さっき降り出してきた雨にもだんだん勢いがついてきた。男は傘もささずに歩き続けた。生きる希望を無くした男に辿り着くべき場所など無かった。上着の内ポケットにはナイフを忍ばせている。男はこの世界を憎んでいた。心の底から憎んでいた。思考と感情のバランスはとっくに崩れかけている。乱れた息、小刻みに震えた唇、陰鬱な目つき。夜の暗さが男を包み込んでいく。闇の中へ・・闇の中へ・・・。

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