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『リトルキャプテン』 23 〜ちっぽけな僕の壮大なストーリー〜

 ビルは三十八歳で今の会社を軌道に乗せたが、実は三十六歳の時、当時勤めていた会社をクビになり路頭に迷っていた。ビルは大学卒業後すぐに一流企業に就職し、年々昇進してゆくうちに重要なポストを任されていった。年月が経つにつれ忙しくなってゆき、仕事だけに没頭する日々を送るようになった。それと引き換えに大切なものを徐々に失っていった。「家族の愛、仲間との絆、素直な心」ビルはある時ふと立ち止まって考えた。「いつから俺はこんな人間になったんだろう?」この時すでにビルの会社の経営は傾いていた。間もなくしてビルは仕事も失った。会社内でポストの配置換えが行われた一ヶ月後、リストラの対象になったのだ。その後、妻が離婚を申し出てきて別れることになる。来年から小学校に通う一人息子は妻と暮らすことに決まった。ビルが自分のやってきた道のりを振り返った時は、すでに大切なものが全部自分から遠く離れていた。そしてこの時からビルは一つの夢を繰り返し見るようになる。その夢は、どこまで続くかわからない薄暗いトンネルの中を自分が一人ぼっちで歩いている夢だった。






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