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『かんかん橋をわたって』から見る、概念の重要性

※全文公開です。おひねりをいただければ幸いです。
日々精進していきます。

みなさんは知る人ぞ知る嫁姑バトル漫画の異端
『かんかん橋をわたって』をご存知だろうか

この漫画は
嫁姑漫画界のワンピース
ジョジョ
グラップラー刃牙

だとなんだと形容されている漫画であり
ネットで検索するとわりかし膨大な量のブログやnoteの感想がでてくる。
それくらい読んだらなにか言いたくなるような
不思議なパワーを持った漫画なのだ

もしかしたら読者の中には
そもそも嫁姑バトルジャンルを知らない人も多いかもしれない
レディコミなどの世界では、
実は嫁姑バトル漫画というのは結構人気の一大ジャンルなのだ

嫁が姑にいびられ、仕返しをしてスカッとする
アルゴリズムだけをみたらまぁなろう系と大差ないかもしれん
しかしやはり人気になる作品というのは、肉付けが良くできているのだ
見所は、
どんないびりかたをして
どう乗り越えるのかといったようなところであって
リアリティと漫画的エンタメ要素がいかに上手に混じるのかという
漫画家としての腕前が試されるジャンルなのである。

とまぁ一般論としては嫁姑バトル漫画というのは以上のようなものなのだが
この『かんかん橋をわたって』は、やはり他の嫁姑物とは一線を画す
その一線を画すことになるのは、ある概念の登場によってなのだ

この漫画は4話くらいまではよくある嫁いびりものとしてはじまる。
主人公は良い姑だと思っていたが実はいびられていたことに気づき
しかし夫に相談するにも夫を傷つけてしまうことを心配しできないといったようなよくある悩み方をしている

そのときに
偶然知り合った主婦に衝撃の事実を知らされることになる。


『かんかん橋をわたって』1巻
『かんかん橋をわたって』1巻

なんと
主人公の暮らす街では「嫁姑番付」なるものが存在し
主人公は4位であることが判明するのだ!!

これ!
これ!!!
これ!!!!

たった一つの概念
「嫁姑番付」という概念を誕生させたことによって
この漫画は一気に話の範囲が町全体にまで広がったのよ!!

順位があることによって
じゃあ上位の人はどんな目にあっているのか?
といったようなミクロな課題から
嫁姑問題は決して個人的な問題なのではなく
この町全体の社会的構造の問題なのだということまでが
見事「番付」が結束点となって調和したのだ!!!!

実際に、この漫画を社会矛盾の表出の漫画であると評する人もいる

フェミニズムの世界では
「個人的なことは社会的なこと」
という格言がある

嫁いびりなんてのは、家庭の問題だけでなく
実は社会問題そのものなのだということは
学問の世界ではずいぶん昔から言われてきたことなのだ

しかし
なぜ一向に広まらないのか?
個人的な問題が個人のままみな自己責任として内面化してしまうのか

それは
まさに「嫁姑番付」といったような
個人と社会を繋げるような概念が生み出されていないからである
だからピンとこないのだ

現にドゥルーズなどはこう言っている

哲学とは、
より厳密に言えば、諸概念を創造することを本領とする学科である

ドゥルーズ『哲学とは何か』

ようは
概念がなければわれわれは「思考ができない」ということを言っているのだ

こんなこと当然だろと思う
思うのだが、問題は概念を以下に作ることか、なのだ

学者や哲学者は
きっと世の中を分析するための概念を日夜必死で考えているのだろう

しかし!!
時として漫画の方がとんでもない概念を生み出したりしてしまうのだ
それが
この漫画で言えば「嫁姑番付」だったのである

番付があることによって
私だけがこの番付から逃れられれば良い
といったような発想にはもうなれない
むしろ
「私と同じように苦しんでいる人がいる」
という連帯に向かうのも当然のことだろう

もちろん
この番付は
「わたしたちは嫁姑問題から逃れることはできない」
といったような拘束する力を持った概念でもある

だから結局は
概念だけではなく
この概念に対して見えてきた構造に対して
主人公たちは「バトル」していかなければならない
そのために彼女たちは
概念も利用するし
いびってくる姑の技をも利用していく

結局いろいろと動かないと社会は変わらないことは変わらないのだが
その行動に移るためのきっかけとなったのが
やはり「概念」だったのである


またとりとめもなく読後に思った感想を忘れないために勢いで書いたせいで
社会運動論としても
物語論としても
どっちつかずな内容になってしまったが
この漫画とこの概念には
やはりそれだけの力があるということなのだろう

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