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ストレスのない組織は本当にユートピアなのか?

こんにちは窪田です。昨日は健全なプレッシャーと不健全なプレッシャーについてお伝えしました。

プレッシャーの中でも部下にかけていいプレッシャーと、かけてはいけないいプレッシャーがあるというお話でした。

ところで、皆さんは、自分の組織からストレスやプレッシャーが消えて欲しいと思ったことはありませんか?

今日はストレスがない組織がどんな運命を辿るのか、についてお伝えします。

末期的いい人病

2009年、倒産から免れたばかりのゼロックスに就任し、見事その立て直しに成功したCEOのユーソラ・バーンズは、就任当初、何十年も同じ顔ぶれで働き、重要な戦略や業務上の脅威に直面してもお互いを批判できない状態の社員たちの関係性に最も危惧を抱きました。

バーンズは社員たちにこう語りかけました。
「礼儀正しく親切であることはいいことですが、もっと率直に向き合えなくては。良い結果を出すためには多少無礼であってもいい。私たちはゼロックスという一つの家族なのですから」

ノープレッシャーが生む機能不全

イタリアのコンサルタント、パトリック・レンシオーニはいくつかの著書を日本でも発表していますが、彼の著書はストーリーになっていて、非常に読みやすく私は大好きです。

その中の一冊「あなたのチームは、機能してますか?」では、上記のゼロックスのように、お互いを信頼できず、自分のメンツにこだわり、お互いの領域に踏み込もうとしないチームの状態を以下のように説明しています。

結果へ無関心なチームは、なぜ結果に無関心なのか?

レンシオーニはその根本原因に「信頼の欠如」を挙げています。結果に無関心なのは、人間関係が原因といっているのです。

お互いに信頼がない状態だと、多くの人間は衝突を避けます。
社会学者アーヴィング・ゴッフマンの研究で、人間が衝突を避けるのはメンツを守るためということがわかっています。

メンツとは組織において、自分が認識している役割を指します。例えば「俺は技術の専門家だ」「私はチームで一番のアイデアマンである」などの自己認識のことです。

人間はそうした役割を全うするために熱心に行動し、その通りに他人に見られていたいと考えます。

そして、その役割に他人から、疑いを向けられると「メンツが潰れた」ということになり、人間関係が緊迫します。

人は、揉めるのが面倒ですし、攻撃されるのも恐怖なため、正しいと思われる行動をとるより、信頼がない相手のメンツを潰す行為を避けようとします。これが上図の「衝突の恐怖」です。

ところが、メンツを守るために衝突をさけ、相手を立てた結果、自分が心の中で全く賛同できないアイデアが会議で採用されたとします。

「自分は本当は賛成していない、むしろ反対ですらある。ただ決まったことだからやらなければ仕方がない」という気持ちで、そのアイデアの実行に役割上の協力をします。「衝突の恐怖」を避けたため、「責任感の欠如」が発生します。

責任感がないアクションは、成功確率が下がります。一度失敗すると、簡単に諦めてしまうからです。

そしてうまくいかなかった説明を求められると、「いや、自分はうまくいかないと最初から思ってたんですけど、上が言ってたから…」という説明に終始します。

「責任感の欠如」から「説明責任の回避」が生まれます。そして、みんなが心の中では他人に責任を押し付け合う状態では、「結果への関心」など生まれないのは当たり前です。

衝突を回避し、プレッシャーを避けると結果に無関心になるメカニズムをレンシオーニのモデルは見事に説明しています。

エイミーエドモンドソンが強調する心理的安全性の誤解

最近人事界隈でよく耳にする「心理的安全性」に関して、提唱者である絵イミーエドモンドソンは自身の著書「恐れのない組織」の中で、「心理的安全性」が誤解されて広まっていることに警鐘を鳴らしています。

心理的安全性(英語ではサイコロジカル・セーフティー)という語感や、安心して自己表現や意見が言える雰囲気や安心感という意味から、

心理的安全性はみんなが仲良く争いが少ない組織という認識が広まっているが、それは本意ではないと懸念を示しているのです。


エドモンドソンによると、「心理的安全性の高い組織」とは、安心感があり、自分の意見を言えるという特徴があるが、それは言い換えると対人関係の不安が少ないという意味で、決して「衝突のない組織」のことではない。

むしろ目標達成に対して積極的に激しい議論はするが、仕返しされる恐れがないため、ミスが迅速に報告される、アイデアが出やすいなど、の行動が顕著に現れる組織である、と言っています。


以上ことから、対人不安も目標へのプレッシャーも少ない組織はストレスはなく快適だが、ハイパフォーマンスを生むことはなく、

対人不安は少ないが、目標へのプレッシャーがある状態がハイパフォーマンスを生む、ということがいえます。

結論

目標達成やチームの成長のためにリーダーやメンバー同士が意図的にストレスをかけあうことは、実は必要なことであることがわかります。


大事なのは「衝突しないこと」ではなく「上手に衝突すること」です。衝突はもちろん気まずさを生みますが、気まずさが生まれているその瞬間、同時に生産性が生まれていると考え直すこともできます。


公平性を担保するために、衝突したアイデアの判断基準として、リーダーの個人的な気分ではなく、コモンパーパスやチームのルールや基準に沿って判断することをチームで共有しておくと良いでしょう。

また、衝突に対する閾値を上げるためにお互いの人となりを知り、チームで信頼を形成し、心理的安全性を育む準備をしておくとなお良いです。

知らない人にメンツを潰されるのは許し難い気持ちになりますが、仲の良い友人だと「きっと理由があったんだろう」と破壊的な行動に出ることを抑えることができます。


最後に、会議では普段からメンツ、年齢や職位を一旦脇におき、率直な意見を賞賛する姿勢をとりましょう。チームのカルチャーはチームリーダーから受ける影響力が70%を超えます。


チームのカルチャーはチームリーダーからはじまるのです。



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※おまけのワーク

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