エンゲージメントを生むリーダーシップって結局は何なのか?
ここまでエンゲージメントに関して、最も影響を与えるのは会社そのものではなく、【チームリーダー】の影響が最も大きいということをお伝えして来ました。
ギャラップの調査によると、チームリーダーがエンゲージメントに与える影響は70%もあり、メンバーのエンゲージメントのほとんどに影響を与えるのは、企業の経営者でも役員でも待遇でもなく、チームリーダーだということがわかっているのです。
他にも、アメリカの研究機関、ADPRIの調査によると、「チームリーダーを信頼しているメンバーはそうでないメンバーと比べ高エンゲージメントである確率が12倍高い」という調査結果や、
ウォール・ストリートジャーナルのレイチェル・ファインツァイグの調査は、「上司から自社の貢献について話されている社員は「自社を働きやすい素晴らしい会社」と答える割合がそうでない社員より42.4%高く、転職を考える社員も半分になる」
ことが確認されています。
これらの研究は、「どのリーダーも大げさでは無く、メンバーの仕事人生に大きな影響を与えている」ことを明らかにしています。
今日はそのリーダーが持つべき、リーダーシップとは何か考えていきます。
嘘だらけのリーダーシップ
皆さんは、優れたリーダーの資質とはどういうものだと思いますか?スピーチが上手いこと?戦略家なこと?明確なビジョンを持っていること?…
一般的に、卓越したリーダーに共通する能力をまとめたモデルを「リーダーシップモデル」と呼びます。
そして、リーダーを採用する際はこれらのモデルに近い人間を探し、社員を育成する時はこのモデルを伸ばすための教育を行うのが、人事界隈での常識と考えられています。
しかしこれらの「リーダーシップモデル」という考え方は大嘘であり、現実的には存在しないといったら、皆さんどう思いますか?
世界最高の投資家、ウォーレン・バフェットには人を鼓舞するビジョンがありません。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクは倫理観に疑いがあります。ジョン・F・ケネディは病気や不倫を隠していました。
彼らは完璧なリーダーシップモデルを備えてはいませんが、世界で最も偉大なリーダーとして歴史に名を刻んでいます。
リーダーとは誰か?
リーダーとはなんなのでしょう?立派な人格、余人に代え難い能力がなければリーダーにはならないのでしょうか?
「リーダーとは単にフォロワーがいる人のことである」とマーカス・バッキンガムは言います。
そして、フォロワーを集めるのは、リーダー独特の「尖り」であり、その「尖り」は共通の資質や能力ではなく、リーダーが持つ属人的な強みに依拠しているわけです。
つまり「リーダーシップという限られた資質による特殊な才能」など存在していないというわけです。
フォロワーは何に集まっているのか?
フォロワーが集まるリーダーに、共通しているのは「リーダーの資質」ではなく、「フォロワーが求める感情」にあります。
フォロワーが求めるものを、リーダー独特の「尖り」で満たしてくれると察知した場合、フォロワーはその人をリーダーと認め、ついていくのです。
そして仕事においてフォロワーが求めるものは次の3つです。
リーダーの尖りが、自分たちに安心できる場所(居場所)を与えてくれたり、活躍する場(出番)を与えてくれたり、大きな意味(目的)を与えてくれる場合、人はそれを与えてくれる人に、フォロワーとしてついていくわけです。
そして、この3つを、チームに生み出す方法が何かというと、今までずっと解説してきた【5C】なわけです。
5Cでの要素を分解して並び替えると、居場所(率直に言い合え、称賛し合える場)、出番(強みを活かした役割がある)、目的(共通の共感された目的)になるのです。同じ意味で捉えて頂いて良いのではないかと思います。
エンゲージメントとアドラー心理学の意外な共通点
この「居場所」と「出番」は、有名なアドラー心理学の核になる「共同体感覚」という概念について、私のコーチングの先生である宮越大樹さんがわかりやすい言葉で言い換えてくださったものです。
アドラー曰く、共同体感覚とは「自分より大きなものの一部として共にある」という感覚で、人間の幸福の根幹をなすのがこの共同体感覚だというのです。
ただ、この説明だとちょっとわかりにくいので、宮越さんは、噛み砕いて「居場所」と「出番」というふうに説明されていました。自分の居場所があり、活躍できる出番がある時に、人間はその共同体に関して、自分と同等、あるいは自分以上に大切という感覚を持ちます。
その共同体でいいことがあれば我が事のように嬉しいし、辛いことがあれば我が事のように悲しい、という状態ですね。
この共同体感覚と、エンゲージメントは非常に近い意味合いを持っているように私は感じていて、人間の幸せから生まれる心的エネルギーを仕事の中でうまくパフォーマンスに変えるための考え方として切り取った考え方をエンゲージメントというのかもしれません。
エンゲージメントを追求すると「人の幸福」に
「人の幸福」を追求するとエンゲージメントにつながっていくというのは非常に面白い点です。
あなたの尖りを発見する
リーダーシップに話を戻しますと、繰り返しになりますが、リーダーシップモデルというものは存在しないので、
もしあなたが素晴らしいリーダーになりたいのであれば、自分の強みを自覚し、磨いて尖らせて、その尖りでフォロワーに居場所や出番や目的を与えられるようにするのが最も最短の道、ということになります。
つまりリーダーシップはなんなのか?と聞かれれば、「尖りで【5C】をチームに生み出す力」といえるかもしれません。
裏を返せば、もしあなたが自分のチームをうまくリードできてないのであれば、それはリーダーである、あなた自身がチームの中で強みをうまく表現できていないためにリーダーシップが不在になっている可能性が高いということです。
簡単なワークをつけておきますので、まずはしっかり自分の強みをリーダーとして活用するきっかけを発見すると良いと思います!
以上のような説明すると、「リーダーシップって1人の天才が、従順な部下に指示を出して全てを1人で進めていくのをイメージしていました。」
という意見も出てきます。
それぞれのリーダーの個性の豊かさではなく、1人の天才経営者のアイデアを手足として実行するためのチームリーダーたちがいるというのも、組織のあり方の一つではないか?と。
もちろん、それもありありです。でも一方で大きなデメリットもあります。
次回はそういった天才型組織のリーダーシップの弊害について掘り下げて考えてみたいと思います。