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アーサー王文献(1)「アーサー王の死」

正直なところ、「アーサー王物語」なるものがあるらしいという程度の認識はあったが、きちんとしたものを読んだことはなかった。

うっすら興味を持ったのは、2019年に三菱一号館美術館で開催されていた「ラファエル前派の軌跡展」を観に行った時だったように思う。ビアズリーら有名な画家がアーサー王伝説のシーンを絵画に描いていたのを見て、絵はすばらしいのだけど「この物語を知っていたらもっと面白いのにな...」と思ったものだった。

それから約2年経ち、いつも一緒に読書会をしている友人が課題本のテーマに選んでくれたのがアーサー王だった時、「読みます!」と即答したのが事の次第である。

そして、最初に手にとったこの「アーサー王の死」を読み始めて早半年。
信じられないほどアーサー沼にはまり、いっこうに抜け出せそうにもないという事態に・・・。
いわゆる「アーサー王もの」は邦訳されているものでも非常に多岐に渡るが、今もそれらを友人と一緒に片っ端から読みまくっている途中である。いい加減飽きるかと思いきや、読めば読むほど広がりがあって味わい深いのだ。

この世界を一人でも多くの方に楽しんでもらえればと思い、せっかくなので、一冊つずつご紹介していこうと思う。

「アーサー王の死」の物語

トマス・マロリーという騎士が15世紀に記し、ウィリアム・キャクストンという印刷業者編集したというこの本では、アーサー王の出生の秘密と王位につく経緯、魔術師マーリンの活躍、円卓の騎士たち(特にランスロット)のエピソード、晩年のモルドレッドとの戦い、愛剣エクスカリバーとの別れと静かな最期までが描かれた一冊になっている。

ちなみに、マロリー版の「アーサー王物語」は筑摩書房から全5巻で出ているバージョンがフルサイズで、この文庫版の作品はいわばダイジェスト的な位置づけにあたる。
ただ、この5冊組が廃盤になっており、値段が高騰しすぎて入手が困難なため、いまだ着手できていない・・・。

とはいえ、ダイジェスト版といっても文庫版で450ページ。なかなかの厚みで、古典が苦手な自分は最初恐る恐るページを開いたが、結論から言うと、まったく飽きることなく最後までハイペースで読み進めることができた。

とにかく退屈する間もなく目まぐるしく出来事が起き、ファンタジックな要素がうまく織り込まれていて楽しませてくれ、ページ量はあるがあっという間という感じだ。古典というより、いわゆるよくできた娯楽作品と言っていいと思う。古い本だし楽しめないかもと思って敬遠している人がいたら、もっと気軽に手にとってみてほしい。

まとめ

この後いろいろな人の手による物語を読んだり、派生した枝葉の作品に寄り道したりした結果思うのは、これはまさに入門書。重要なイベントやキャラクターがこの一冊にギュギュっと濃縮されており、一つ一つは淡白気味になってはいるものの、大きな流れを把握する上ではこの上ない作品だと思う。

この本を読み終わった時、なんとなく「アーサー王物語を分かった」気になったのだが、それは沼のほんの入口にすぎなかった・・・。

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