『マイクロスパイ・アンサンブル』から感じたこと、考えたこと。
はじめに
私は伊坂幸太郎さんが書かれる本が好きだ。
他にも好きな作家さんはいるが、新刊が出れば気になり、読んでいる作家さんは、他にあまりいない。
集中的に読書に没頭した時期というのが、自分には2回あったかと思う。
1回目は、中学生のころ。
毎朝のHR前、15分間の朝読書をきっかけに読書の楽しみを知れた。
中学生なので、中には読書はせず宿題をしている子や、寝ている子もいたが、私はこの時間がすごく楽しみだった。この頃には伊坂幸太郎さんもデビューされていたと思う(友人が『重力ピエロやべぇ』などと話していたような気がする)。
しかし、その頃の私は、ジャンル問わず、本の裏に裏面に書いてあるあらすじを頼りに、自分の気の向くままに本を選んでいたためか、伊坂幸太郎さんの本を読んだことはなかった。
そして再び訪れた2回目の時期というのが、就職後である。夜勤もある仕事に就いたため、夜勤前や夜勤後に1人で過ごす時間が多くなったことがきっかけで、再び読書熱に火が点いたのである。
伊坂幸太郎さんの本を初めて読んだのもこの時期であったのだが、書店で何気なく選んだ『オーデュボンの祈り』を読んで、物語の設定や、構成、伏線回収に衝撃を受けた。そこからは中学生時代の遅れを取り戻すが如く、立て続けに伊坂幸太郎さんの本を読み漁っていった。
何故かは自分でも分からないのだが、私は色々な作家さんの本を読んで、その作風から天気を感じることが多い。
全くの私感なので、「それは違う」という意見ももちろんあるかと思うのだが、私が伊坂幸太郎さんの本を読んで感じる天気は、『晴れ』なのだ。
物語の中に天気の描写がなくとも、雨の描写があったとしても、自分の頭の中では『晴れ』の中で、登場人物たちが動いている。(全くの余談だが、私は村上春樹さんも好きで、そちらは『ちょっとジメッとした小雨』を感じることが多い)
読後感が良いことから『晴れ』を連想しているのかもしれないが、とにかく伊坂幸太郎さんの本は読んでいて楽しく、驚かされもし、ただただ好きなのである。
『マイクロスパイ・アンサンブル』から私が感じたこと
(以下、ネタバレしている部分もあるかと思うので、作品未読の方はご注意を。)
伊坂幸太郎さん作品には、印象的なセリフや考えさせられる内容も多い。
最近は読書に割ける時間もあまりないので読むのが遅くなってしまったが、この『マイクロスパイ・アンサンブル』の中にも印象的なセリフがあったので、そこから私が感じたことをセリフを抜粋しながら書いてみようと思う。
これらのセリフは、場面も、話す登場人物も違うが、プライドに関する考え方を述べたセリフであった。
謝ってばかりいる上司を、周りの人たちは馬鹿にしているような様子が伺えたのだが、その謝ってばかりいる上司が、『下手に意地を張るよりも素直に謝るほうがよっぽど事がスムーズに進む』と考えており、なるほどと感じた場面でもあった。
何を隠そう、私もよく謝るのだ。(この上司が馬鹿にされている場面は、自分のことを言われているようで、うっ、となったが・・・)
私自身はこの上司のように芯がある感じではなさそうだが、意地を張ったって良いこともなく、素直に謝る方が人間関係においては上手くいく場面が多いように私も感じる。
謝るのが遅れると、取り返しのつかないことになっていることもあるし・・・。
自分が謝る=プライドが”ない”ということでは決してなく、
『謝って削れるような、どうしようもないプライドは持たない』
という強いプライドこそが必要なんだ、ということを感じることができた。
こういうプライドを持てている人は、魅力的だと思うし、人としての強さがあるのだろうなと思う。
これらのセリフは、私自身が常日頃感じていることであった。
物語の中のように大きなことでなく、小さなことでも、良いことをしている人には報われて欲しいと思う。
悪いという訳ではないが、自分のことや利益しか考えず意見を通すような人と、周りを見ながら時には自分の意見を後ろに下げることができる人がいれば、せめて自分の意見を下げた分くらいは良いことがあって欲しいと思う。(自分の意見を下げることが良いという訳ではないが。)
自分の好きな人や大切な人の幸せを願うことが出来る人。もちろん願われた人も幸せであって欲しいが、願うことが出来る人にも、同じように幸せになって欲しいと思う。
おわりに
読後に感じた内容について書いてみたが、私感が多い内容だったので、気を害された方もあるかも知れない。
全くもって作品に罪はないので、是非、多くの方にこの本を読んで欲しいと思う。
読後に感じることも人それぞれかと思うが、読む前の自分よりも、強くて優しい心になれているような作品ではないだろうか。
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