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サッカー欧州移籍市場冬の陣~やっぱプレミアとオイルマネーすげえ~
欧州の冬の移籍市場が閉まって約一か月。移籍市場まとめ記事を出そうとしたものの、本業の中間管理職において新年度の計画作成が忙しすぎて、キーボードをたたく気力がありませんでした。新年度の計画って、ふわっとした方針の段階ではみんな明るく議論を始めて、数字の検証が始まると来年の自分たちの目標値が現実味を増してきて、雰囲気が段々ギスギスしてくるんですよね。
趣味のサッカーぐらい、最後まで明るく数字を使いながら行きましょう!本日は欧州サッカーの冬の移籍市場を俯瞰(ふかん)して気づいた点を、毎度おなじみデータ10%、妄想90%の割合でお伝えします。お品書きはこちら!
やっぱプレミアすげえ、シティ反則だよ
24/25の冬移籍市場では、プレミアが獲得金額総額で2位のブラジルに倍の差をつけて1位となりました。プレミアが大人しい時代は、シーズンが冬を前に終わる北米・南米大陸の移籍が活発となり、トップになることもままあるのですが、今年はイングランドが他を全く寄せ付けませんでした。
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プレミアの大型補強ランキングを見ると、なぜプレミアの移籍市場が活発だったかは一目瞭然。もう分かりやす過ぎ。1チームで冬の移籍金額ランキングの1~4位を占めたマンチェスターシティが主因に他なりません。4人合わせた総額は2.4億ユーロとプレミアの総額(5.0億ユーロ)のおよそ半分。たった1チームでセリエA(2.3億ユーロ)、リーグアン(2.0億ユーロ)を上回る支出をやってのけたわけです。いやはや反則過ぎでしょう。
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マンチェスターシティ以外では、マンチェスターユナイテッドからレッチェの新鋭ドルグを高額で獲得したことなどが目を引きました。ブライトンはギリシャのツィマスなど相変わらず他が目を付けないところで勝負していました。
マンチェスターシティ(以下、シティ)がここまで大型補強を行ったということは、同チームに対する財務違反のペナルティが浅いものになる可能性が高いと経営陣が判断したと推測されます。それよりもチャンピオンズリーグ(CL)を逃す方が経営として痛いということだったのでしょう。それにしても凄い金額であり、改めてプレミアとオイルマネーの本気を見せつけられた冬の移籍市場でした。
カルチョは盤石、リーガは激渋(定番)
皆様、最初のリーグごとの選手獲得金額ランキングを見てお気づきの点はありませんか? 実は3大リーグの一角、スペインのラ・リーガ(リーガ)がベスト10の中にありません。どこへ行ったのか?なんと、今冬は15位。ブンデス(ドイツ)の2部にも抜かれてしまいました。
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相も変わらず、サラリーキャップの制限、ファンド勢など新規投資家の参入が鈍いリーガの支出額は渋いものになりました。22/23シーズン以降は獲得額でリーグアンに後塵を拝す展開が定着しています。一方で、盛り上がっているのがセリアA。今冬もカイル・ウォーカー、ジョアン・フェリックスと大物のレンタルを決めたほか、潤沢な資金を誇る昇格組コモが大支出をして移籍市場を盛り立てました。
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つまるところ、今冬の移籍市場は、今夏の移籍市場で見られた①プレミア無双、②セリエA復権、➂リーガ激渋、という傾向がそのまま繰り返されたマーケットだったと言えるでしょう。それにしてもシティの大盤振る舞いは凄かった!
育成ビジネスに参入したサウジ
ただ、よくよくを目を凝らしてもいると変化の兆しもありました。サウジアラビアです。かのオイルマネー・リーグは、今冬にアストンビラからデュランを7,700万ユーロという史上2番目に高い金額で獲得しました。目を引くのは21歳という若さ。サウジリーグと言えば、30近い・30越えの選手が引退間際の最後の大稼ぎを目的に移籍するのが一般的でした。デュラン移籍が示す通り、獲得の主眼が「有能な若手」に向けられた可能性があります。
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今後はサウジアラビアリーグが、若手を買って、それを欧州大陸に売るビジネスに殴りこんでくる危険性が高まっています。そうなれば、スペイン、オランダ、ベルギー、ポルトガルなど選手売却で生計を立てているリーグにとっては脅威です。
もっとも、そうなるには数年、場合によっては十数年かかると見ています。若手選手の獲得金ランキングを見ると、ほとんどが23/24、24/25シーズンで若手獲得に注力し始めてから日が浅いことが分かります。また、大半の選手はアルゼンチンやブラジルなど南米大陸クラブからの獲得であり、欧州大陸の若手が奪われるような状況にはなっていません。
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まだ2シーズンしか立っていないため、判断は早いかもしれませんが、今の時点ではどの選手もバリューアップを果たせていません。ほぼ市場評価通りでスペインのセルタから3,000万ユーロで買ったベイガは、2,300万ユーロに値が落ちてしまっています。
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サウジの欧州カップ戦出場が侮れないシナリオに?
サウジアラビアリーグがサッカー選手にとって欧州大陸と比較した時に競争的な環境ではないのが現実であり、まずはその環境を解決しないことには青田買いしても値を落とすだけ、となっていると考えています。
ここからは妄想 of the 妄想の世界になってしまいますが、競争環境を変えるため、自分たちのリーグの選手が欧州で戦えることを示すために、サウジアラビアリーグがUEFAのカップ戦に莫大な政治資金を投じて参入する可能性があります。
UEFAとしては最初は拒否すると思いますが、チャンピオンズリーグ(CL)の放映権料が伸び悩んだ場合、追加資金を得る手段として首を縦に振る蓋然性は全くないとはいません。
特に欧州カンファレンスリーグ(UECL)、ヨーロッパリーグ(UEL)は、CLに比べて収入が大きく見劣りします。両コンペティションの収入は、足してもCLの2割に至りません。UECL、UELのテコ入れとして、サウジ参入は侮れないシナリオだと思っています。
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もっとも、UECL、UELが盛り上がるのであれば、ひいてはサウジのスポンサー料により日本における放映権料が下がるのでは個人的に大歓迎です(笑)。さてはて、次の夏はどんな変化が起きるのでしょうか?そんなワクワクを胸に本日も良いサッカー生活を!