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やる気ゼロのオーナーに泣くバレンシア、光は北から指す

スペインのリーガでチャンピオンズリーグ(CL)出場勢と言えば、レアルマドリード、バルセロナ、そしてバレンシアが2000年以降の定番でした。しかし、バレンシアは凋落し今や最下位。2部降格が現実味を帯びてきています。その主因となった現オーナーのピーター・リム氏(以下、リム氏)の心変わりを、いつも通り10%のデータを手掛かりに90%の妄想で想像していきます。

バレンシアとリム氏の日々を超高速回顧

まず、最初に独断と偏見によるピーター・リム氏とバレンシアの歩みをスーパーダイジェストでご紹介します。もちろんお金の面からです。
 シンガポールの富豪であるリム氏は2014年にバレンシアのオーナーとなりました。当初はポルトガル人の敏腕エージェントであるジョルジュ•メンデス氏と組んで、バレンシアにポルトガルにゆかりのある選手を輸入してビッククラブに輸出するというビジネス構図を描きました。
  しかしながら、強硬なポルトガル路線の導入によりチームは混乱。ポルトガルからヌーノ・エスピリト・サントス監督を起用して14/15シーズンはCL出場権を確保したものの、15/16は低迷し同氏を解任しました。後任にマンチェスターUのレジェンドであるガリー・ネビル氏を招へいしたものの、立て直せず。
  そうしているうちに肝心のメンデス氏がバレンシアから撤退。バレンシアに来たポルトガル産選手たちは、同氏が本腰を入れていた時期こそニコラス・オタメンディ、アンドレ・ゴメスと順調に利益を残していきますが、その後の商売はトントン。15/16シーズンに来たカンセロが最後の成功例となります。

なお、同氏はFosunグループと組んでプレミアリーグ(当時はまだ2部のEFL)のウォルバーブトン・ワンダラーズ(以下、ウルブス)に鞍替えしてています。Fosunグループがメンデス氏の会社の株を保有するなど、両者はかなりズブズブの関係を築いていたようです
  メンデス氏離脱に加え、悪いことにコロナ禍が発生しリーガ全体の移籍市場が冷え込むと、ポルトガル産の選手を獲得してビッククラブへ売るビジネスは完全に破綻します。
 その後のリム氏のバレンシアへのモチベーションは、移籍支出額を見れば、一目瞭然。19/20シーズンを境にほぼゼロユーロ補強。

結果、新監督を毎年招へいしては、「約束と違う」と怒られて辞任される事態を繰り返し、さらには主力選手を売って現金に換えることを優先するため、スカッドが貧弱となり、当然と言えば当然の最下位に沈む事態を招きました。

なぜリム氏はバレンシアを売却しないのか?

ここでリーガ、及び全バレンシア・ファンが思う疑問は「え?じゃあ、なんでリム氏はクラブを売らないの?」でしょう。
 ここから先は、私の妄想ワールドの世界に入りますが、恐らくバレンシアの収支は小幅赤字であり、保有し続けていても大した損にならないことが理由だと考えます。
 バレンシアについて英語で手に入る財務データは22/23が最新となります。最終損益を見ると、21/22は▲19.7mlnユーロ(約32億円相当の赤字)でしたが22/23は▲3.9mlnユーロ(約6億円相当の赤字)まで赤字額が大きく縮小しています。23/24シーズンは22/23に比べて移籍市場で稼げませんでしたが、24mlnユーロ(40億円程度)程度の差なので、赤字額は大きく膨らんでいないと予想されます。

バレンシア non-financial report 22/23より

最近の低迷ぶりに鑑みれば、意外な決算結果かもしれません。実際、売上のうちスポンサー収入を見ると、20/21からむしろ増えています。

上が22/23、真ん中が21/22、下が20/21シーズン
バレンシア non-financial report 22/23より

どうしてスポンサーは離れないのか?収入は激減しないのか?それは熱いサポーターがそこにいるからです。チーム状況がここまで苦しいにも関わらず、チケットの売り上げ枚数は約14万枚から約18万枚へ約20%増。シーズンチケットの売上は10.5mlnユーロから14.4mlnユーロへ約30%ジャンプアップ。苦しいピッチ上の成績を熱い声援で補うという涙なくして語れないのがバレンシアの現状なのです。

上が22/23、真ん中が21/22、下が20/21シーズン
バレンシア non-financial report 22/23より

解放の鍵はイングランド4部

今後のシナリオは3通り考えられます。1つは、このままピッチでは低空飛行を続け、ただ利益はほぼ均衡しているためリム氏がダラダラとバレンシアを保有し続けるというものです。
 もう一つは、バレンシアが遂に2部へ降格し、放映権の収入が激減することにより収支が大幅に悪化。リム氏が見切りをつけて売るというシナリオです。
 最後のウルトラCシナリオは、ピーター・リム氏が保有するもう一つのクラブ、イングランドのリーグ2(実質4部)に所属するサルフォード・FCがEFL(2部)に到達することです。
 EFLは2部と侮るなかれ。プレミアリーグの選手供給先として、大きな収益が見込めるリーグであり、移籍売却益はリーガやブンデスと肩を並べるレベルにあります。移籍ビジネスをしたいならもってこいの場所なのです。

さて、そのサルフォードは19節消化時点で12位。3部へ自動昇格となる3位との勝ち点差は7。また、ノックアウト•ステージに進出可能な7位との差は僅かに4であり、十分に昇格の可能性を残しています。

順調に行けば、再来年にはEFLに到達しているでしょう。その時にリム氏が移籍ビジネスでより儲かるイングランドへ資産を集中しようとすれば、バレンシアはようやっと解放されるのです。
  バレンシアニスタの愛が通じる瞬間が再来年に訪れることを願わずにはいられません。それでは本日もよいサッカー生活を!

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