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新生マンチェスター・ユナイテッドの財政事情を探る(24年夏編)
昨年のクリスマスにマンチェスター・ユナイテッド(以下、ユナイテッド)は、ラドクリフ卿を新たな経営陣として迎えました。そして卿率いる新生スポーツ部門下で今夏に初めての移籍市場を戦っています。
ラドクリフ氏の登場はユナイテッドの財務上にどんな影響を与えたのか?それが今夏の移籍戦略、今後の移籍戦略にどのように変えていくのか?いつも通りでデータ10%妄想90%で探っていきます。
コロナ禍後は赤字が止まらず
グレイザー家が実権を握った後のユナイテッドと言えば、財政面では好パフォーマンスをたたき出すものの、移籍市場における数々の失敗によりスポーツ面では振るわないことで有名でした。FA杯やリーグ杯こそ獲得したものの、プレミアチャンピオンの座は10年以上ご無沙汰になっています(最後は12/13シーズン)。
しかし、コロナ禍後は「財政だけは一流」も怪しくなります。2024年度(2023年7月~2024年6月)の数字は未確定ですが、このままいくと5期連続赤字を計上する可能性が高くなっています。一般企業なら銀行に呼び出されて経営再建計画を書け!と言われるレベルです。
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21/22の補強が裏目に出て危機的状況へ
なぜ黒字に戻せなかったのか?個人的には2022年度の補強戦略が大外れに終わったことが痛恨の一撃になったと考えます。
売上と営業費用の数字を見ると、2020、2021年度と売上が低迷した後、2022年度に費用が一気に増えています。グレイザー家は売上を取り戻すため、このシーズンに収支が崩れることを覚悟で勝負に打って出たと推測されます。
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そんな勝負のシーズンにユナイテッドの命運を託された新戦力が、サンチョ、ヴァラン、そしてクリスチャーノ・ロナウド(以下、C・ロナウド)でした。
もうプレミアを見ている方はご存じの通りの結果です。ヴァランこそスタメン級として機能しましたが、サンチョ、C・ロナウドはテン・ハグ監督と対立。前者は干されて、23-24シーズンはローンでドルトムントへ出戻り(24年8月23日時点ではローンから復帰)。C・ロナウドに至っては22年11月に監督批判をインタビューで堂々と繰り広げた後に契約解除という最悪の結末を迎えてしまいました。
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ラドクリフ卿の資金注入で首の皮が繋がる
2022年度の失敗は、2023年度(22/23シーズン)に深刻な影響をもたらします。そうキャッシュ減少です。極端な話、企業は赤字を出していたとしても、資金さえ底をつかなければ営業を継続できます。(逆に帳簿上は黒字でも資金が足りなくなって倒産することを、「黒字倒産」と言います)
ユナイテッドのキャッシュフロー(CF)表の2021年度(20/21シーズン)を見ると、移籍金が主となる投資CFが大幅マイナスを、財務CFのプラスで半分以上相殺しています。これは移籍市場での大盤振る舞いを借り入れ(財務CF上はプラス)で補ったことを意味します。
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ところが、この技は2022年度(21/22シーズン)以降、使えなくなっています。競技面が振るわない中、赤字続きで借入金が増え、銀行や債券投資家から資金を借りづらくなったと察します。実際、この季の借入金は4,000万ポインドと、その前の季の6,000万ポンドから減少しています。そして、2023年度(22/23シーズン)は、ネット(返済分と相殺)で見ると借入金はゼロとなっており、もう新規借り入れはかなり困難になっていたと推定されます。
そんな中、ホイルンド(€7,390万)、マウント(€6,420万)、オナナ(€5,020万)と計€2,000万を超える補強を行ってしまったため、とうとう手元資金は£7,600万と大きく減少しました。毎季平均で£5,000万の赤字を出しているクラブので、このまま1年半続くと営業停止というレベルのキャッシュ水準まで低下したのです。
そこで、ラドクリフ卿に株式を買ってもらい、その資金を使って赤字を穴埋めしたわけです。卿に£1億5,900万という破格の金額を出してもらったので、24年3月末時点でキャッシュの減り方は非常に小幅にとどまっています。
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ラドクリフ・ブーストはもう切れてるかも??
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