コパ・アメリカ メキシコ注目選手
アメリカ大陸ナンバー1を決める大会・コパ・アメリカが日本時間6月21日にアメリカで開幕する。
連覇を狙う世界王者アルゼンチンや、言わずと知れた強豪ブラジル、最多優勝回数を誇るウルグアイなど、激闘が繰り広げられること間違いなしだ。
今回が11回目の参加となるメキシコは、グループBでジャマイカ、ベネズエラ、エクアドルと対戦する。
優勝経験こそないものの、通算5回のベスト4進出を誇り、参加国の中でも強豪と位置付けられることは言うまでもない。
特に、今回のメンバーは2021年の東京オリンピックで銅メダル獲得に貢献した選手が多くいるなど、上位進出のチャンスは十分にあるだろう。
今回は、独断と偏見で選んだそのメキシコ代表の注目選手を紹介する。
大器晩成型守護神 ゴンザレス
メキシコ代表の選手と言えば、ギジェルモ・オチョアを思い浮かべる人も多いと思う。
2005年から代表のゴールマウスを守り続け、数々の大会で活躍したオチョアだが、今大会のメンバーに名前はない。
オチョアに代わる守護神として、有力視されていたのがアメリカのルイス・マラゴンであった。
高いセービング技術を持ち、今シーズンのアメリカのリーグ優勝の立役者となったマラゴン。コパ・アメリカでの活躍も期待されていた。しかし、怪我で1ヶ月の離脱を余儀なくされ、メンバー外となった。
そんな中で、コパ・アメリカでのスタメンが濃厚とされているのが、プーマスのフーリオ・ゴンザレス。
ゴンザレスは、先日代表デビュー戦を飾ったばかりの33歳。
今シーズンのリーグ戦で、22-23シーズンに比べて失点数を大幅に減らすなど、一気に国内を代表するゴールキーパーとなった。
持ち味は、1対1の強さ。ゴール前に抜け出した相手に対して、絶妙なタイミングで飛び出し、シュートコースを消す。
最後の砦として、チームを救うプレーへの期待は大きい。
代表3試合目をコパ・アメリカという大舞台で迎えることとなる33歳。
オチョアの次の座を掴み、メキシコ代表を勝利に導けるか。
大器晩成型ゴールキーパーに注目だ。
チームのリーダー アルバレス
オチョアに代わり、キャプテンとしてチームを引っ張るのが、ウェストハム所属のエドソン・アルバレス。
代表では、主にセンターバックとして起用され、今大会でも守備の要としてチームを支える。
空中戦や1対1の強さが武器のアルバレスは、26歳ながら、すでに代表78試合出場。ワールドカップ出場2回、北中米王者を決めるゴールドカップには4大会出場と経験豊富だ。
転換期を迎えているメキシコ代表にとって、アルバレスの経験とリーダーシップが欠かせないだろう。
今大会だけでなく、26年自国開催のワールドカップなど、今後メキシコサッカーを牽引する存在となり得る。
サイド攻撃のキーマン アルテアガ
メキシコ代表の武器の一つは、サイド攻撃である。サイドに展開し、相手を大きく揺さぶり、ゴール前へのクロスを強力なフォワード陣が仕留める。
ロサノ監督が就任して1年。サイド攻撃のスタイルが定着してきている。
そのスタイルで、重要な役割を果たすのがサイドバックの選手だ。
特に、左サイドバックのアルテアガは、非常に楽しみな存在である。
アルテアガは、ベルギーのヘンクで4年間プレーした後、今シーズンからモンテレイに加入した。
ヘンク時代には、日本代表の伊藤純也とチームメイトだった。
彼の持ち味は、積極的な攻撃参加。長い距離をスプリントし、鋭いクロスを上げ、ゴールを演出する。
時には、ボックス内にも侵入し、逆サイドからのクロスや、中盤からのスルーパスに抜け出し、自らもゴールを狙う。
このゴールは今シーズンのモンテレイの試合で見られたもの。彼の武器が発揮されたゴールの1つだ。
アルテアガのスプリントは、チームの攻撃に新しい選択肢を生み出し、相手の脅威となりそうだ。
チームの心臓 ロモ
「メキシコで一番クレバーな選手」とも評されるのは、モンテレイ所属のMFルイス・ロモ。
中盤でボールを動かし、試合をコントロールする。
運動量が豊富なロモの役割は非常に大きい。
ビルドアップでは、最終ラインに加わり、攻撃を組み立てる。チャンスになれば、前線にも顔を出す。
常にボールに関わっていけるのは、運動量だけでなく、予測できるクレバーさも兼ね備えているからだと言えるだろう。
チーム全体のバランスを見ながら、自分の役割に徹することができる選手だ。
安定感もあり、計算しやすい点も代表チームにとってポイント高い。
東京オリンピックでは、オチョアとヘンリー(アメリカのエースストライカー)と共に、オーバーエイジ枠で選出され、銅メダル獲得に貢献。
当時のU-23、現在はA代表で指揮を執っているロサノ監督から絶大な信頼を得ている。
今大会もロモが起点となるシーンは多いだろう。
チームの心臓として、攻撃陣を機能させていけるかどうかが1つのキーポイントとなる。
攻撃の推進力を生む キニョネス
攻撃陣もタレントが揃っている。
その1人がアメリカ所属のFWフリアン・キニョネス。
昨年、コロンビアから帰化し、メキシコ国籍を取得。すでに、メキシコ代表でウイングのポジションを勝ち取っている。
キニョネスは、高い身体能力を活かしたパワフルなドリブルやスピードを持ち味とし、相手ゴールを脅かす。
今シーズン、アペラトゥーラ(前期戦)とクラウスーラ(後期戦)ともに6得点ずつを上げ、チームの優勝に大きく貢献した。
個人での打開も可能なプレーヤーでもあるキニョネス。
最大6試合を戦うコパ・アメリカでは、様々な相手が立ちはだかる中、個の力が必要となるシーンが必ずと言っていいほど出てくる。
カウンター、セットプレーなどあらゆる状況から得点を挙げられる彼の存在はチームにとって大きな力になるだろう。
若きストライカー ヒメネス
キニョネスに加え、点取り屋として期待されるのが、サンティアゴ・ヒメネス。
オランダのフェイエノールトで、日本代表の上田綺世とチームメイトでもあったメキシコが誇る若きストライカーだ。
今シーズンは、リーグ戦で21ゴールと大活躍。
今夏には、アトレティコ・マドリー、アーセナル、トッテナムなどのビッグクラブへの移籍も噂されている。
足元の技術が高く、裏への抜け出しやミドルシュートなど様々なパターンから得点を量産する万能なストライカー。
今シーズンのフェイエノールトでも、1人でゴール前に持ち込むだけでなく、クロスに合わせたり、スルーパスに抜け出したりと、どのシーンを切り取ってもレベルは高い。
23歳と若く、更なる飛躍に期待される。
代表での試合数は24と少ないものの、昨年のゴールドカップでは、決勝のパナマ戦で決勝点を決め、優勝に大きく貢献。
自身初のコパ・アメリカとなる今大会。
大舞台でどのような活躍を魅せてくれるのか。
非常に楽しみな選手だ。
カギを握る日本人の存在
2021年に行われた東京オリンピック。
メキシコ代表は、3位決定戦で日本に勝利し、銅メダルを獲得した。
試合後の歓喜の輪の中に、西村亮太さんという日本人がいた。
ニュースにも取り上げられたため、覚えている人も多いかもしれない。
西村さんはこの時、メキシコU-23代表のヘッドコーチを務めていた。
その2年後。
オリンピックで指揮を執っていたハイメ・ロサノ監督がA代表で指揮を執ることになり、そこにヘッドコーチとして西村さんが再び抜擢された。
メキシコの指導者養成学校で出会ったロサノ監督と西村さん。ネカクサなどメキシコ国内のチームで活動し、
“la mano derecha de Lozano”「ロサノの右腕」としてロサノ監督を支えた。
ロサノ監督からだけでなく、メキシコのサッカーファンからも支持されている西村さん。
オリンピックで母国日本を破った後に涙した姿や、試合前の国歌斉唱で監督の横で歌う姿は、メキシコ国民の中で話題になったという。
昨年のゴールドカップ優勝後の記事では、西村さんをこのように評価した。
この記事では、この後に西村さんのキャリアを紹介している。
このような記事や話題は、メキシコ国民の西村さんへの期待の表れだろう。
ロサノ監督の参謀役として、重要な役割を担う西村さん。
1人の日本人がコパ・アメリカで奮闘する姿に大注目だ。
26年に向けた戦い
ここに紹介したメンバー以外にも、レベルの高い選手が揃っている。
オリンピックで10番を背負ったアレクシス・ベガや、プーマスのドリブラー セサル・ウエルタ、カタールW杯で見事なFKを決めたルイス・チャベスなどなど、豪華なメンバーで挑む。
チームとして特徴的なのが、一体感。
ロサノ監督や西村さんが手がけている代表は、オリンピックを戦った選手が多く、一緒にプレーをしている期間が長い。より一体感の強いチームになっていると言えるだろう。
代表公式SNSも、”Juntos y Unidos” 「一致団結」を掲げているなど、メキシコ代表の一体感は準備万全のようだ。
また、今大会は2年後のW杯に向けて貴重な機会となる。
26年W杯は、メキシコ・アメリカ・カナダ共同開催。自国開催となるメキシコは、是が非でも結果を残したいところ。
国の意地とプライドをかけた戦いが行われるコパ・アメリカは、W杯に向けた中で、最高の舞台となるはずだ。
メキシコが様々なライバル国を相手に、どのような戦いを魅せてくれるのか。
今大会は、一部の試合が日本からも見られる。
(メキシコのグループステージの配信はないが、決勝トーナメントはPrime videoで配信がある。)
今回紹介した選手を中心に、ぜひメキシコ代表に注目してもらいたい。