メキシコ コパ・アメリカ白星発進
メキシコのコパ・アメリカ初戦を報じた現地メディアの記事では、“agridulce” 「ほろ苦い」のワードが目立った。
FIFAランキングや戦力では、コパ・アメリカ参加国の中でもトップクラスのメキシコ。その面を見てもグループステージは順当に勝ち上がるだろう見られている。
しかし、勝利はしたものの、初戦から予期せぬ展開となった。
今回は、そんな第1戦ジャマイカ戦の90分間を振り返る。
連動した守備からの攻撃
ジャマイカ戦のスタメン。
メキシコは、大会前のブラジル戦とは違うメンバーとなった。
注目すべきポイントは、中盤の選手。
ルイス・ロモとカルロス・ロドリゲスではなく、オルべリン・ピネダとDFセサル・モンテスを起用。モンテスが最終ラインに入り、エドソン・アルバレスが1つポジションを上げ、中盤に入った。
システムは変わらず、4-3-3で、センターバック2人とアルバレスと、守備力が高い3選手を中央に固める布陣で挑んだ。
試合は、開始からメキシコペース。
攻撃は、中盤のピネダと右サイドのアントゥーナ、サンチェスの3人で相手を崩し、何度もチャンスを演出。
一方、ジャマイカもカウンターを仕掛ける。
しかし、今日のメキシコは守備も光っていた。
奪われた瞬間の切り替えは早く、すぐさまボールを持った選手にアタック。選手間の距離間が良く、数的優位を作り出せた。
シュートを打たれても、守備の人数は足りており、フリーで打たれる場面はない立ち上がりとなった。
その要因は、センターバックのモンテスとバスケス、中盤のアルバレスだろう。この3人が中央でどっしりと構えていたことで、前線やサイドの選手の守備への余裕が生まれ、相手選手にプレスをかけやすくなった。
「良い守備から良い攻撃」
日本代表の試合でもよく耳にするこの言葉をメキシコも立ち上がりから体現した。
ロサノ監督の狙いがハマり、相手にペースを握らせず、順調とも言える形でのスタートとなった。
予期せぬ事態 キャプテンの負傷
前半27分、順調なスタートを切ったメキシコ代表に、アクシデントが起こる。
ここまで、チームの軸となっていたキャプテンのアルバレスが無念の負傷交代。
相手のドリブルに対応した際に、左もも裏を痛め、ピッチに倒れ込んだ。
アルバレスはプレー続行が不可能に。
スタッフに支えられながら、ピッチを去った。
ピッチを去る際、画面には、涙を流すアルバレス、心配そうに見つめるファンが映し出された。キャプテンとして信頼度も高く、期待も大きいアルバレスを30分で失ったメキシコ。
予期せぬ展開に、チームもファンもそのショックは大きかった。
メキシコは、初戦でキャプテン不在の中、戦うという今大会最初の試練を迎えた。
“いつも”のスタイル
アルバレスに代わってピッチに投入されたのは、ルイス・ロモ。
アルバレスと同じ中盤のポジションに入った。
これまでに代表の多くの試合で、このポジションを務めていたロモは、緊急事態の出番でも落ち着いて持ち味を発揮した。
印象的だったのは、ロモのポジショニング。
アルバレスと同じように、セカンドボールを拾い、サイドにボールを展開する役割を求められていたようであるが、ロモのポジショニングは、より高い位置であった。
ロモが高い位置でプレーしたことで、全体的にラインが押し上げられた。
これが、アルバレスとは違ったリズムを作り出し、よりジャマイカゴールに近づいたと言えるだろう。
これまでに代表の多くの試合で、起用されてきたロモ。
彼の安定感のある “いつもの” プレーが、チームに落ち着きを取り戻した。
一瞬の隙
前半は決めきれないものの、何度も決定的なシーンを作ったメキシコ。
スコアレスで折り返したが、印象は悪くなかったはず。
あとは、時間の問題。
このままのペースで行くとメキシコが先制するだろうという雰囲気はあった。
YouTube等で試合を見ていた人もそう感じたのではないだろうか。
しかし、後半は打って変わってジャマイカが攻勢に出る。
50分のジャマイカ、右サイドからのクロスをドンピシャで頭で合わせ、メキシコ痛恨の失点…
かと思われたが、オフサイドの判定でノーゴール。
一瞬の隙を突かれたメキシコ。
ヒヤリとしたワンプレーだったが、これが逆にメキシコ代表のスイッチを入れた。
目が覚めたような猛攻
前半から押し込んでいたメキシコは、ジャマイカの幻のゴールを機に、さらに一段とギアを上げた。
57分、チャベスがペナルティエリア外からシュート。しかし、これは相手キーパーに阻まれる。
60分、ロングフィードをカットしたロモがキニョネスとパスを回し、エリア内に侵入。最後はキニョネスがシュートを放つも、ボールは枠を外れた。
64分、ロモのパスを受けたヒメネスが右足で強烈なシュート。これも相手キーパーが弾き、ゴールネットを揺らせず。
直後のコーナーキック、セカンドボールをアルテアガがシュートを放つも、キーパーがキャッチ。
66分、ファーストタッチで抜け出したキニョネスのシュートは枠の外。
チャベス、ロモ、キニョネス、ヒメネス…
この10分間だけで、あらゆる形でジャマイカゴールに迫る猛攻を魅せた。
勝利に導いた一撃
完全にメキシコペースとなった68分、メキシコベンチはさらに仕掛ける。
長身FWゴンザレス、中盤で相手をかき回せるロドリゲスを投入。
よりパワーを持った攻撃を仕掛けられる形が整った。
この交代の1分後、ついに待望の瞬間が訪れる。
ペナルティエリア付近で相手のクリアボールをロモが拾い、アルテアガへ。
得意の左足から放たれたシュートがゴールネットを突き刺した。
ようやく先制に成功したメキシコ。
終盤はジャマイカの反撃を受けるが、代表3試合目、公式戦初出場のGK ゴンザレスを中心に守り抜いた。
結果、メキシコは勝ち点3を獲得。
決勝ゴールを挙げたアルテアガは試合後、
とコメント。
ノーゴールに終わったものの、多くのチャンスを作ったキニョネスは、
アクシデントなど苦しむ時間もあったものの、大事な初戦での勝利は非常に大きな結果となった。
連勝で次のステージへ
結果的に勝ち点3を獲得したものの、冒頭で「辛勝」と表現したように、課題も見えた試合となった。
1つは、これまでも指摘されていた決定力不足。
支配率68%、シュート20本を放ったメキシコ。相手キーパーが好セーブ連発だったとはいえ、わずか1点のみという結果は物足りないだろう。
ヒメネスやキニョネス、ゴンザレスなどFW陣だけでなく、今回の試合のように、アルテアガやロモなど、後ろの選手の攻撃参加もカギとなる。
次戦では、人数をかけたより厚みのある攻撃から複数ゴールでの勝利に期待がかかる。
もう1つは、キャプテンのアルバレス離脱だ。
現時点では、アルバレスはチームに帯同しているものの、怪我の詳細は分かっていない。仮に、次戦以降の出場ができなくなった場合、彼が抜けた穴が、チームにとって大きな痛手となることは間違いない。
現地メディアも、”Quién será el sustituto de Álvarez, en caso de no poder continuar” 「アルバレスが離脱した場合の代役は?」という話題で持ち切りである。
仮に離脱した場合は、代わりの選手を招集することも可能であるが、現時点で新たな選手の招集といった報道はされていない。
厳しい戦いとなりながらも、勝ち点3という最大の収穫を得た初戦。
2戦目のベネズエラ戦は、連勝して波に乗るために、内容にもこだわりたいところ。
決定力不足、キャプテン不在の試練を乗り越えていくためには、ベンチワークも含めた戦いがより重要になってくるに違いない。
今大会最初の試練を乗り越えていけるのか、
メキシコ代表の一体感が問われてる。
ジャマイカ戦ハイライト↓
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