進化が求められるメキシコサッカー 新シーズン開幕
コパ・アメリカ敗退から1週間足らず。
新シーズンが幕を開けた。
プレーオフを導入していることもあり、日程上新シーズンまでのオフが短いリーガMX。(ただし、8月はMLSとの大会のためリーグ戦は中断する。)
そのため、代表選手や移籍濃厚な選手を欠く中での開幕戦となり、昨シーズンの積み上げがより重要なポイントとなる。
また、アペラトゥーラは前期戦であるため、全部で17節。8月の中断期間までの4試合で良いスタートを切ることが必須だ。
そんな中で、幸先の良いスタートを切ったチーム、切れなかったチームと分かれた開幕戦。
今シーズンどのようなシーズンとなるのか、開幕戦の結果と共にリーグの展望を見ていこうと思う。
代表選手の活躍 クルス・アスルとプーマス
コパ・アメリカでは、グループステージ敗退に終わったメキシコ代表。
代表選手は早速その悔しさをリーグ戦でぶつけた。
クルス・アスル対マサトランの試合は、アスルの代表選手ロドリゲスとアントゥーナは共にスタメン出場。
試合は序盤からアスルペースとなった。
ロドリゲスは中盤であらゆる場所に顔を出し、チャンスを演出。アントゥーナは得意の抜け出しで存在感を放つなど、この2人を中心に、度々相手ゴールを脅かした。
後半は退場者を出し、マサトランに押し込まれるシーンも見られたが、堅い守りで無失点で切り抜けアスル。その後、アスルは後半アディショナルタイムにチームは待望の先制点を挙げ、ホームでの開幕戦を白星で飾った。
もう1つ代表選手の活躍が目立ったチームがプーマス。
GKゴンザレス、FWロドリゲスとウエルタの3選手が所属するプーマスは、ホームにレオンを迎えた。
立ち上がりから終始プーマスペース。
守りでは、ゴンザレスが安定したプレーを見せ、1失点に留めた。
ウエルタは、後半から出場すると、持ち味のドリブルで相手ラインを下げることに成功。ウエルタの仕掛けによって、スペースができたレオンの中盤から、ロドリゲスが豪快なミドルシュートを突き刺した。
この3選手の活躍により、チームは4対1と快勝。
悲願のリーグチャンピオンへ順調なスタートとなった。
どちらのチームの代表選手も、コパ・アメリカの悔しさを晴らすかのような活躍でチームの勝利に貢献。
今シーズンも代表選手が各チームを引っ張る姿には注目だ。
黒星スタート アメリカとパチューカ
一方で、黒星スタートとなったチームにも注目したい。
1つはクラブ・アメリカ。
昨年の王者は、今季ももちろん優勝候補。オフの補強にも成功した。
そのアメリカは、アウェイでサン・ルイスと対戦。
前半5分、アメリカはエースのヘンリーのゴールで先制。幸先の良いスタートを切った。
しかし、ここから主導権を握ったのはサン・ルイス。
直後の7分、コーナーキックから同点に追いつかれると、50分にも失点し、逆転負け。昨シーズン13位のサン・ルイス相手に痛い敗戦となった。
まさかの黒星スタートとなったアメリカ。次戦以降、王者としての真価が問われる。
リーガMXには昨シーズン、もう1つの王者に輝いたチームがある。
Concacaf チャンピオンズカップでの北中米チャンピオンのパチューカだ。
過去に本田圭佑さんも所属したこのクラブは、このタイトルにより、来年のクラブワールドカップへの出場権を獲得した。今メキシコで波に乗っているクラブの1つだ。
そのパチューカは、同じく25年クラブワールドカップの出場権を持っているモンテレイをホームに迎えた。
強豪クラブ同士の対決は、終始激しい攻防となった。
14分、モンテレイは右サイドからのクロスを昨シーズンスペインから加入したカナーレスが流し込み、先制に成功。
その後、モンテレイがボールを動かして揺さぶるのに対し、パチューカはカウンターを狙った。両者の縦に速い攻撃は、今節のベストマッチとも言えるレベルの高い試合となった。
試合が進むにつれ、パチューカが攻め込むシーンが増えるも、あと一歩ゴールに届かず。
0対1でアウェイのモンテレイが勝ち点3を獲得した。
昨シーズン同様、質の高い攻撃を何度も魅せたパチューカ。結果は及ばなかったが、ポジティブな面が多かったと言える。
今シーズンも、アメリカやアスルなどの優勝争いに割って入るリーグの行方のカギを握るチームになること間違いなしだろう。
活発に動く移籍市場 -王者のさらなる補強-
今オフも連日、様々な選手の移籍の噂が飛び交った。
様々なチームが補強の動きを見せる中、特に目立ったのは、アメリカとアスル。
アメリカは、守護神マラゴンが怪我で離脱中。この穴を埋めるべく、レオンの守護神であったコタを獲得した。また、パチューカからコパ・アメリカにも出場したメキシコ代表MF エリック・サンチェスの加入も発表。国内でトップレベルの戦力を誇る中、より選手層の厚みを増すことに成功した。
活発に動く移籍市場 -代表選手の加入-
アスルは昨シーズン、38歳のアルゼンチン人アンセルミ監督を招聘。
3-6-1から繰り出されるパスサッカーで準優勝に輝いた。
リーグタイトルが見えてきた今シーズン、クラブもファンも大きなチャンスと捉えている。このチャンスに、クラブはさらなる戦力強化を図った。
大きな補強となったのが、ホルヘ・サンチェスとルイス・ロモのメキシコ代表選手2人の加入である。
ホルヘは、2年間ヨーロッパでプレーしたサイドバックの選手。アヤックスやFCポルトでのプレーを経て、2年ぶりの母国復帰となった。
彼の対人の強さ、豊富なスタミナは、アスルのスタイルに適応できそうだ。また、海外でプレーしたという経験も兼ね備えている。リギージャといった短期決戦を勝ち上がるためにも、経験のあるホルヘの役割は大きい。
代表では、アントゥーナと右サイドで共にプレーしている。この2人の組み合わせがアスルで見られることにも、大きな注目が集まる。
ロモは、アスルでプレーした後に、モンテレイで活躍した。3年前にアスルが最後に優勝した時のメンバーでもある。
これまでにも、ロモのプレーについて触れてきたが、彼の持ち味はゲームをコントロールできることだ。状況を的確に把握し、攻守のバランスを取る。中盤から前線に飛び出し、自ら得点を狙うこともあれば、後方からボールを動かし、前線の選手たちのゴールを演出することもある。
パスサッカーを体現するアスルにとって、最高のピースとなったと言えるだろう。
ロモの加入について指揮官は、
とコメント。
2人の加入でタイトル獲得に向け、準備は整った。タレントが揃った中、アンセルミ監督がどのような布陣を組むのかにも注目だ。
2シーズン制・プレーオフもあるリーガMXでは、順位予想が難しい。昨シーズンのアスルやトルーカのように、下馬評は高くなくても、上位に入るチームが出てくることも期待ができる。実際に、開幕戦ではサン・ルイスがアメリカを破るなど ”¡De no creerse! (信じられない)” 結果も生まれた。
今シーズン、チャンピオンに輝くのはどのチームなのか。
どんなドラマが生まれるのか。
主役の座を懸けた熱い戦いが始まった。