決勝の価格は昨年の2倍。賛否両論のチケット値上がり
メキシコ国内リーグ・リーガMX の2023-24シーズンは、クラブアメリカがクラウス―ラ(後期戦)王者に輝き、幕を閉じた。
全ての戦いを終えて振り返ると、アメリカの強さが際立った今シーズン。
しかし、実際には、シーズン途中にはラジャドス、クルス・アスルなどが首位に立つ時期もあり、北中米チャンピオンを決めるConcacafチャンピオンズカップでは、パチューカがアメリカを下すなど、シーズン中はライバルチームが、アメリカを脅かすことも多かった。
アメリカが圧倒的な強さを持っていても、”独走”しなかった要因は、リーガMXが採用している2ステージ制だろう。
特に、クラウス―ラでアメリカと最後まで戦ったクルス・アスルは、後半戦リーグに旋風を巻き起こし、大いに盛り上がった。
このメキシコサッカーのリーグ制度が引き起こす盛り上がりは凄まじいが、それが理由となり、問題も生まれている。
今回は、その問題について触れてみたい。
予想ができないリーグ
スポーツに「タラれば」を言うのはあまり良くないかもしれないが、Jリーグやヨーロッパのようなリーグシステムであれば、アメリカが首位を独走し、危なげなく優勝していただろう。
実際に、アメリカのシーズン総勝ち点は75。
ラジャドスは65、ティグレス61、クルス・アスルは50...と数字からも容易に想像できる。
また、このリーグ戦の総当たりを終えた後、8チームによるプレーオフも行われるリーガMX。
リーグで勝ち点を多く獲ったからといって、タイトルが確実というわけではない。
クラブ間の力の差が大きい中で、このリーグシステムを導入することにより、絶対的なチームの独走が起こりうる可能性が低く、番狂わせが起きやすくなるのだ。
以前の記事にも書いたが、過去10年での優勝クラブは非常に多く、毎シーズンのように、ドラマやサプライズがあるのがこのリーグの魅力である。
今回のリギージャ(プレーオフ)でも、強敵アメリカの独走を阻止すべく、宿敵であるクルス・アスルが立ちはだかった。
このカードがどのようなドラマを創り出すのか、両チーム以外のサポーターも注目した。
値上がりしたファイナルのチケット
そして迎えたクラウス―ラリギージャ決勝。
アペルトゥーラ(前期)に引き続き優勝を狙うアメリカと、3年ぶりのファイナルを迎えたクルス・アスルの対決となった戦いは、2戦とも超満員。スタジアムの外から応援するサポーターの姿もあった。
この注目度が高い名門同士の試合に関連して、冒頭で触れた”ある問題”発生した。
それは、チケット価格の高騰化だ。
現地のスポーツ記者のDavid Faitelson さんの X の投稿では、このように述べられている。
この投稿には、4000を超えるいいねが集まった。
彼の投稿だけでなく、現地メディアの記事にも「チケット高騰化」に言及されていた。
Fox Sports México の記事には、アメリカのホームアステカスタジアムでのチケット価格の発表を受けたファンの反応を紹介。
では、実際にどれほど値段が上がったのか。
ファイナルの値段に言及された記事を見てみると…
これをレギュラーシーズンでの同じ席の価格を見ると、
”ゾーン400~600” 200ペソ(約1,700円)
”ゾーン100” 700ペソ(約6,000円)
とファイナルとの差はかなり大きいことが分かる。
また、この記事の続きにはこのようなことも触れられている。
今回のクラウス―ラ決勝がアペルトゥーラの2倍になった理由としては、やはり、アメリカの対戦相手が宿敵であるクルス・アスルであり、注目度がより高かったことであるという。
この状況からも、今年のクラウスーラがいかに注目され、白熱したのかが分かるが、チケットを買いたくても手が届かなかったというファンも多くいたのが、リーガMXの現状としてあるようだ。
賛成の声も
一方で、この問題に対してポジティブな意見もある。
SNSで話題となった J3アスルクラロ沼津を応援しているメキシコ人サポータージャイールさんもポジティブな意見を持つ一人。
近年、日本でもよく耳にする転売が、メキシコでも問題となっており、それが今回のチケット価格の背景にあるようだ。
また、メキシコと同じ Concacaf (北中米カリブ海サッカー連盟)に所属するアメリカのMLSは、スター選手の獲得などを通して、著しい成長を遂げている。ライバル国の成長にメキシコサッカーも黙っていないだろう。選手のレベルアップだけでなく、クラブやリーグのレベルアップ(経営や環境の面など)も必要であるに違いない。
そういった面も、関係しているのかもしれない。
余談だが、ジャイールさんはクルス・アスルのファンだそうで、決勝の第1戦を観戦。
「チケットを購入するために数週間前から節約していた。」と語っていた。
ジャイールさんに関してはこちらの記事から⇧
おわりに
今回は、試合についてではなく、リーガMXの現状についてチケット価格の問題から取り上げてみた。
チケット高騰化は問題となっているが、一方でクラブやリーグの資金面における成長など、良い面もあり、実際にジャイールさんのように賛成する声も少なくない。
賛否両論あるこの問題に対して、リーガMXやクラブがどのような対応を取るのかに注目だ。
高騰化がなくなれば、より多くの人が観戦に行け、今まで以上の盛り上がりを生み出せるかもしれないし、高騰化が続けば、よりサッカーを通じて経済が回り、財力でも世界と負けないクラブが増えていく。
いずれにせよ、メキシコサッカーがまた1つ変わり、進化していくことは間違いない。
長い歴史を持ちながらも、あらゆる可能性を秘めているリーガMXの今後の発展にも注目だ。
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