無念の敗退 メキシコサッカーが抱える課題
エクアドルとのコパ・アメリカグループステージ第3戦。
この試合も課題の決定力不足に悩まされた。
結果はスコアレスドローで、メキシコのグループステージ敗退が決定。
グループステージの3試合で、わずか1得点、1勝1敗1分けと、期待されていた結果とならず、物足りない大会となった。
現地では、「史上最弱の代表チーム」といった声も。
ワールドカップ出場17回、北中米を代表する強豪国メキシコが「史上最弱」と呼ばれる原因は何なのか。
今回は、メキシコサッカーが置かれている状況や課題を取り上げる。
監督・選手・協会に問われる責任
今大会の屈辱的な敗退に、現場に対してだけでなく、サッカー協会への責任を問う声も挙がっている。
解説者のルイス・ガルシア氏は、大会を振り返り、
とコメント。
協会への責任が大きいことを強調した。
SNSでは、ガルシア氏の意見と同じものも見られた。
ただ、現時点で協会のスタッフの進退に関する報道はない。このまま続投というのが有力だろう。
その協会は、ロサノ監督を続投させる方針。
チームの再建を託し、26年W杯まで戦うようだ。
コーチングスタッフの変更もなく、今後は今大会の経験を活かし、改善に取り組んでいくとしている。
選手や監督だけでなく、協会への責任も問われているのが現状となっているメキシコサッカー。
今後、協会の動きも代表チームの再建のカギとなるかもしれない。
海外組が少ない理由
ウーゴ・サンチェス氏とは、メキシコのレジェンド。今は解説者として活躍しており、母国のサッカーについて、このように指摘した。
現地メディアの他の記事にも、海外組の少なさは大きな課題だと書かれていた。
これは、日本でも以前取り上げられたことがある。(その記事はこちら↓)
この記事にも言及されているように、ヨーロッパ進出の選手が少ない理由は、リーガMXの待遇の良さである。
他の中南米のリーグに比べ、年俸や移籍金が高く、国内リーグで完結できるのだ。
日本では若手選手の海外移籍が頻繁に行われている。それはJリーグに年俸など契約に上限があり、海外クラブが大きな移籍金や年俸をかけずに獲得できることが要因の1つとして考えられる。
一方メキシコでは、日本のように年俸などの上限がない。
能力が高い若手選手に対して、早い段階で年俸や移籍金が高く設定される。これが海外クラブとの移籍交渉に影響しているという。
移籍はクラブ・アメリカやモンテレイといった国内の強豪クラブへのものが多い。
国内で大きなお金が動いているのは、クラブ運営やスポンサー、また根付いたサッカー文化があるからこそだと捉えることができる。
実際に、現時点のクラブの市場価値は、北中米のトップ10のうち、6クラブがメキシコ。わずかであるが、著しい成長を見せるMLSを上回っている。
それにより、中南米の代表クラスの選手も多く在籍するなど、競争力も高い。これは、メキシコサッカーがこれまで築いてきたものの現れだと言えるだろう。
各クラブの市場価値↓
とはいえ、世界最高峰のヨーロッパでのリーグでプレーする選手が少ないことは、世界で戦っていく上で、弱点とならざるを得ない。
国内の高い競争力と根付いた文化を活かしつつ、選手の海外進出を活発にさせるという複雑な課題を克服していかなければならないのが現状である。
このように、メキシコ人選手の海外組の少なさは、国内サッカーの文化が形成されているからこその問題となっているのだ。
世代交代
今大会、メキシコ代表は世代交代を試みた。
これまで代表チームを引っ張ってきたGKのオチョアやMFのエクトル・エレラ、FWのヘンリー、ラウールは選出されなかった。
彼らの代わりに代表入りした選手の多くは20代。
今大会の選手の平均年齢は、カタールW杯の時から2.5歳下がった。
現地メディアもこの特徴に触れている。
一見、若返りが進んでいると思われるが、「世代交代をするタイミングでなかった」「コパ・アメリカは若手の経験を積むことが目的でない」と厳しい指摘が多かったことも事実。
この話題に対し、昨シーズンポルトガル1部のFCポルトでプレーしたサンチェスは、このようにコメントした。
また、若返りを図るチームに関して、
サンチェスのコメントからも読み取れるように、意地とプライドをぶつけ合った国際大会の舞台は、若い選手の大きな経験になったことだろう。それと同時に、新しい世代の選手の選出によって、代表内に、より良い競争が生まれることにも期待が持てる。
このコメントが紹介された記事の見出しは、
”Jorge Sánchez valora la Copa América, pero recuerda "Nuestra tirada es el Mundial"”
「ホルヘ・サンチェスはコパ・アメリカの価値を重視すると同時に『焦点はW杯』と回想した」
協会や首脳陣、選手の照準は、あくまでも自国開催の26年W杯。
世代交代は、否定的な意見もあるが、W杯に向けて、避けて通れない決断であったに違いない。
まさかの敗退によって、改めて様々な課題が洗い出されたメキシコサッカー。
”史上最弱の代表”をどのように建て直していくのか。
そして、2年後はどんな形でW杯を迎えるのか。
代表だけでなく、協会、海外組、国内リーグ…と、メキシコサッカー界全体のレベルアップが求められている。