#17 2023年のBlurに興奮が止まらない話 Part 2
初期のキャリアを振り返ってたらエモめになっちゃったPart 1はこちらから
てなわけで、あまりにもサイコーな新曲への興奮のままにPart 1をアップ、その勢いに任せて気づいたらサマーソニック大阪のチケットを購入してしまった不肖ワタクシ、偉そうにも”Part2に続く”とか言いながら3週間以上も放置していた罪の意識にも苛まれながら、BritPopの喧騒と”The Great Escape"を経たBlurのその後のキャリアを振り返ってみたいと思います。
Blurと"Beetlebum""Song 2"
華々しいポップスターとして君臨した時代もそう長くは続かないもので、あまりに騒がしい周囲にバンド内の亀裂も囁かれていた1997年、Radioheadの”OK Computer“がリリースされたあの象徴的な年に、Blurはこれまでの英国主義的なアプローチとは全く違う、ザラザラしたギターサウンドとUSインディの手触りを持ったこの曲をリードシングルに、セルフタイトルの”Blur"をリリースしました。
これまではヴォーカリストのデーモンに注目が集まりがちだったのですが、この辺りから特にPavementあたりのUSインディに傾倒していたというギタリストのグレアムのテイストがサウンドにもはっきり表れるようになっていきました。そしてそれが最もわかりやすく表れているのが、今やBlurの代表曲となってるこちらではないでしょうか。グランジ的な静と動のダイナミズムを生かした"Song2"、最初に聴いた時はホントにBlurの曲?って驚きでしたからね。
13と"Tender" "Coffee & TV"
セルフタイトルの前作の路線を推し進めるように、その2年後にリリースされたのがこちらの"13"、この頃にはもう、サウンド面ではグレアムがメインになってたとも言われてますね。ゴスペルのように”Come on, Get Through it"とリフレインするこのマジ名曲。ああ素晴らしい。
ちなみに自分史的には、この年初めてBlurのライブを体験することになりました。それが初めて苗場スキー場に場所を移して行われたフジロック'99だったってのも思い出深いものです。ブリティッシュスーツやフレッドペリーじゃなく、タンクトップとベースボールキャップで登場したデーモンの姿(トップの写真参照)に、なんとも驚いたと同時にそのサウンドとスタイルの変化を目の当たりにしたような、そんな気になった記憶があります。
さらにはこの”Coffee & TV"では、ついにグレアムがメインボーカルを取っています。こちらは特に大きな盛り上がりもなくサラッとした耳障りの曲ですが、ポップセンスはさすがですよね。そしてこのMV、後に映画"Sing"を手掛けることになるクリエイターが手がてたってのがなんともうなづける、サイコーに可愛くて切ない、今も大好きなやつです。
ソロ活動と"Think Tank"、そして活動休止
13とワールドツアーの後、デーモンはGorillazを始動、ビートミュージックやオリエンタルルーツな音楽にどんどん傾倒していく一方で、グレアムはソロ名義でアルバムをリリース、さらにLo-Fiなギターサウンドを追求していきます。いや、どちらも素晴らしいんですけど、だんだんと2人の間の距離は遠くなっていった感じで、結果的には2003年の”Think Tank"をリリースする頃には、グレアムが脱退してしまうというショッキングなニュースが。そこから、活動するとかしないとか、新しいギタリストを加入させるとか、いろんなニュースを聞きましたが、目立った活動は無くなってしまいます。
Think Tank収録の"Out of Time"。こちらもいい曲なんです。
もちろんGorillazも、ブラーとは違うビート重視のサウンドで、いろんな驚きのコラボをやってますが、何というか、デーモンっぽいポップさがあってずっといいんですよね。
活動再開と”Under the Westway"
で、2003年を境に脱退したグレアムとデーモンは全然別の道を歩んでたんですが、2008年頃から再度グレアムも参加した形でライブ活動を再開し始めるんですよね。フェスのヘッドライナーやウェンブリーアリーナでのライブ、それからドキュメンタリーフィルムの公開とか、そうした活動が行われていった流れでPart 1で紹介した”Under the westway"がドロップされたのがもうたまらなくて。デーモンとグレアム、これまで何度もいろんなバンドで繰り返されてきた、方向性の違いからの別れを経て、2人がまた揃って、ビルの屋上で、あのミッドテンポの名曲を演奏する日が来るなんて、というのがPart 1で紹介したあの興奮と感動の背景なんですよね。ちょうどロンドンでオリンピックが開催された2012年、その閉会式に合わせて書き下ろされたこの曲、やっぱり最高です。
”The Magic Whip”とその後
その後のワールドツアーで2013年には来日を果たし(この時確か武道館で、チケット争奪戦に負けて行けなかったんじゃなかったかな)、しかもそのツアー中に滞在した香港であっという間に録音されたっていう”The Magic Whip"というアルバムを2015年にリリースしたりしていましたが、その後また活動休止状態に突入してしまいました。
ちなみにこの”The Magic Whip"ってアルバム、この頃にはもう昔ながらのファンだけが聴いてるみたいな位置付けのアルバムになってんじゃないかと思いますが、実はかなりの力作なんですよ。往年のポップセンスが炸裂してるこの曲とか。
2023年のBlur
と、考えてみたら30年を超えるキャリアを経て、フレッドペリーのポロシャツを着込んでBritPopの旗手となってた頃から、ベースボールキャップを被ってザラザラしたUSインディ譲りのロウなギターサウンドを奏でてた"Blur" 〜 "13"期を経て、最近ではまたポロシャツにジャケットを着込んでステージに立ってるデーモンが、グレアムが、そしてBlurの4人が、どんなステージを見せてくれるのか… 振り返ってきて今気づきましたが、こんなに好きだとか偉そーに言ってる割には、ライブは'99の苗場で一回体験したのみだったのも驚きで。Blurを聴き始めた頃はまだ高校生でしたが、今じゃ自分もデーモンやグレアムと同じように歳を重ね、それなりにウェイトも増えてはいて、今Blurの音楽を生で聴いた自分がどんな気持ちになるのかが楽しみでならない、そんな気分なんです。
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