日本料理「一灯」料理長 長田勇久の味わうゼミ noteレポート_2022年5月18日
味わうゼミ、前回はオリエンテーションとして、スコーレメイトのみなさんやゼミ長の長田さん、そして「海の精」川内啓以さん、運営委員のメンバーも参加させていただき、みんなで自己紹介や「味わう」と聞いて思うことをざっくばらんにお話しました。
そのときのようすはこちらから。
今回からは、いよいよ本格的なゼミがはじまります。
これから3か月間、みんなで「味わう」について研究していくために、まずは「味わうとは何か」について、メカニズムや心理学などの視点から考えることに。
この日は、東北大学教授で「味覚教育」や「香りや見た目と味の関係性」について研究されている坂井信之さんに案内人として参加していただきました。
坂井さんが、はじめに教えてくれたのは「味覚」「味」「味わいの”あじ”」について。それぞれの定義について、心理学や基礎医学の観点から、わかりやすく教えてくれました。
普段何気なく感じている味わいも、「外観」「味」「におい」など、いろいろな要素が絡み合っていると考えると、「今感じているこの味わいは、どの要素が関わっているんだろう」と頭の中でイメージが膨らんできます。
でもなぜ視覚や嗅覚など、口の中で受けていない刺激を、まるでそこで感じているように思ってしまうのでしょうか?それは「注意」の能力が関係するそう。スコーレメイトのみなさんと、映像を通した「注意力」を調べる実験で体感したのですが、ある一点に注意を集中していると、他で起こっていた大きな変化に気づいてなかったのです。
坂井さんいわく、
「気づかないことは、ダメなことではありません。注意の向け方は人によってそれぞれ違うけれど、どれが間違いというのはない。ものを敏感に捉えることではなく、総合的に捉えたことをどう表現するかが重要なんです」
「味わい」を考えていく上で、大切なことに触れた気がします。
最後に、坂井さん、長田さんが「味わう」にどう向き合ってきたのかを聞いてみました。
坂井さん
じぶんにとって味わうことは、生きがいでもあって、食べるときに味、においについて細かく考えることはせずに、リラックスした状態でたのしく食べることを大切にしています。そうすると、その時はおいしいと感じていなくても、日が経ってあのとき食べたものは「あぁ、おいしかったな」と思い返せるんですよ。
たのしいからおいしいのか。おいしいからたのしいのか。坂井さんの話を聴いてまた疑問が湧いてきましたが、「味わえる時間を大切にする」というのはすべてに通じますね。
長田さん
じぶんは料理人の立場として、これまでいろんなひとの「味わう」場面に向き合っています。お店でお客様が食べているとき。じぶんの家で食事をするとき。知り合いの料理人と会っても「味わい」の話になることがあります。そうしたいろんな場面を見ていると、食事の時間のたのしみ方や味の好みなど、味わい方は人それぞれあって、どれも間違っていないと思いますね。
味わい方、たのしみ方も人それぞれ。いろんな研究の仕方がありそうです。
スコーレメイトのみなさんは、ゼミを通して「味わう」について研究を進めていきます。
どのような研究テーマでふかぼっていくのでしょうか。
(フードスコーレ運営委員/門之園)