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フードスコープ レポート#1(アイスクリーム)

はじめまして。フードスコーレのインターン生であり、フードスコープにはメイトとして参加している山﨑です。食べることはもともと好きでしたが、大学のフードコンシャスネス論の授業がきっかけで食に興味を持ち、食についての色々な価値観を学びたいと思うようになりました。そんな中で雑誌からフードスコーレを見つけ、今年の3月からはインターン生として関わらせていただいております。

フードスコープとは

foodscoop(フードスコープ)は、coops(協同組合)、scoop(発見する)、scope(活動の機会)の意味を合わせた造語です。食べてみたいという欲を大切に、それをどのように手に入れるかを発見し、フードスコープに関わるみんなと思考し活動することで、消費に対する新しい価値観を世の中に提案していきます。

素材や加工に関わる案内人の方からのお話を伺いながら、わたしたちの食べたいものを実現することは可能なのか、ただ食卓に運ばれてくるのを待つのではなく、一緒に食卓まで運ぶことを自分自身で考えアクションする場所がこのフードスコープです。1年を通して活動するこのプログラムでは、3か月を一区切りとして全部で3つの加工食品をテーマに進行していきます。

そしていよいよ先日から、第1弾の「アイスクリームのトレーサビリティ」がスタートしました。第1弾で作るものはもちろんアイスクリーム!

まずは、メイトと案内人の自己紹介でお互いを知るところから始まりました。全国から参加しているメイト、原材料を提供してくださる案内人、それを加工してくれる案内人、それぞれ異なるフィールドですがアイスクリームというひとつの食べ物で繋がっていることを実感した1時間半でした。今回は、フードスコープ第1弾案内人である3人のご紹介と、初回を終えて感じたことを振り返っていきます。

第1弾の案内人のみなさんをご紹介

なかほら牧場 牧場長 牧原 亨さん
なかほら牧場の魅力は、日本では珍しい牛舎を持たない山地(やまち)酪農で牛を飼育していること。牛は24時間365日自然の中で過ごし、自然交配、自然分娩を徹底しているそうです。中でも特徴的なのが生後2か月の母乳保育。母子が一緒に過ごすことで、仔牛が母牛の愛情を受けて成長することができるそうです。残念ながらこれは当たり前の光景ではなく、日本の牧場では生後すぐに母子を引き離して飼育することがほとんどだそうです。

そんなストレスフリーな環境でのびのびと暮らしている牛たちのお乳は、色も味も他とは違います。牛乳と聞いて連想する色は白ですが、なかほら牧場の牛乳は乳白色。これは牛たちの食べる青草(野芝)に含まれるβカロテンによるもので、なかほら牧場のバターは黄色味が強いのが特徴的です。

わたしが感じたこと
なかほら牧場の取り組みを知ると同時に、もともと私たちが飲んでいる牛乳は、生まれてきた仔牛のためのお乳をおすそ分けしてもらっていたんだと改めて気づかされました。それを踏まえて、母牛と仔牛が一緒に過ごすという環境が当たり前ではなくなってしまった日本の酪農の実態を知りショックでした。命をいただかない数少ない食材である牛乳。これからはそのありがたみにもっと感謝して大事にいただきたいです。

Co・En corporation 武末 克久さん
品質はもちろん、それが作られる背景を大切にしているのが「Co・En corporation」のアグロフォレストリーバニラです。

クローブやパイナップル、レモングラスなどの様々な植物が育つ森の中でそのバニラは育ちます。加えて、生産者の方と直接つながっていることが武末さんのこだわりで、「規模の拡大よりも、持続可能性のある農業」を目指す協同組合の方をパートナーにマダガスカルから日本にバニラを届けています。アグロフォレストリーを広げることでマダガスカルの魅力を守りつつ、支援ではなく彼らの活動に共感する「応援」を増やすために、バニラを通して日本とマダガスカルをつなぐ活動をしています。

また、バニラは花を受粉してから半年後に収穫し、その後半年かけて水分を飛ばし安定させるため約1年かけてようやく完成するのだそうです。

わたしが感じたこと
生産者の方と直接かかわり合うなかで、武末さんと現地の方との間にアグロフォレストリーを広げる仲間としての強い信頼関係が構築されているのを感じました。バニラができるまでの工程を知ったことで、バニラを育てるだけでなく時間をかけて丁寧に加工している人の存在を知り、さらに貴重な素材だと再認識できました。一つの素材を通して地球の反対側の世界と繋がることができるのはとてもわくわくします。


WAT Inc.Marked 樋口 茂寛さん

Markedは「Small is beautiful.(大は小を兼ねない)」をキーワードに食料品店、ベーカリー、カフェ、アイスクリーム店という様々な顔を持つお店です。なかでもアイスクリームは、伝統的なフレーバーをさらに深堀りおいしさを追求する「CLASSIC」、季節の果物や野菜など大地の香りを閉じ込めた「EARTH」、初めて出会うような斬新な組み合わせで記憶に残る味わいの「WOW!」の3つのカテゴリーに分かれています。着色料や香料を一切使用しないことで、素材本来の色や味わいをダイレクトに感じることができるのだそうです。

わたしが感じたこと
Markedさんが軸としている「その素材を活かすには?」という素材出発の視点は、まさに今回アイスクリームを作るうえで私が最も大事にしたい視点だと感じました。旬の素材を扱うからこそスピード感のある商品開発が求められますが、それでも一切味には妥協しない樋口さんの姿勢がプロ意識を感じられてとてもかっこよかったです。アイスクリームから季節や大地の恵みを感じることができる「EARTH」は、なかほら牧場の四季で味わいが異なるミルクを存分に生かすことができるのではないでしょうか!

どんなアイスクリームを目指すか…

ー「らしさ」を取り払うー
みなさんのお話を聴いていて、万人受けするような「アイスクリームらしさ」よりもその素材の力を最大限に感じることができる、挑戦的なアイスクリームが作りたいと思いました。

ミルクアイスと聞くと、濃厚でミルク感のあるまろやかな味をイメージしていました。しかし、なかほら牧場の牛乳は、牛乳が苦手な人でも受け入れられるさっぱりとした後味が特徴です。いい意味で牛乳っぽくないさわやかな口当たりを活かすためには、従来の「ミルクらしさ」は取り払って「なかほら牧場らしさ」という新しい視点で考えていくことも必要だと思います。

牛の飼育環境やバニラを栽培、加工している人の想いを知ったことで、それぞれの素材に一気に愛着がわき、同時においしいアイスクリームにすることへの使命感のようなものも抱きました。

素材や製造についての知識だけではなく、常識を疑い新しい価値観にも出会うことができるのもこのフードスコープの醍醐味だと分かりました。

次回に向けて

食感はなめらか? さらさら? バニラは後がけ? 後味はすっきり? こってり? 卵は入れる? 美味しいアイスクリームの条件は何かを考えるだけで、こんなにも選択肢が出てきます。

これまで好きな食べ物と聞かれると必ずアイスクリームと答えてきましたが、好きなアイスクリームはあっても「どんなアイスクリームが食べたいか」を考えたことはありませんでした。

食べた時の食感を想像したりして自分の嗜好に立ち返った時間は予想以上に頭を使いましたが、とても興味深かったです。次回からはさらに具体的なアイスクリームのイメージを練っていきます。それぞれが大切にしたいポイントとその理由に着目しながら、フードスコープらしいアイスクリームを模索したいです。いったいどんなアイスクリームが出来上がるのか、わくわくが止まりません。

(書き手:山﨑柊果)


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