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北海道ホタテの新ルートを開拓。「中国禁輸のピンチをなんとかしたい」から始まったプロジェクト。 ベトナム加工から量販店へ販売するまでを振り返って

「北海道に滞留しているホタテを、中国以外の海外で加工して国内消費できないか?」

フーディソンバイヤーが言い出しっぺとなり動き出した「北海道原料ベトナム加工ホタテ」プロジェクト。

発端となったのは、2023年8月24日に開始したALPS処理水の海洋放出でした。それに伴って中国が日本産水産物の輸入を停止すると発表し、国産ホタテが大きな打撃になったと連日メディアで報道されていました。

禁輸の影響によって国産ホタテに何が起きたのか? 私たちがどうやって国産ホタテの海外加工を進めてきたのか?
今回は、北海道原料ベトナム加工ホタテプロジェクト発足から今に至るまでの私たちの取り組みを振り返ってみます。


中国禁輸でなぜホタテが問題になったの?

ホタテの漁獲量の日本一は北海道で、毎年60万トンほどが水揚げされています。そのホタテの多くは、中国や香港、台湾などアジア圏に輸出されていました。また統計上には表れないですが、中国で再加工されて欧米へと輸出されたホタテも多くあります。

海面漁業生産統計調査(農林水産省)

しかし、ALPS処理水放出後の中国禁輸の影響によって、国産ホタテの中国への輸出ルートも停止しました。

ホタテは様々な製品がありますが、特に「両貝ホタテ」は95%を中国に輸出していたため、多くの在庫を抱えることに。中国禁輸措置が発表された2023年8月24日から同年12月頃にかけて、北海道内に少なくとも数千トンの在庫が積み上がっているとの話もありました。
この滞留している両貝ホタテをどうするか?ということが、日本では大きな課題になっていました。

※在庫が積み上がっていたのは2023年12月頃までで、現在は国内加工も進み、滞留していたホタテは少なくなってきています。

北海道産ほたての輸出拡大に係る 取組について(北海道漁業協同組合連合会)


北海道産 天然両貝ホタテ

両貝ホタテの新ルートを開拓する難しさ

両貝ホタテに残された道は「中国以外の国に輸出する」「国内で消費をする」のどちらかになりますが、簡単なことではありませんでした。

中国以外の国に輸出する難しさ

海外に日本の食品を輸出する際は、輸入する側の食品安全の基準に合わせる必要があります。欧州で売る場合は、食品衛生管理認証(いわゆるEU向けHACCP)の認可を取得した施設からでないと輸出ができません。取得している日本の水産加工場はまだ少ないです。

国内で消費する難しさ

両貝ホタテは、貝毒に危険性があるためそのまま売ることはできません。「ウロ取り(中腸腺除去)」という加工が必要です。ウロ取りして売ればいいのでは?となりますが、水産業界は慢性的な人手不足で、加工能力が不足しています。

中国以外の海外で加工して国内消費できないか?

そこで、困っている漁業者の役に立てないか?とフーディソンバイヤーが思案して至ったのが「中国以外の海外で加工をして、国内消費する」という取り組みです。

国産ホタテの海外加工は、現在は東南アジアやメキシコで動きつつありますが、私たちのプロジェクト発足当初(2023年11月頃)は、まだそれが実現に至っていませんでした。

中国以外の海外で加工をするといっても、私たちだけでは促すことはできません。仲間が必要でした。
そこでバイヤーはかねてから繋がりのある輸出商社を経営しているオーシャンロードさんへ声をかけ、力をお借りすることに。北海道・函館市の水産卸エビス商会さんから、滞留しているホタテをオーシャンロードさんが仕入れて海外へ輸出。海外で加工されたホタテを、私たちが国内で販売するというスキームでプロジェクトが立ち上がりました。

オーシャンロードさんとバイヤーは、ベトナムに目をつけました。

ベトナムの人件費はプロジェクト発足当初は日本の2~3割ほどで、目をつけたベトナムの工場には1,000人近い作業員が働いています。
日本の水産業は慢性的な人手不足のため、国内で加工人材を確保して進めるには、時間とお金がかかります。ベトナムの生産能力の高い工場と組むことでスピーディに消費できると考えました。

また、ベトナムは欧米へ輸出している水産加工場も多く「EUHACCP、対米HACCP」を取得しているので、ゆくゆくは北海道産ベトナム加工ホタテとして、欧米に輸出できるという期待も持てます。

約23万個のホタテをベトナムへ輸出、加工へ

2023年12月。北海道からベトナムへ23トン(約23万個)の両貝ホタテを船で輸送し、プロジェクトメンバーたちは、ベトナムへの到着時期に合わせて現地の工場へ出向きました。

プロジェクトメンバー各社の担当は専門領域がそれぞれ異なり、違った加工ノウハウをもっています。それぞれが知恵を出し合い、新しい加工工程を確立。日本とベトナムの加工ノウハウを活かして4種類の商品(貝柱、貝柱開き、片貝、貝ヒモ)が出来上がりました。

ベトナム現地にて加工を行った方々


ベトナム現地にて殻むきを行った北海道産ホタテ
貝柱、貝柱開き、片貝、貝ヒモの4種

スーパー「ベイシア」116店舗と共同でホタテ応援フェアがスタート

いよいよ、ベトナムで殻むき加工をした北海道産ホタテが国内へ到着し、消費者に向けて販売へ。販売については私たちが運営する魚ポチやサカナバッカだけでなく、スーパーマーケットのベイシアさんにも協力いただきました。ベイシアさんは、中国による日本産水産物禁輸をきっかけにホタテ支援企画を独自で行ってきており「ホタテをはじめ日本の水産物が注目されて欲しい」思いで今回のプロジェクトに賛同いただきました。本当にありがとうございます。

そしてベイシアさん116店舗と共同で、さかなの日の4月3日( 水)〜 4月7日(日)の 5日間「ホタテ応援フェア」を実施しました。

【ホタテ応援フェアについて】東京電力ホールディングス株式会社と協業し、国産ホタテを販売促進するフェアを複数回にわたり実施。関連リリースは下記よりご覧いただけます。
(2023年11月)サカナバッカ『ホタテ応援フェア』を開始。中国の禁輸措置で行き場を失ったホタテを消費者向けに販売促進
(2024年2月)フーディソン、ベトナムで加工した北海道産ホタテの販売開始。スーパー「ベイシア」116店舗と共同でホタテ応援フェアもスタート!

ベトナム加工ホタテの開発背景を伝えるPOPを設置し、販売促進を行った


フェアは大盛況。好評の声、続々と。メディアでも話題に

ベイシアで行われたホタテ応援フェアの売り場

ホタテ応援フェアでは、約2万6千個ものホタテが売れて大盛況。フェアを終えて、ベイシアバイヤーさんから嬉しいコメントをいただきました。

ベイシアバイヤーのコメント
ホタテに関しては、中国の禁輸に大きく影響を受けて、この一年で大きく情勢が変化してしまいました。また現在も東南アジアやアメリカ方面など新規の販路拡大が進んでいます。そんな中、今回のフーディソン様の取り組みは、この不透明な状況下でのチャレンジャーとして先駆けであり、スピード感を持って挑戦した結果、見事成功に繋がった、という素晴らしいものだと感じております。我々ベイシアとしては、その取り組みへの想いを消費者の皆様に伝えることが役割と感じました。
今回、さかなの日を通じてベトナム加工のホタテをお客様に届けることが出来たことで、お客様からも数多くのうれしいお声を頂いております。今後もこのような取り組みを川上の調達、製造から川下の販売まで連携を取りながら取り組んでいくことで、お客様へのご提供だけではなく、日本の水産業、漁業者を少しでも勇気づけ、盛り上げていければと思っております。

そして、お客様や店舗スタッフから応援の声をいただきました。

ベイシアお客様、店舗スタッフのコメント
北海道の森町出身で、ホタテが余っていると聞いている。ベイシアでこうした取り組みをやってくれることは本当にうれしい。(50代女性来店客・栃木県大田原店)

お客様は販促 POPを見て足を止めている。バーベキューで買っていかれる方もおられた。産地が北海道である点や時期にも合っているため、商品を手に取るお客様が多い印象。(埼玉県ひだかモール店)

昨年、中国のホタテ輸入停止のニュースをみて協力したいと個人的に思っていたこともあり、当社での『ホタテ応援隊』の企画は消費を促すことに繋がるので、とても良いと思う。ホタテをコーナー化することは、私のような意識を持つお客様が、購買を通じて支援できる場になるので、一過性のキャンペーンではなく継続して実施していくことが大切だと感じている。(栃木県大田原店)

粒も大きく新鮮さがあり、美味しそうなホタテだった。こうした良い商品をお客様に展開できるのはとても良いと感じる。(群馬県前橋みなみモール店)

生食用貝柱の粒が大きくて非常に食べ応えがある商品だった。価格も安くてお買い得という印象だった。(長野県あづみの堀金店)

また、北海道原料ベトナム加工ホタテのプロジェクトは、日経新聞や水産系専門紙でも大きく取り上げられ、注目をされました。

今後の動きについて

ベトナム加工ホタテの現在の仕入れ価格は、輸送費を含めると国内加工と同じくらいといった状況です。
直近では他社も海外加工に取り組み、ホタテの新ルートを開拓しています。海外の人手を借りて、さらにホタテの流通が進めば、結果相場も安定し、多くの人が手に取りやすい状況になるものと思います。

私たちも引き続き、北海道原料のベトナム加工は継続して販売していく方針です。今後、大手量販店や回転寿司などへの流通が広がっていくように取り組んでいきたいと思います。

今回の取り組みを通じて、水産流通はチームプレイだということを改めて感じています。「中国禁輸によってピンチとなった国産ホタテなんとかしたい!」という私たちの思いに共感してくださった流通に関わるプレイヤーさんやベイシアさん、メディアの皆さまと共に実現できたプロジェクトです。
まだプロジェクトは続きますので、引き続きフーディソンバリューでもある「チームでやろう Team Means More」を大切に走り続けてまいります。




最後までお読みいただきありがとうございます。

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