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【イベント登壇レポート】丘漁師会議~地域の海と消費地をもっとつなぐ~

こんにちは。フーディソンnote編集部です。

1月30日(火)、丘漁師組合(組合長・水谷岳史)主催するトークイベント丘漁師会議~地域の海と消費地をもっとつなぐ~にCEO山本がゲストとして登壇しました。本トークイベントでは、生産者から仲卸業者、飲食業者など「海から飲食店へ水産物をつなぐ」プロフェッショナルたちや大学教授、メディア関係者がゲストとして集まり、それぞれの立場から視点から現場で起こっていることや課題などを共有しあい、どうやって繋がりを深めていくかを考える会となりました。

今回はトークイベントの一部をご紹介したいと思います。


イベントについて

【主催】
丘漁師組合(組合長・水谷岳史)
【共催】
株式会社歌行燈
株式会社On-Co

【ゲスト】
橋本純(鯛養殖漁師)
横井健祐(歌行燈 代表取締役社長)
杉野希都(NHKディレクター)
松井隆宏(東京海洋大学 准教授)
見市哲也(築地音幸、常務取締役)
山本徹(株式会社フーディソン 代表取締CEO社長)
三重県庁 フードイノベーション課
三重県庁 水産振興課 水産流通班

【URL】
https://peatix.com/event/3811144

今、現場では何が起きている?

本トークイベントでは「今、現場で起きていること」をゲストたちがそれぞれの立場で共有し合いました。共通の課題としてあがったのは、人材不足の問題。三重県の漁師橋本さんは「魚ってスーパーの鮮魚コーナーに行けば沢山あるイメージだけど、捕っている漁師さんは実に少ない。そして60歳以上の高齢者漁師が多い。この先、魚が食べられなくなるんじゃないか。」と漁師の減少によって魚食も減っていく未来に危機感を持たれていました。

一方、豊洲の鮮魚仲卸を営む見市さんは、後継者問題に頭を悩ませています。現在は従業員20人ほどで平均年齢は38歳。比較的若い方ではありますが、市場は深夜勤務がつきもの。働く時間帯がきついという理由で3〜4年で辞めてしまう人が多いと言います。「新しいことに取り組もうする志高き若者もいる。しかし業界に入ってきても古い価値観や慣習から、打ち破ることがしづらい現状。」という意見はお二人とも共通しており、今後はこうした若者のモチベーションをいかに維持し、未来に繋げていくのかが大切だと話をされていました。

私たちフーディソンでも飲食店のお客様へ梱包・出荷する作業は深夜に行われます。ゲストの皆さんと同じく、このポジションの人材獲得には大変苦労してきました。そのため少ない人数でも業務が回せるように効率化に力をいれています。山本からは「労働力減少トレンドが続く社会において、労働集約的な業務をとにかく誰でもできるシンプルな仕事に落とし込んでいくことが、今後もすごく重要になってくる。」とDX化の事例を紹介しました。

また今現場で起こっていることとして、低利用魚の仕入れ促進をあげていたのは、三重県で飲食店「歌行燈(うたあんどん)」を経営する横井さん。その背景には、仕入れ価格の高騰や海の環境の変化から、この魚種のこの部分を安定的に仕入れたいという飲食店ならではニーズがあるにも関わらず、仕入れができなくなったという課題がありました。「どう新しい食材を見つけていくか。飲食店も臨機応変に対応していかなければならない。今まで食べていなかったけど、調理次第では食べられる部位も使っていく必要が出てくる。」と言います。実際に歌行燈さんでは三重県の低利用魚のグランドメニュー化にチャレンジされています。

一方で、普段見聞きしない低利用魚を一般消費者に食べてもらうのは難しさもあります。

NHKディレクター杉野さんは、初めての魚でも一般消費者に買ってもらえることを実証している愛知県の人気スーパーを紹介しました。「お魚を説明できるプロフェッショナルを売り場に配置させ、来店客一人ひとりにちゃんと説明すれば、見聞きしない魚もよく売れている。魚離れというけど、消して魚離れではなく、魚が食べたいが、アクセスする方法が分からないのではないか。」と伝え、取材先のスーパーを放映後は「行ってみたい」という声が多かったと、反響の大きさを教えていただきました。

また、東京海洋大学の松井先生は「先ほど歌行燈さんの話にもあったが、飲食店さんは “仕入れ価格が上がった" と言うが、漁業者さん“魚の価格は下がっている"とおそらく言うでしょう。矛盾していますが、これは流通コストの上昇や国内天然魚の減少、輸入や養殖が増えているなど複雑な理由があります。」と市場の変化について話をされました。飲食店がこれまでと同じような価格で、同じような国内天然魚を仕入れるのは難しくなってきており、そういった中だと歌行燈さんがやっているように低利用魚も使っていく取り組みが必要になってくるとの見解を述べていました。

今回MCを務めていた丘漁師組合水谷さんは「確かに全国の魚が次の日に豊洲に届くというは、すごい仕組み。それに合わなくなってくると、どこかでコストかかってくるはず。例えば今まで20kあったものが10kだけになってしまうと1尾あたりの送料が高くなる。構造の変化でサプライチェーンが最適化されなくなってきた。」と松井先生の見解に対して納得した様子でコメントされました。

アナログな業界を変えていくためには?

本トークイベントでも共通の課題としてあがった人手不足問題。水産業界全体としても人手不足問題の解消に向けて、DXやスマート水産業というワードをよく見聞きするようになりました。しかしながら現場でDX化するのは簡単ではないという声が。実際にどんなことがアナログなのか。

漁師橋本さんは、毎日大量に届くメールのチェック対応ができていないと言います。通常の日で100件くらい、年末だと一日800件以上も届くとのことで「メールで連絡がくると困ってしまう。アナログだけれども電話やFax、ショートメールだと助かる。」と言います。また、豊洲仲卸の見市さんは、目方(重量)について「例えば、何百〜何千もの鮮魚が日々届くが、計量器に重たい魚を手でのせて、目方を量って、紙に書いて、という作業がある。なんとも非生産性。」 とアナログ作業の現状を伝えていました。

フーディソンは創業以降、水産業界のDX化を試行錯誤しながら進めてきました。そのなかで山本から「水産って身近なようで、水産流通は身近じゃない問題がある。どういう仕組みなのか知られていない。」という気づきを発信しました。「僕たちの取り組みは、他の産業でやっている事例をテクノロジーを活用して水産に当てはめてみようということ。業界自体が依然としてアナログな業務が多いのは確か。それをを解決する方法はきっとあるが、知見をもってる業界外の人にとっては身近じゃないから問題自体を知りようがないのではないか。」と、水産流通に関わる人々同士は、生きている時間や場所の違いなどで繋がりづらいということを根本的な問題のひとつとしてあげました。

さいごに

本トークイベントは1時半程行われ、その一部を紹介させていただきました。海から私たちの「いただきます」までには、生産者から仲卸業者、飲食業者や量販店、鮮魚店など実に多くプロフェッショナルたちが働いています。一方でその流通プロセスには、関わる人たちが多く、生きている時間や場所もさまざまな故に、情報が繋がりづらい問題もあります。本トークイベントを通じて何か答えが見つかったわけではありませんが、まずはお互いの現状や課題を知ることで繋がりが深まり、そこから未来の持続可能な水産業を目指して、協力し合っていけるようなきっかけになるといいなと、今回参加した立場ではありますが、そう感じました。今後フーディソンでも、そういった繋がり深めることを目的とした場作りをぜひ行っていきたいと思います。

私たちと水産の未来を共につくる仲間も募集中です!