特許から読み取る食品メーカーの動向~各国機能性食品のトレンド
こんにちは!食品業界で働いております、らびです。
今回は、各食品メーカーが公開している機能性食品分野での"特許"を紹介します!
トータルで2-3分で読めると思いますが、読むのがめんどい方は、目次からまとめまで飛んでください。5秒で把握できます!
1. 機能性食品とは?
まずは機能性食品って何?というところから説明させていただきます。
一言で言えば、何らかの"機能性"(便通が良くなる、血糖値上昇を抑えるなど)を有している食品です。日本にある機能性食品に関する代表的な規定は「特定保健用食品(トクホ)」と「機能性表示食品」になります。
● 特定保健用食品(トクホ)とは・・・
健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められており、「コレステロール吸収を抑える」などの表示が許可されている食品。国が審査を行い、消費者庁長官が許可している。
● 機能性表示食品とは・・・
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品。販売前に安全性・機能性の根拠に関する情報は消費者庁長官へ届け出る事が必要だが、個別の許可を受けたものではない。
参考:トクホと機能性表示食品の違いとは?
(サントリー社HP, 2020.9.13現在)
つまり、何らかの機能性を有している食品のうち、消費者庁長官に個別許可を受けている食品が「トクホ」、そうでないものが「機能性表示食品」になります。
写真:トクホ認定食品には専用マークを使用できるが、機能性食品には特にマークは無い。
2. 米国における機能性食品
米国ではFDA(アメリカ食品医薬品局)が機能性食品に関する登録業務をおこなっています。
機能性表示に関しては、米国においても2パターンありまして・・・
1.FDAのお墨付き"ヘルスクレーム"(※NLEA, FDAMAなどを根拠に"疾病予防"、"疾病リスク低減"など深く踏み込んだヘルスクレームが可能)
2.企業責任の上に行う"構造/機能表示 (Structure/Function Claim)"(内容は※DSHEAに準拠したもの)
※NLEA: Nutrition Label Testing Services
※FDAMA: Food and Drug Administration Modernization Act
※DSHEA: Dietary Supplement Current Good Manufacturing Practices
1の表記に関しては、民間団体が「科学的根拠(エビデンス)のランク付け」を行っており、第三者機関によってしっかり監視されております(NMCD, NSHSRなど)。
2の表記に関しては、表示内容が事実であれば、製品販売後30日以内にFDAへ届け出るだけで表示可能です。
3. 各国の特許概要
さて、いよいよ本題。各国の食品メーカーが機能性食品分野で出している特許を見ていきましょう。
まず、このような機能性食品(FSMP: Foods for Special Medical Purposes)に関する分野で積極的に特許出願を行なっている国を見ていきましょう。
過去10年におけるFSMP分野で出願された特許の国別割合
米国(10%)
韓国(9%)
日本(8%)
中国(7%)
フランス(5%)
出典:Mintel
上位5か国で総数の39%を占めています。
肥満が深刻な米国、高齢化が深刻な韓国、日本、中国のFSMP分野への関心が高い事がうかがえます。
さて、では各国の食品メーカーは具体的に何に関する機能性で特許を出願しているのでしょうか?下記、解答を見る前に予想してみてください・・・
キーワードはやはり「高齢化」です。
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以下、解答。
2010年〜2020年の間にFSMP分野で出願された特許の分類内訳になります。
1位:肥満予防・防止など(21件)
2位:糖尿病予防・防止など(21件)
3位:認知機能維持(21件)
4位:骨健康・筋力維持(サルコペニア予防など)(18件)
5位:嚥下障害関連(12件)
出典:Mintel
肥満は全世代共通の悩みですが、2位以降を見てみると「加齢」による弊害予防が世界的な関心である事がわかります。これは日本の機能性食品を見ても同様です。
おもしろいのが4位の骨健康・筋力維持で、中国・米国ではサルコペニア(加齢による骨格筋量低下)に対する意識が高いようです。Mintel社のアンケートによれば、ボーンヘルス(骨の健康)やジョイントヘルス(関節健康)を日頃から意識している人が多くなっております。実際にボーンヘルス維持の為、各国様々な機能性ドリンク(栄養付加ミルク、プロテインドリンクなど)が発売されています。
HMB (β-ヒドロキシβ-メチルメチルぶちレート)付加粉末ミルク
(英国)
最後に、具体的な特許のタイトルとgoogle patent番号をいくつか下記に紹介しますので、興味があれば是非ご覧ください。
●骨健康・筋力維持(サルコペニア予防など)
・Composition for differentiating [a] muscle stem cell to [a] muscle cell, pharmaceutical composition for preventing or treating muscle weakness diseases, and health functional food composition for enhancing exercise capacity-comprising Lithospermum erythrorhizon extract (KR101944985B1)(韓国:Korea Food Research Institute)
・Muscle atrophy inhibitor and food medicine comprising the same (JP2017095409A)(日本:伊那食品工業(株))
・Method and composition for increasing muscle protein synthesis and/or functional strength in mammals(US20170173050A1)(米国:Lonza Group AG)
今後、Covid-19による世界的なトレンドとして、「免疫賦活」などを謳った商品が出てくるのは間違いないと思いますので、そのような製品を見かけた際はぜひ商品ラベルの「機能性表示」に着目して、購入判断をしてみてください。
まとめ
・日本の機能性食品には「特定保健用食品(トクホ)」と「機能性表示食品」の2種類があり、トクホは消費者庁長官による個別認可が必要。
・米国の機能性食品表示には「健康表示(ヘルスクレーム)」と「構造・機能表示 (Structure/Function Claim)」の2種類がある(前者は日本のトクホ、後者は日本の機能性表示に似ている)
・肥満、糖尿病、サルコペニア(加齢性骨格筋量低下)、認知健康などに関する特許が増えている
参考資料:
・Mintel.com
・くらしとバイオニュース:「食品の機能性表示のこれから~グローバルな視点で考える」(2014)