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メイラード反応の善と悪2(実際の現場より)

「前回の記事でメイラード反応は何かについて分かったけど、実際どんな時に使われているの?」

今回は、その疑問の答えと、メイラード反応で生成される“メラノイジン”についてお伝えします。

【調理でのメイラード反応一覧】

現場1:和食以外のだしを取るとき

フランス料理や中国料理など、玉ねぎやニンジンなど生の野菜、
そして鶏肉や豚骨(または魚)などの動物性の食材を最初に炒めたり、そして長時間煮込んだりして、メイラード反応を起こし、うま味成分を抽出します。

「じゃあ、和食のだしはメイラード反応をしていないのか?」というと、そうではありません。
和食の出し汁は、実は出し汁を取る前の“食材”がすでにメイラード反応を起こしています
それはかつお節。すでにメイラード反応が起こっている状態のものを削っています。
その理由もあり、和食の出し汁は“世界で最も短時間でとれる”と言われていますが、かつお節の工程を考慮すると、“世界で最も時間と手間がかかる”出し汁とも言えるかもしれません。

現場2:カレーの隠し味

カレーを作るとき、野菜をいためてメイラード反応を起こしてから水を入れて煮込んだりしますが、仕上げの“隠し味”にもメイラード反応が絡んでいたりします。
たとえば、カレーの仕上げに隠し味にコーヒーやチョコレートを入れる場合、両方ともすでにメイラード反応を経て出来上がった食品です。
だからコクや風味が簡単に追加できておいしくなります。

現場3:煮込み料理

煮込むことでの加熱料理でメイラード反応を起こしていると言えます。

現場4:焼き魚

高温で加熱することで、メイラード反応を起こして香りをつけています。
例えば醤油やみりん、ゆずなどに漬けて焼く”柚庵焼き”がありますが、これはみりんや醤油などの成分により、低温でもメイラード反応を起こしやすくする効果があります。

現場5:ドライエイジ(乾燥熟成)

肉をドライエイジすると、うま味成分が増えます。
つまりアミノ酸が増えるのですが、メイラード反応は糖とアミノ酸によるものです。なのでアミノ酸が増えることでメイラード反応はより効果を増します。
さらにドライエイジで水分を飛ばしているので、これもメイラード反応の条件の一つである水分量に関係して、より一層メイラード反応が進みやすくなっているのです。(詳しくは前回の記事を見てください)

現場6:バター醤油

おいしさ間違いない王道の組み合わせですが、これはバターを溶かして加熱することでのメイラード反応と、さらに醤油をいれてメイラード反応を起こしています。うま味も加わるので、ダブルのメイラード反応+醤油のうまみ+バターの油脂で4重の相乗効果を起こしています。

現場7:黒ニンニク

実は黒ニンニクは酵素反応で熟成しているわけではなく、メイラード反応によって起こっています。
1か月間、70-80%の湿度で、60-80℃の温度帯に置くことで黒くなります。

以上、このように考えると、その他の食材でもメイラード反応を利用してうま味を倍増して、よりおいしい料理を作ることができます。

しかし、これはもはや料理業界において常識です。だいたいの料理人は知っているでしょう。

ですので、もう”一段階”深く考えるために、“メラノイジン”についてお伝えしようと思います。

“メラノイジン”については、知らない人は多いかもしれません。

焼き物、炒めものなどで、あまりにやりすぎると、焦げます。
メイラード反応の過程の中で起こることですが、この焦げも含めて茶色く生成される成分、食品の糖化産物を“メラノイジン”と呼びます。

【メイラード反応で生成されるメラノイジンは最強の抗酸化物質】

みそ、しょうゆ、パン、クッキー、コーヒー、焼き肉、焼き魚などの茶色や褐色の食品や、色が濃い味噌ほどメラノイジンも多いです。

メラノイジンの効果は、最強の抗酸化物質と呼ばれるだけに、ものすごく体に良い効果があります。

  • ラジカル消去能が高くなる。

  • 発がん性ニトロソアミンを阻害する。

  • 腸の粘膜回復、小腸の再生

  • 乳酸菌を増やす

  • 活性酸素の除去

  • 耐糖能の改善

  • 抗がん作用

  • 高血圧の予防

  • 変異原性の抑制など

1番目の「ラジカル消去能」のラジカルとは、
フリーラジカルと呼ばれるもので、フリーは「自由な」、ラジカルは「過激な」という意味で、「自由な過激分子」というような意味合いです。
フリーラジカルは細胞内の遺伝子を壊し、ガンの原因を作るなど、さまざまな健康被害をもたらします。それを消去してくれる機能が高まります。

また、活性酸素もフリーラジカルもそうですが、
大気汚染、薬物、放射線、紫外線、有機化合物、重金属などによって作られ、またタバコや食品添加物などによっても作られます。
最後にある“変異原性”というのもこれらの有害物質に認められる性質のことです。

耐糖能は、食事から摂取したブドウ糖(グルコース)を処理する能力のことで、糖尿病などに関わってきます。

その他はなんとなく、体に悪いものをやっつけてくれる作用があるというが理解できると思います。

↓念のため、こちらはメラノイジンの効能について書かれた論文の番号なので、詳しく知りたい方は論文検索してください。
2002 Volume 97 Issue 4 Pages 253-256

さて、ここまでメイラード反応から始まり、メラノイジンのメリットや良い面だけを伝えてきましたが、健康においては注意しなければならないことがあります。

それが【AGEs】と呼ばれるものです。メラノイジンもAGEsの一つなのですが、現代人はこのAGEsによって、さまざまな病気を引き起こしています。

「メイラード反応はおいしくなるから、どんどん利用してメイラード反応食品を食べよう。」と、ここまでの知識であれば、大変危ないことになるかもしれません。

次回は、このAGEsの実態と、それを防ぐための方法や、AGEsを阻害する栄養素や調理法についてお伝えします。

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