体の陰陽と食べ物の性質のこと

自分の体を知るときに、対象となるものでざっくりと区分けしてみると理解が進みます。
対象というのは、裏表、上下、右左、朝晩……こんな具合です。
例えば不調のある場所の対になりそうなところ、左手が痛いなら右手、手の甲が痛いならてのひら、などの様子を観察してみます。ご自身のことであれば痛みや感覚など主観的な部分もわかるはずです。
さて、この対象となるものに、陰陽があります。中医学の証の分類(現代医学でいうところの病名みたいなもの。よく体質診断などで出てくるものです。)となると細かく自分で判断しかねるものも多いかと思いますが、大きな部分で見てみて、自分にはなにが不足しているのか、なにが過剰なのかを、陰陽という視点からみてみましょう。
対象となっているものはバランスです。陰が不足していても、陰が弱っている症状が出るのか、相対的に陽が勝ることによる症状が顕著に出るのかという違いはややあります。このあたりは置いておいて、そもそもの陰と陽の性質からご自身の偏りがどこにあるのかイメージしてみてください。
陰・・静かで、内側や底のほうにあり、適切に潤し、冷ます存在
陽・・動きよく、外側や表面にあり、適切に運び、温める存在
例として、陰が少ないと体の熱を下げられないのでほてります。潤いが不足して、乾いた症状が見えてきます。体の中がむやみに熱くなります。結果として暑がったり、水を飲んでも飲んでも体の中で冷やす作用がなされません。夜間の睡眠を取らないことで、補給しにくくなります。
陽が少ないと寒さを感じ、表面の囲いが外れてしまうので意味もなく汗をかきます。表面の状態がよくないので、外から侵入して悪さをするものにあっけなく入り込まれてしまうようになります。極端に減れば動くのが億劫になり、動かないことでまた減ります。

食べ物の性質で陰陽と調べると、おそらくまったく別な(東洋医学を元にしてはいるのかも知れませんが)思想がひっかかることと思います。食べ物の性質については、温かいか冷たいか、五味はどうかを調べてみるのがよいでしょう。冷温については、寒→冷→平→温→熱という順で温かさが変わってきます。五味については、それぞれ五臓六腑に関連して、酸(すっぱい)苦(苦い)甘(あまい)辛(からい) 鹹(しょっぱい)の五つがあります。
私自身は主に、本草綱目や本朝食鑑という書物を参考にしています。また、漢方として使われることもある食材については(生姜やニッキのような香辛料や動物の部位)漢方としての見方も確認してみます。
なかにはその食材の存在の性質そのものとして陰陽が語られていることもありますが(例えば水を天からくる陰性のものと呼んでいたり)、先に記載したような思想の表などはあくまでも発案者のかたによる独自のものなので、また違った点も出てくるでしょう。

陰陽のそれぞれの性質、出てくる症状について書いたとおり、ではご自身で食べ物を用いて養生する場合、不足するものや、摂取しているもので見直してみるとよいもの、と考えてみるとわかりやすいです。
陰が足りない場合、体の潤いが足りず熱されています。きゅうり、ほうれん草、豚肉、もやしなどが冷たい性質を持つものがよいでしょう。
陽が足りない場合、体を温め陽気を高めることを求めます。ねぎ、大根、鰤、生姜(加熱したもの)などが温かい性質を持つものがよいでしょう。
食べ物にどんな性質があるかの判断基準としては、時期や産地、製法をみてみます。例えば夏が旬のもの、南国のもの、精製度の高いもの(ただの食塩や上白糖)は体を冷やす性質を持つものが多かったりします。反対に冬が旬のもの、北国のもの、は温める性質を持つものが多いようです。古い資料の中には現代の食材、過去に日本では一般的でなかった食材の記述がありませんが、例えばバナナは南国のものだから体を冷ますだろうと推測でき、ピーマンはナス科なのでなすに同じく体を冷ますことが想像できます。
他に、調理法として、生で食べるほうが体を冷ます性質に寄る傾向があります。油を使って揚げる、炒めるなどのほうが、温かい性質に寄りやすいです。

食養生は一つのものを大量に食べることで成されるものではありません。和食のレシピでは温と冷の食べ物を組み合わせ、そのお料理の性質を平に近づけているものも多く存在します。(例えば、冷奴は豆腐(冷)に生姜(熱)を載せるなどし、一緒に食べることで性質のバランスをよくしています。)
性質を知りそれによって補う以前に、食材や食べ方の偏りを省みて、そのバランスを取ってみることが第一歩です。生活の一つ、ご自身で見直せることの一つとして、ご自身の傾向を振り返ってみてはいかがでしょうか。

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