大曲都市さんのセミナー参加記(後編)
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さて、もうひとつのトークショーは、6月23日に学芸大学の書店『BOOK AND SONS』で行われた『FormTALK vol. 9「タイポグラフィの佇まい」』です。
デザインスタジオ&Formが主体となり、広義における「デザイン」の本質的な豊かさを国内外に伝える、グローバルデザインプラットフォーム『Form』。主宰の丸山新さんがナビゲーターとなり、大曲さんにお話を伺う構成で、留学時の体験や海外での働き方から、現在進行中のお仕事までをご紹介いただきました。
ここでも楽しく興味深いお話が満載でしたが、特に印象に残ったのは、大曲さんが大好きでこれからも仕事をしたいと希望されているゲームのフォントのお話でした。
大曲さんは2020年に『アーケードゲーム・タイポグラフィ』という本を出版されています。これを読んだ(見た?)ときには、ビットマップフォントの種類ってこんなにもたくさんあったの?そしてそれぞれの工夫がえぐい!と感嘆しました。
↑大曲さんの解説?動画も発見しました。これはわかりやすい!
ラテンアルファベット、というとプロポーショナル(文字ごとに幅が違う)であることが当たり前になっていますが、初期のゲームフォント(というかコンピュータのフォント)は等幅だったんですね。少し前のことなのに、すっかり忘れてしまっていました。
もちろん今も等幅のラテンアルファベットフォントは多数ありますが。
そしてこちらはトークの中でもご紹介いただいた、大曲さんがカスタム書体のデザインをしたゲーム『Inkulinati』。中世の写本とインクをモチーフにし、挿画のキャラクターたちがバトルをするゲーム。おしりからおならブーみたいな攻撃がかわいい面白いです。
バトルの内容が随時テキストで記録されていくんですが、そのブラックレター 書体が大曲さんのフォント『Inkulinati』です。ブラックレター と言うと読みづらいものだと思っていましたが、これはちゃんと読めます!
ゲームはPC(Steam)でプレイできます。Xbox、Nintendo Switchでも出ているみたいなんだけど、その情報は見つからず。引き続き探してみます。
続いて大曲さんのフォント作品をいくつかご紹介いただきました。中でもベストセラーになっているのが、Comic Sansにインスパイアされて作ったという『Comic code』も、等幅フォント。その名の通り、コーディングやプログラムを書く際に使用することを目的として作られています。
コードは等幅でないと書きづらいし読みづらいですもんね。
おお、これは読みやすい!し、なんというかあったかい感じがしますよね。
Comic Sansはとかくバカにされちゃう系のフォントですが、意外とみんな好きなやつ。プログラムを書くときって、印刷物に使うのとは違って「自分が読みやすくて、気持ちが上がる」的なフォントが一番です。
(2号はトラブルシューティングでターミナル叩くくらいしか使いませんが)
大曲さんと丸山さんとは、お仕事でもつながりがあるそうで、最後に現在手掛けていらっしゃる東京ドームシティのVIデザインを一部見せていただきました。
ロゴはこちらで見ることができます↑
特徴的なのは、インクトラップのように深く刻まれた形、有機的な曲線、サンセリフなのに一部セリフのような飾りがついています。すごく独特。
そして、これも等幅フォントなんです。
等幅フォントはひとつのトレンドだとおっしゃってました。
デジタルサイネージに向いているんだそうです。確かに。
「等幅」個人的にも気になるキーワードです。
もう一つの特徴は、ものすごくすごく超ワイドから、めっちゃスリムなコンデンスまでの軸とウェイト軸とが両方バリアブルで用意されていること。↑のモーションを見たらわかりやすいと思います。会場では画面いっぱい?ってくらい幅広なのも見せてもらいました。
ここまで形が、変わってもデザインが崩れない、イメージを保つというのはかなり難しいことのように思えます。
また、左右幅と同時に線の太さも変化しているので、その調整は(前例もなさそうだし)たいへんそうです。
ともあれ、ものすごく斬新で、そして今の時代感を感じる取り組みだと思いました。めちゃ面白い。今年の8月にリニューアルするそうなので、楽しみに待ちたいと思います。
また、『Form #1: FormSWISS』に続き、『Form #2: FormTOKYO』が間も無く出版される予定で、大曲さんのインタビューも掲載される予定だというお知らせもありました。こちらもとても楽しみです。
長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。
フォントかるた制作チーム2号、伊達千代
フォント名を読み上げて、そのフォントで書かれた札を取る。「フォントかるた」の制作チームです。書体やフォントに関するあれやこれを楽しく綴ります。https://www.fontkaruta.com