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【電話代行サービス『fondesk』5周年特別企画】「買い手思考」のセールスで超情報過多時代をたくましく生き抜く fondesk脇村×インサイドセールスプラス茂野氏が紐解く、これからのビジネスの歩き方


株式会社うるるが提供する、電話代行サービス「fondesk(フォンデスク)」は2024年、サービス開始から5周年を迎えました。
これを記念してお届けするスペシャルコンテンツ第二弾は、インサイドセールスの第一人者として知られる株式会社インサイドセールスプラス代表取締役 茂野明彦氏と当社執行役員 脇村瞬太による対談企画です。

コロナ禍を経たいま、インサイドセールスの最前線はどう変わっているのか、新たに登場した生成AIの脅威とチャンスとは、新時代を生き抜くための心構えとは――。すべてのセールス担当者の背中を後押しする、二人の熱いトークをお届けします。(本文、敬称略)


なぜ日本のバイヤーに1000万円プレイヤーがいないのか

脇村:まずは、自己紹介をお願いします。

茂野:株式会社インサイドセールスプラスの茂野です。セールスフォースに入社した2012年からインサイドセールスに携わり始めて、これまでツールベンダーの支援や出資、カンファレンス開催による啓蒙活動に力を入れてきました。
 セールスフォース時代にカルチャーショックを受けたのが、アメリカでは営業電話の着電率が80%以上と高く、かかってくる営業電話に対して受け手がとてもポジティブなことです。そのため、新たな課題が生じたときも「あのベンダーに相談したら何とかなるかも」と、早く動くことができます。アメリカでは、こうした“良い買い手”のビジネスパーソンとしての評価が高く、優秀だと言われます。日本もそうなったらいいな、という思いがあってここまでやってきました。
 一昨年からは『Inside Sales Plus』というメディアも始めて、現場が本当に欲しいと思えるノウハウの提供、売り手と買い手をつなげるマッチングを行っています。

脇村:早速ですが、いまのアメリカの話、日本とはずいぶん違いますね。

茂野:そうですね。まず迷惑に思うことはありません。これは私も同じです。なぜなら、情報の速度は「価値」になるからです。
「茂野さんはどうやって情報収集しているんですか?」ってよく聞かれるんですが、人に尋ねるほど情報を求めているのに営業電話だけはすごく嫌がることを不思議に思っています。日々たくさんのプロダクトやサービスがリリースされているのに、知らないことは劣位です。最新のものは取り入れたほうがいいかもしれないし、競合企業はすでに使い始めているかもしれません。ですから、向こうから届けてくれることの何が嫌なのか、という考え方です。

脇村:日本では、「買ってほしい」を連呼するような電話の多いことが、うまく受け取れない理由の一つかもしれませんよね。

茂野:そうですね。もう一つは、買い手が評価されないからだと思います。たとえば、外資系ITセールスパーソンって、高給なイメージがありませんか。年収1000万円を超える人もたくさんいます。売り手はそんなに高いのに、なぜ買い手は高くないんでしょう。たとえば、営業支援システムを導入して売上が10%伸びるとして、ここまで売上を伸ばせる施策は、なかなかありません。効果のあるツールを選定・導入し、オンボーディングして成果を出すまでやるなんて、企業にとっては大きな「価値」になるはずです。
それなのに、買い手の年収が1000万円を超えないのが私は腑に落ちないんですよね。たとえうまくいかなかったとしても、その経験は必ず次に活きるはずですし、買い手としてチャレンジすることは素晴らしい経験になると思います。

脇村:僕もうるるに入社後、たくさんのツールを入れてきましたが、これって貴重な経験なんですね。そして、社内から評価も得られていると思っていたので、なんだか意外です。

茂野:トップセラーはいるのにトップバイヤーがいないんですよね。けれども、これは絶対に価値になるので、職務経歴書にはしっかり書いたほうがいい。『SaaSのプロダクトを何個も選定して導入した』と書いてあったら、私はぜひ来てほしいです。社内の力だけで会社を大きく成長させるなんてほぼ無理ですから。そう考えると、この分野に対する知見や経験があることは明らかにプラスです。


電話代行サービス「fondesk」の特長を味方につけた「買い手思考」のセールスとは

脇村:5年前に「fondesk」をリリースした当日、茂野さんは「話が聞きたい」と真っ先に連絡をくれました。
翌日、渋谷でコーヒーを飲みながらfondeskの仕組みを紹介したところ、さっそく個人で導入してくださいました。それは茂野さんの立場上、買い手側が導入した場合にどう対応する必要があるのか、知る意味もあったと思います。
ただ、後日、『「fondesk」は“中の人”にきちんと伝えてくれるサービスだから、ハックしたらいい』とnoteで発信してくださったことに、僕たちは救われたんですよ。

▼しげのさんのnote:fondesk(電話代行)はISの敵か?味方か?

というのも、「fondesk」がセールスの人たちの敵のように見られたら嫌だなって思っていたからです。我々も営業活動をしますし、個人的にもそういうお仕事をされている人が周りにいっぱいいるので。
茂野さんの発信があったから、僕も堂々とやろうと開き直れて、いいスタートを切ることができました。実際、「fondesk」に対する周りの反応っていかがですか?

茂野:総合的に良いサービスとして受け止められていると思います。
なぜなら、確実に電話に出てくれて、内容も聞いてくれて、絶対に伝えてくれるからです。つまり、握りつぶされたり、面倒だから報告しなかったりが起こりません。こんなにありがたいことはないですよ。
しかも報告はテキストベース、かつ時間があるときに受け取っていただけるので情報の視認性と網羅性があります。たとえば、URLです。極端な話ですが、電話越しに、「一言一句違わず打ってください。エイチ、ティー、ティー、ピー……」ってお伝えすれば、オペレーターさんはその通りにリンクをつくってくれるので、担当の方にはクリックすればサイトに遷移できる状態で届くわけです。だから、ウェルカムですよね——のようにお話しすると、「たしかにそうですね」ってなる人がほとんどです。

脇村:どうすればお客さまにつながるのか、しっかり考え抜くセールスの方からするとポジティブだよね、ということですね。

茂野:「fondesk」をネガティブにとらえている人は、「売り手思考」なので、攻略できないのだと思います。「買い手思考」で情報がどのように届けば興味を持ってもらえるのかを考えれば、いくらでもコミュニケーションの取れる方法はあるはずです。


変わるコミュニケーション 売り手のポイントと留意点

脇村:コロナ禍の5年間でインサイドセールスも進化していますし、対面商談が以前に比べて減っているので、茂野さんのお仕事の重要度は高まっていると思うのですが、セールスの現場に具体的な変化を感じていますか?

茂野:コミュニケーションのあり方自体が変わりましたよね。コロナをきっかけに「fondesk」を導入されたところもあるし、オフィスへの出勤率も下がったので、たとえば代表電話ではなく取引先担当者の携帯電話の番号をもらおうみたいな動きは増えました。対携帯電話に対するコミュニケーションをどうしようか、という話にはよくなりますね。

脇村:架電ばかりするのではなく、携帯にどんなメッセージを残そうか、とか。

茂野:そうです。SMSは絶対に使ったほうがいいですね。携帯電話に知らない番号から着信があったら出づらいと感じる人も多いので、安心してもらうために何者が電話をかけてきたのかを知らせる必要があると思います。「この番号から電話しました」「この件で、この番号からご連絡するので、もしよかったら応答してください」のように活用できます。

脇村:たしかに。それだったら電話に出るなあ。安心感が全然違いますね。

 このように、オフィスの固定電話から個人の携帯へと連絡先が替わっていくと、なおさらセールスプロセスの個別化が進むことになると思いますが、営業成果は上がるのか、下がるのか、どうなんですか?

茂野:総合的に考えれば上がると思います。携帯にかけたほうが着電率は絶対高いし、折り返してもらえる率も高いですから。買い手も、不誠実なコミュニケーションを売り手が続けるようなら着信拒否できます。

脇村:なるほど。ただそうなると、不誠実な売り手は「つながらなくなったな。ま、次に行けばいっか」のように、いつまで経ってもつながらない理由が分からないままになりそうです。

茂野:それが続くと社員はしんどいですよね。日々ゼロから無作為抽出による“くじ引き”みたいな電話をさせられ、ときにクレームをいただくこともあるでしょうし。そうなると、やりがいを感じられず働き手はどんどんいなくなるので、中長期では会社がダメージを受けることになると思います。

脇村:インサイドセールスは、若いビジネスパーソンなら異業種からでも入りやすいポジションなので、キャリアチェンジや転職を考えたとき、不誠実な営業スタンスの会社に入ってしまうと悲劇ですね。

茂野:そうならないように、その会社がどんなツールを使っていて、どういう体制を敷いていて、どんな業務をしているのかは面接で絶対に聞いたほうがいい。明確な思想があって、ツールにもしっかり投資しているようなら、部署や社員は投資対象です。逆の場合は浪費対象なので、そこで判断できると思います。

 

人材ニーズの逆転が起きる? 生成AIの潮流待ったなし

脇村:生成AIの話題にも触れていきたいんですが、電話営業の中にもAIが入りつつあって、仕事の一部を変えてきているんじゃないかなと思っています。
これから私たちセールスパーソンは何を学ぶべきなのか、茂野さんの考えを聞かせてください。

茂野:生成AIの登場はとてつもなく大きなイノベーションだと思っています。先行者が出す成功事例を待っているようでは手遅れになります。まだ触ったことのない人は、いますぐ始めたほうがいいですね。
 生成AIの利点ですが、一つは圧倒的に業務効率が良くなることです。仕事って80%ぐらいまでは誰でも進められるものの、残りの20%は個人の創意工夫が活きる部分です。ただ、生成AIによって80%までが一気に仕上がるようになりました。たとえばメール文面やプレゼン資料です。数時間かけていたものが数分、数秒でポンと出てくるので、そのツールを扱える人なのかどうかで人の価値が変わってきます。10人分働けるようになった感覚ですよね。手遅れになるとはこのことです。
 弊社はこの4月に『Insidesales AI』をリリースしています。これは、お客さまのお困りごとをどんどん聞いて最適なベンダーをレコメンドするものですが、以前はインサイドセールスの仕事の一つでした。つまり、人に替わってAIがお客様に提案できるようになっているんですね。厳しい言い方をすると「あなたじゃなくてもいいよね」という世界がすぐそこまで来ています。

脇村:80%までは一瞬でできるようになったので、人間は残りの20%の仕上げにこだわらないといけない、ということですよね。

茂野:そうです。そこで満足する人と、もっとやれる人に二分されていくと思います。AIを使うにしろ、AIの言うことが正しいかどうかを判断できないと意味がないので、ここには経験が必要ですし、その先にこだわれる引き出しがあるかどうかも大事です。何の経験もない人が、AIが書き出したメールをそのまま送るのと、経験者が「ここだけ変えて送ろう」「ここは間違っているから調べ直そう」とこだわるのでは、レベル感が違ってきます。
今の採用市場でいえば、いまはデジタルネイティブで育った若い人を求める企業が多いと思いますが、60代以上の世代が大活躍する未来もあると思うんですよね。自身の経験から何が正しいのか判断できる引き出しを持っているからです。「このメールであれば興味をもっていただけるかもしれないが、事実ではないな。」って。この先、キャリアの逆転現象が起こる可能性は否定できません。

脇村:従来なら量をこなせなくなったミドルエイジのセールスパーソンの市場価値は下がる傾向にあったのが、AI活用によって経験が活かせるようになる、ということか。面白いですね。

茂野:だから若い人には頑張ってほしいです。令和型マネジメントは強要しないことが多く、自律できない人の将来は本当に厳しくなると思います。

脇村:しかし、一昔前なら下働きのような経験も時間を与えてもらえましたが、いま厳しいマネジメントをしてくれる会社は少ないですからね。若手にとって大変な時代なのかもしれませんね。

茂野:そうですよね。能力が足りない分を時間でカバーすることが禁じられているようなものですからね。加えて、オブラートに包んだようなマネジメントを額面どおりに受け取っていたら、何の価値も生み出せない人になってしまいます。

脇村:同じ指摘をするにも、「もっとこうしたらいいんだけどね」とゆるくアドバイスをされるのと、「こうじゃないだろう!」と厳しく正されるのとでは、受け手の解釈も真剣度合いもまったく変わってきます。でも、基本的には「優しすぎるコミュニケーション」が増えているので、良いストレスを受けながら成長できる機会が奪われていますよね。
このような令和型マネジメントに弊害があることは世間の共通認識になりつつあって、マネジメント側も改めて変化していく必要を感じます。


令和型のマネジメント方法を高校スポーツから読み解く

茂野:これからはマネージャーがタレントであることも重要ですよね。リスペクトが集まりやすいじゃないですか。「この人は外部から評価されているのか、それであれば学べるものが多そうだな」と。『組織は組織長の器で決まる』とはよく言われていますが、それが如実になってきています。
ミドルマネジメントの期待値は年々上がっているので、ここは大きなテーマになると思います。

脇村:ミドルマネジメントとは、30~40歳辺りを想定していますが、ギリギリぬるくないマネジメントも受けてきたというか、いわゆる「下働き時代」がまだ残っていた世代ですよね。ただ、自分たちはそうやって育ってきたのに、会社から「ハードな業務指示は止めてね。たくさん働かせないでね」って経験したことのないマネジメントをさせられているのが現状です。
とはいえ、ハードでもいいから成長を促すマネジメントをしてほしいなんて、会社はなかなか強く言えません。会社から言われていることとは違う方針でマネジメントを行うのは難しいと感じます。

茂野:でも、会社から言われていることをやっているだけでは上位層にはなれません。ただ、マネジメントは役割の定義が不十分だったり、相対的に評価しにくいものだったりするので、どう能力開発すれば良いかが分からないことも課題ですよね。
 私も若手のマネジメントをすることが多いので、高校スポーツをベンチマークしています。厳しいことをやらなきゃいけないのにやれない世の中にあって、成果を出している高校は何をしているんだろう、と。
だから、電話で聞くこともあるし、実際に見に行くこともあります。成果を出すチームのマネジメントは、相手のコミットメントに基づいたものになっています。
転じて私も、「いまの時代、マネジメントに正攻法はありません。マネジャーに3年でなるのか、1年でなるのか自分で決めなさい。3年なら時間をかけられるからゆっくりでいいけれど、1年ならそうはいかないので君が頑張らないと無理だし、私のフィードバックも厳しくなるよ」って示すんです。そのうえで相手の選んだ育成を行います。 
 それから、強豪校の朝練は自主参加です。でも、ほぼ全員参加します。勉強も手を抜いていません。部室も超キレイです。私の見た野球部は1on1もしていましたし、練習メニューも全員違います。そうなると、どんなに厳しくされたとしても、ここが最高の環境だって思ってもらえるはずなんです。その環境であれば耐えられるし、負荷を上げて強くならなければいけないことも理解したうえで取り組める。「いまは強要できない時代だから、上にいけない子が増えた」とは、イチローさんの言葉です。求めない限り、そうはなれないのは、スポーツもビジネスも一緒ですね。


「新サービスの登場」はチャレンジできるチャンスである

脇村:茂野さんって、常に先を見ていますよね。未来のイメージがしっかりあるじゃないですか。だから、「いまからが大変だ」「強度が高いことをやらなきゃいけない」って言いつつ、さほどしんどさは感じていなさそうです。

茂野:焦りや恐怖のほうが大きいですよ。だから、ずっと自分を煽っています。

脇村:自分で自分を焦らせているような姿勢ですよね。

茂野:そうですね。だから、外の人に会うことをとても大事にしています。刺激を受けるし、いろいろな情報にも触れられます。自分は怠惰だし、絶対易きに流れてしまうって分かっていますしね。

脇村:身の置き場が一番重要ってことですよね。ストイックな場所にいることで、成長があるから。置き場を変えて楽になるほうを選ばないじゃないですか。

茂野:変化しているほうが楽しいという私の人間性もあると思います。「fondesk」もしかりですが、新しいサービスが出たときにチャンスが来たと思ってほしいんですよね。そのチャンスをものにしている人が周りにいる以上、自分もやらなきゃいけない。そんなふうに捉えてほしいですね。
お客さまへのアプローチもそうです。私は、こんなアプローチをしたら反応がいいんじゃないか、話が弾むんじゃないか、商談につながるんじゃないかって考えていましたし、周りと同じことはしたくないと思っていました。
だから、変化があったときにはそれを楽しんでほしいですし、相手のためになることなら最高です。そう考えているほうが成果につながると思います。

脇村:この5年、茂野さんのビジネスへの感じかたはほぼ変わっていないですね。

茂野:そうですね。本質的には買い手思考なので。ただ、繰り返しになりますが、テクノロジーへのキャッチアップは、必死にやらなければいけない時代になっています。
ですから、セールスの人は資料請求するところから買い手側の体験をしてみることをおすすめします。どういう気持ちになるのかを知れますから。ただ、それは自分が使いたいサービス、興味のあるサービスに限ります。
そうやって解像度を高めて購買導線を考えられるようになれば、仕事はもっといいものになるはずです。興味がある方はこちら(https://b.insidesalesplus.com/)から商談設定してみてください。

脇村:ありがとうございます。きょうは原点に帰ることができましたし、fondeskリリースから5年後の答え合わせもできました。
またぜひお話を聞かせてください。