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こんな本はいかが㉓ 恐竜まみれ 〜発掘現場は今日も命がけ〜 小林快次

人呼んでダイナソー小林、またの名をファルコンアイ!(ホークアイともイーグルアイとも呼ばれるが、本人はどうでもいい様子(本文より))
恐竜の世界的研究者・小林快次先生の本。

サブタイトルにあるように、アラスカでグリズリーと遭遇したりモンゴルで濁流に飲まれかけたりヘリコプターが落ちかけたりと冒険家のような体験談が綴られている…が
やはり本業は古生物学者。それらの冒険を経て発掘された化石。その状態をもとに推理し、自身の培ったデータベースをフル活用し化石となった生物の種類と当時の状況を割り出す。
「発見された卵の化石群に胚化石が全くないのは何故か?→孵化するまで親恐竜が見守る習性があった可能性が高い」
「化石に噛み傷のあとがあった→噛み跡と、同時期に生きていた生体の特徴を照らし合わせて条件にそぐわないものは消去、襲った犯人(恐竜)を特定」など
その姿はさながらフィクションの名探偵のようだ。

そして本書のハイライトと言えば、やはり北海道で発見された日本最高レベルの全身骨格「カムイサウルス(むかわ竜)」の発掘譚だろう。
現地で発見された尻尾の化石の一部をもとに、今までの経験/知識からその場所には全身骨格が埋まっているはずと確信、地域住民や自治体を巻き込み大規模な発掘を決行するも発掘は難航、自身も不安になっていく中…少しずつ他の部分も見つかっていき、見事全身骨格を掘り出すに至るドラマはプロジェクトXのよう。自身が休憩に腰掛けていた大型ノジュールが大腿骨化石だった、なんて冗談のような話も面白い。

自分自身、(本書を読む前ですが)北海道に行ってむかわ竜を見てきたので感激もひとしお。

カムイサウルス レリーフ(むかわ町穂別博物館)
カムイサウルス全身復元骨格(むかわ町穂別博物館)

このドラマチックな内容、恐竜好きはもちろん、そうでない人にもオススメです。

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