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なぜ「ゆとり教育」は失敗という評価を受けたのか
こんにちは、ラマです。
前回は「ゆとり教育」を再評価する記事を書きましたが、今回は「なぜゆとり教育はうまくいかなかったのか」の振り返りを中心に書いていこうと思います。
①学力の二極化
ゆとり教育が成功しなかった理由、それは「強制される学習」から「自分で選ぶ学習」への移行がうまく進まなかったことが挙げられます。
「自分で選ぶ学習」が導入されてから、積極的に学ぶ子や学ぶ環境(塾など)がある子と、そうでない子の格差が広がってしまいました。
勉強が嫌いな子にとっては「そもそも選ぶところからできない」のが結果としてあって、
何をしたらいいのかわからない→勉強しない→わからない→勉強しない→…
という負のループが出来上がってしまったのです。
そのころの日本は「家庭・地域の教育力」が低下し、ゆとり教育の掲げる「学校外での経験」が乏しくなっていたのも要因として挙げられるでしょう。地域に出なくても楽しい暮らしができる(テレビゲームなど※)ことを経験していた子どもは、ゆとりの時間を外に出ることなく、内向きに使ってしまっていたのです。
※ ゲームが悪いというわけではないです。要はその経験を活かせたかどうか、です。
こうして学力の二極化が始まると、PISAなどの結果から国際競争力の低下が叫ばれるようになりました。このことが「脱ゆとり」へ大きく舵を切るきっかけになったことは間違いありません。
②「達成すべきミニマム」
以前の「詰め込み型学習」では「小学校7割、中学校5割、高校3割」という意味の「七五三」という言葉がありました。これは学習の理解度を示す言葉で、学習についていけないいわゆる「落ちこぼれ」と呼ばれる子どもが相当数いたということです。そんな状況を打開しようと始まったゆとり教育ですが、それでも学習についてこれない子どもは一定数いたのです。
そこですべての子どもがここまでは到達する、というミニマム(最低値)を設定する考えが取り入れられました。学力が高い子どものことは考慮に入れながら、クラスのほぼ全員が「ここまでは習得したい」という下限を意識した指導です。
しかしそれは高学力の子にとっては物足りず、低学力の子にとってはやっぱり習得できない、という中途半端な結果を残すことになってしまったのです。
結局この考え方は学力の二極化をさらに推し進めることとなってしまいました。
習熟度別クラスに代表されるように、ミニマムを意識して学校でいろいろな取り組みが出てきたことは良いことだと思います。しかし、学習内容を削減すること自体が根本的な解決にはならなかった、というのが私の評価です。
③競争原理から切り離された子どもたち
ゆとり教育では、それまでの「相対評価」が「絶対評価」にかわるなど、生きる力や人間性を重視し、子どもたちを競争から遠ざけようという試みがなされました。
極端な例で言えば、運動会の徒競走で最後はみんなで手をつないでゴールする、ということが行われました。
この例はゆとり教育を間違った解釈で推進した例ですが、子どもたちは様々な場所で競争から切り離され、「自分らしさ」の追究が教育現場の重要課題になりました。
当時はインターネットの普及率もまだそれほどではなく、情報を得る手段がテレビ・新聞といったマスメディアが中心だったことも影響していると私は考えますが、このゆとり教育の現状を見た大人たちは危機感を覚えました。
そこに追い打ちをかけるようにPISAの結果が公表されると、いよいよゆとり教育に対するバッシングは大きくなりました。
日本型社会構造として、良い大学に入れば優良な企業に入社して、その中で昇進して将来は安泰、という終身雇用制度がありました。そのなかには企業間競争もありますし、企業内での出世競争だってあります。社会に出た後の市場原理は相変わらず「競争」だったのです。
このような社会情勢の中で「人に使われる」人材を育ててきたのがそれまでの日本型教育でした。
そこからの脱却を目指したゆとり教育でしたが、社会構造が変化していなかったこともあって、先生を含む大人たちの理解が進まなかったことも失敗と言われた原因でしょう。
はたして本当に「失敗」なのか
十分な成果を出せなかったゆとり教育ですが、これを「失敗」と見るかはまだ時期尚早のような気がします。
ゆとり教育を最長である小1から中1の7年間受けた世代は1995年生まれの世代で、今29歳です。まだ29です。この人たちが今後どのような活躍をされるかで、ゆとり教育の評価がなされるべきだと私は思います。
教育の評価は数十年たたないと本当の評価はできません。「ゆとり世代」と安直にレッテルを張ったマスコミ、PISAの直近の結果だけでダメと決めつけた政府を見返す活躍をしてほしいな、と40過ぎのおっさんからエールを送りたいと思います。
それでは!