ゆっくり朗読 「見送り」2017年9月21日
朗読動画
https://www.youtube.com/watch?v=j2VFIsKmjB0
記録
9月21日
気付くと小綺麗なホテルの寝室に居た。ベッドにはSくんが眠って居て側に貌の無い女が2人侍って居てちょっかいを出して居る。外へ出ようとすると引き留められる。振り向かないでと言われ背中に鍵を入れられる。これを出口で渡せばいいと彼がいう。長い階段を降り降る。どこから光が入って居るのかわからないのにぼんやりと白く美しい階段だ。降る、降る。外に出ると夜だった。ヨーロッパ風に着飾ったデタラメなサイズの人間がちらほら居る。広い庭だ。猫背の汚れて破けたスーツを着た男が話しかけてきた「あぁ、お嬢さんですね」はぁ、何も知らなくて。と言うと「外へは私が案内しますです」と変な敬語を使う。「手続きがあるからさぁ、こちらへ!鍵は?貰ったでしょう?」あぁ、はぁ、と出口の門に行き、目深に帽子をかぶったひょろ長い受付の男に鍵を渡す。「暫くかかりますので!私はこの辺にいますから、庭でも見て暇を潰してください」と言われる。外に出てきてから気になっていた森の脇にある湖を見に行く事にした。遠くから見ても湯気が立ちぼんやりと光る様は美しい。近づくと沢山の金魚が泳いで居る事に気付いた。底が光る湖の中を無数の金魚が泳いで居る。偶に湯気の反射なのか空中を金魚が泳ぐ。青い背のピンポンパールを見つける。その青が宝石のように美しくてこれはきっとSくんも好きだわと思って教えに行こうと振り返ると案内男とSくんが話していた。「Sくん!とても綺麗な青!」と言うとこちらに気付いた二人がやぁと手をあげる。こっちこっちと呼び付ける。青い金魚を三人で見てひとしきり笑う。「あぁ、そろそろ手続きも終わったんじゃあないかな」と案内男が言う。門へ歩いて行く、「俺は行かないから、外までよろしくね」とSくんが案内男に言う。「任せてくださいよ!」と上機嫌に応える。じゃあ、ここで。とお別れをする。「またね!」と私が言うとSくんは微笑んで手を振った。「お嬢さんこちらです」と手を引かれ案内男と森に入る。サファイヤの輝きが踊るシーンを思い返しながら満たされた気持ちで森を歩く。
詩「見送り」
9月21日
気づくと小奇麗なホテルの寝室に居り、ソファーに深く腰掛けていた。
ベットには知り合いのSくんが眠っていて側に貌の無い女が2人侍りちょっかいを出して居る。外へ出ようとするとSくんに引き留められた。
「振り向かないで」
そう言うと、シャツと背中の間にすとんと鍵を落とし入れた。
「これを出口で渡すといいよ」
長い階段を下りる。
どこから光が入っているか解らない、寧ろ階段や壁がぼんやり光っているのだろうか?白く美しい空間だ。
下り続け、外に出ると夜だった。
広い庭の植物たちは夜露に濡れていた。
中世ヨーロッパ風に着飾った人々が居る。彼らは人間なのに出鱈目なサイズで大きすぎたり小さすぎたりする。皆目的もなくうろうろしている。
それらを眺めていると、汚れて破けたスーツを着た猫背の男が話しかけてきた。この男は普通のサイズだ。
「あぁ、お嬢さんですね。」
と言う。
私は何のことですか?と言うと
「外へは私が案内しますです。」と変な敬語で答えてくれた。
「手続きがあるからさぁ、こちらへ!鍵は?貰ったでしょう?」
とニコニコ話しかけてくる。私はさっきの鍵を背中から取り出して見せる。案内男は嬉しそうにスキップをしながら出口の門まで案内してくれた。
門には三郎が居て案内をしてくれた男から鍵を受け取った。
「暫くかかりますので。私はこの辺にいますから、庭でも見て暇を潰してください」と言われる。
何やら手続きがあるらしい。
庭に出てから気になっていた森のわきにある湖を見に行くことにした。
遠くから見ても湯気が立ちぼんやりと立ち上がり光る様は美しい。
近づくと沢山の金魚が泳いで居る事に気付いた。
底が光る湖の中を無数の金魚が泳いで居る。偶に湯気の反射なのか空中を金魚が泳ぐ。青い背のピンポンパールを見つける。その青が宝石のように美しくて「これはきっとSくんも好きだわ」と思った。
教えに行こうと振り返ると、案内男とSくんが話していた。
「Sくん!とても綺麗な青!」と言うとこちらに気付いた二人がやぁと手をあげる。
こっちこっちと二人を呼び付ける。
青い金魚を三人で見てひとしきり笑う。
「あぁ、そろそろ手続きも終わったんじゃあないかな」と案内男が言う。門へ歩いて行く。
「俺は行かないから、外までよろしくね」とSくんが案内男に言う。
「任せてくださいよ!」と案内男は上機嫌に応えた。
「じゃあ、ここで。」とお別れをする。
「またね!」と私が言うとSくんは微笑んで手を振った。
「お嬢さんこちらです」と手を引かれ案内男と森に入る。
サファイヤの輝きが踊るシーンを思い返しながら満たされた気持ちで森を歩く。