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ゆっくり夢日記 「金魚」2011.10.05

寝起きに取った記録と素面の頭で補完した詩です。

朗読動画

記録 

2011.10.05

金魚を殺したいんだという相談を受ける。苦しめて殺したいらしい。塩水を勧める。金魚を殺すと「8日後、父親が死んだ」「追うように祖母も死んだ」というページを読む。

詩 「金魚」

2011.10.05

夜が明ける頃、私がいつものようにぼうと寝転がっていると戸がたたかれた。無視していたのにその音が鳴りやまない。
騒音に対してそれ相応の暴力を振るおうと戸を開ければ見知った顔だった。「煙草をさ、買ったんだよ」と言う。
まぁ、いいけども…。煙草は貰うが私は寝よう。そう思った。それじゃあと言おうと思って彼の顔を見た。
顔色が悪い。随分焦燥しているようだ。「金魚を殺したいんだ」と言うと、それを皮切りに延々と玄関で喋り続けた。
冗談を言って帰ってくれる雰囲気ではなさそうだ。招き入れ座らせる。
要約すると彼はとにかく金魚に苦痛を味合わせ殺したいらしい。カバンの中から水の入ったビニール袋を取り出した。
ビニール袋に入った雌の金魚は私を確認して自信ありげに水中をおよいだ。赤い金魚であった。
彼は何かに怯えながら金魚が入った袋をゆっくりとテーブルの上に置いた。
私の目にはなんの変哲もないお祭りによくいる金魚に見えた。和金という種類じゃなかったろうか?
彼は金魚によほど恨みがあるように思える。私が金魚を観察している間「死んでくれ死んでくれ」と何度もつぶやいていた。
キッチンの換気扇を回し、灰皿と二つのグラスに水をそそいでテーブルに置いた。
「まぁ、飲めよ。酒がいいかい」
「…水でいい。」
彼は相変わらず金魚を凝視していた。
これから首をはねられる罪人のように小刻みに震えていた。
煙草に火をつけて煙を吹かす、一つアイディアが浮かんだ。戸棚の塩をひと握りして飲みかけの水の入ったロックグラスに塩を入れて言った。
「海がいいんじゃあないか?塩水に彼女をつけてしまうんだ」
塩の結晶が安電球の光を浴びきらきらと光っている。塩が溶けだし透明なオーロラを作っていた。
ビニール袋のなかの真っ赤な金魚は楽しそうに泳いでいる。彼女は人間の話を理解しないのだ。
私は彼の目を見つめて説くようにいう。
「そうすれば彼女は自分が死んだ理由も解らず死ぬことだろうね。苦しみながらも理由が解らないなんてなんて惨めだろうか、だが」
言い切る前に彼は金魚を袋から取り出した。指の体温を感じ激しく身をよじった金魚は鱗を飛ばしながら抵抗したが人間の力に勝てることはなかった。彼女の生存本能的足掻きは片手でねじ伏せられた。暴れてはじけた尾ひれの亀裂が黒くじわじわとひろがり鰭が汚いものに見えた。金魚の目はギョロギョロと周りを見渡し続けていた。金魚の腹の形が変わる頃にはもはやグラスに半ば入っていた。彼は飛び跳ね脱出しようとする金魚押さえつけていた。掌でグラスに蓋をする。
ビクビクと何度も金魚は痙攣した。
金魚はグラスの中で暫く暴れたあとぷかりと水面に浮かんだ。
彼は随分疲れたようで煙草をテーブルの上に置くと黙って立った。
私は塩水でも金魚は浮くんだ、そもそも死体は沈むんだっけと考えていた。
またな、と言って彼を見送る。

次の日、彼は失踪した。彼の家に忍び込みリビングにあったノートを拾い読むと「8日後、父親が死んだ」「追うように祖母も死んだ」と書いてあった。 


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