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古い音、いい音。

古いものをいじるのは楽しい。古いものは音も面白いから。

物が何であれ、この音を生き生きと響かせていた頃があったんだなあ、と思いを馳せずにはいられない。そのパーツやローテクなカラクリに、ピノキオのゼペットじいさんみたいな人が作ったのかもしれない、なんて想像も掻き立てられる。

映画に音をつけるという仕事柄、音作りに使う小道具は実に多彩かつランダム。古い物もたくさんある。ガラクタもあれば骨董品も。電話機やタイプライター、鉄と木が絶妙に折り合う農耕具、何に使ったのかも分からない錆びた機械。古いものは音もキャラクターにあふれている。

この子たちが何を見てきたのだろうと想像せずには想像せずにはいられない。


時代を繋ぐ電話

古い電話いじりは大好きで、時々、ただいじる。それぞれの時代、それぞれの国で会話を紡ぎ、それぞれのストーリーを背負って、今フォーリースタジオの倉庫で出番を待っている電話たち。使ってあげたくなる。スタジオの電話コレクションの中に、ダイヤル式の赤いやつがある。それを手に持つときは、なぜかちょっと緊張する。時代物の映画では電話の受話器を置くシーンで必ず「チーン」を入れる。ファイナルでは使われないかもしれないけれど。その残響はマイクを通して聞くといつまでも続く。

長い電話

昔のアメリカ映画の中では、電話をしている人は必ずといっていいほど、本体を持ってうろうろある歩き回っていて、それを見て「カッコイイ」と思っていた。壁からやたらに長いコードが伸びていて、受話器と本体の間のくるくるコードも無駄に長くて、体に巻きついたりしてた。カナダに来て、なが~~いコードを見たときは、「おおー、これこれ!」と感動して、わざわざ電話を持ち上げてウロウロした。

現代劇に登場するスマホは、ボタンもダイヤルもないし、フォーリーの音づけの観点からするとあまりいじりようはないけれど、それが現代の「繋がり」の音であり、ポツポツと可愛らしい感じもちょっとある。いつの日かそれもまた、アンティークな音になっていくのだろうな。

愛しき古い音たちよ。


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