1.エグゼクティブのための経営の本質
1.ビジネスリーダーとは・・・
蛭川:リーダーとは一言でいうと?
野田:リーダーは見えないものをみて、自らが先頭に立って進んでいく人だと表現できます。
蛭川:見えないものとは?
野田:強いて言えば、この先の世の中の状況でしょうかね。特に現代は、物事自体が多様化していて混沌としているので、今もそうですが、未来が全くどうなるのか、予測不能です。
蛭川:そうですね未来が分かればいいですよね。でもタイムマシンがあれば便利ですが、なかなか難しいですよね。未来を予想する力、予言する力が必要ということですかね。
野田:なかなか預言者のように未来を言い当てるということは難しいと思いますが、いろいろなことを想定して準備をするということは、企業経営をしていくには必要なことだと思います。
2.サーバントリーダーシップとは・・・
蛭川:なるほど、リーダーには未来を見通す力が必要ということですね。そのリーダーについて最近サーバントリーダーシップというキーワードをよく聞くのですが、これはどういう意味ですか?
野田:サーバントとは使用人とか召使いという意味です。
蛭川:それとリーダーの関連が今一つピンとこないのですが、部下メンバーがイキイキと動けるように仕向けて行くという意味だと思うのですが、そのこととリーダーというキーワードの相性が良くないように感じるのですが・・・
野田:見えないものを見て、その方向性を指し示して、自らが行動するという話がありましたが、見えないものを見るのに自分一人でみるよりも、いろんな人の考え方を交えながら見ていくといんじゃないかと考えています。人間なので、どうしても自分の得意なものとか、興味のある所に目線が行きがちなのですが、多くの人の目線や興味がかぶることによって、満遍なく世の中が見えてくるのではないかと考えます。
蛭川:それとサーバントリーダーシップはどのように繋がってくるのですか?
野田:サーバントリーダーシップの対になる考え方が、専制的なリーダーシップがあります。専制的なリーダーシップは自分が先頭に立って、自分が見えない未来をみるということですが、みんなが見るように後ろから仕向ける、そしてみんなの意見を集約させて自分がそこに足を踏み込んでいくとスタンスこそがサーバントリーダーシップの本質ではないかと解釈しています。
蛭川:仕向けるってことですね?こたえというか、仮説がリーダーの頭にあるわけではなく、社員が自発的に考えられるようにもっていくということですか?
野田:そうですね。人材育成の考え方からしても自発的に考えられることはいいことです。現在の企業環境では経営者ひとりで考えるということには限界がきていますので尚更です。
混沌としている状況で発揮されるリーダーシップはサーバントリーダーシップを採用することで人材育成や見えないものをみる精度に対しても非常に効果があると考えます。一石二鳥にも一石三鳥にもなるんじゃないでしょうか。
蛭川:なるほど、良く分かりました。サーバントリーダーシップと専制的リーダーシップは、二律背反の関係にあるのですね。ところで私は年代的に専制的リーダーのもとで育ったのですが、よく言われていたのが、ある程度の役職になった時にそれなりの権威というか、怖がられるまでいかなくとも舐められてはいけない。ある程度の権威づけが必要と言われていました。サーバントリーダーシップをしきながらも権威づけというのは可能なのですか?
野田:近年人間のポテンシャル、潜在能力を引き出すやり方として心理的安全性が、とても注目されています。
蛭川:心理的安全性ですか?
野田:これは所謂個人個人が、自ら自分の置かれた状況に対して他人から怯むことなく自分自身の能力を最大限引き出すことができる安心安全な環境を設定するということです。安心安全な環境が保障されている状況下において、人は潜在能力を最大限に発揮するということが具体的な研究成果として実証されているのです。
蛭川:なるほど、恐怖政治の元では力を発揮できない人って多いですからね。
野田:そうなってくると専制型でガチガチに権威付けからひとを導くよりも、むしろサーバント型でメンバーの安全性を担保しながら自由に発想ができるように仕向けていった方が組織にとって良い効果が期待できるのではないかと考えています。
蛭川:ではサーバントリーダーシップには権威付けは必要ないのですね。
野田:直接ないとは言い切れないですが、今の混沌とした時代や多様性のあるメンバーを活用するには専制型には少し限界があるのではないかと考えます。
蛭川:確かに心理的安全性を持ちつつも権威を保つっていうのは難しいですよね。
野田:相反するものですね。
蛭川:とても良く分かりました。では心理的安全性を部下に対して提供するためにリーダーは何をしたら良いのでしょうか?
3.心理的安全性を提供するには
野田:そうですね。近年は人間の心理、特に行動時における心理学については研究が進んでいます。例えば私自身もそうなのですが、「人はみな同じ」ではなく、自身のタイプにより、異なる受けとめ方、感じ方、考え方をします。例えば計画や秩序に基づいて行動するタイムなのか制約を受けずに柔軟に対応するタイプなのかなどがあります。自分が好むスタイルがあって、そうしたスタイルを尊重してあげる事によって、メンバーがより能力を発揮していくということも言われています。
蛭川:状況に応じて対応を変えていくことを好むタイプがいるということですね。
野田:そうですね、加えて直ぐに決めたがる人と可能性を探し出したがる人というような二律背反の関係性についても、それぞれどちらかが正しいわけではないと言われています。
蛭川:その人のビジネススタイルみたいなものですかね?
野田:そうですね。自分と同じスタイルをメンバーに押し付けることによって、そのメンバーのストレスになったり、能力を発揮できない要因になるかもしれません。
蛭川:おんなじタイプだと上手くいくのですか。
野田:そうですね。同じタイプだと相手に対する理解度が進むということでしょうね。
蛭川:だけど同じタイプだけじゃないから、自分以外の他のスタイルもあるのだということを認識してその人に合わせたコミュニケーション、マネジメントをとっていく、そういうことなんですね。そうすることによって心理的安全性がより高まるということですね。
野田:近年いろいろなアセスメントが発達していますので、どのツールがいい悪いということはありませんが、やはりエグゼクティブの方には自己認識、自分の型というかタイプを認識する必要があるんじゃないかと考えています。
蛭川:自己認識力ですか。よく自分のことは良く分かっていない。他人の方がよっぽど知っていると言われていますよね。自己認識力のスキルは、何をしたら高まるのですか?
野田:私の場合でいくと、自分の型を知るとともに、使っていない型、反対の型ですね。それを意識できるようになったのは大きいと思います。
4.リーダーシップの身につけ方、学び方
蛭川:リーダーのスキルアップの方法としてどのようなものがありますか?
野田:リーダーと言われ人は、ある程度能力を有しているので、そういう立場にいらっしゃると思います。ですから基本的には、能力に関しては高いと思います。ただ人には得手不得手があります。そういう方の得意でない部分(高くない部分)を強化には、1から学ぶには効果が薄いと思います。むしろいろんなケース、経験を通して自分を振り返ることの方がご自身のスキルを高めるには近道だと思います。
蛭川:ひとつにはいろんな経験をするということと、経験をしたら振り返るということですね。
野田:おそらく誰でも経験をすると、振り返りの中でもっとこうすれば良かった、次やる時はこういうふうにしてみようというのがあると思うのすね。これこそ初めてリーダーが気づける自分の伸ばすべき内容じゃないかなと思います。
蛭川:あたまではPDCAが回っていて理解できるのですが、忘れてしまうこともありますよね。やっぱり書いた方がいいのですかね?
野田:そうですね。振り返った後に教訓化っていうのが必要と思います。
蛭川:教訓化?
野田:その結果に対して、良くても悪くても自分はどういうことを次の自分に伝えたいかということを一旦文章なり、キーワードにして整理をしていくことをしないと次につながりにくいのではないかと考えています。
蛭川:振り返りと教訓化は区別が難しいですよね。教訓化は綺麗な言葉に整理するという認識でしょうか?
野田:綺麗な言葉でなくてもいいので、一番皆さんが腹落ちするものを選んで、口に出して説明してみるといいと思います。それによって自分で思っていることも整理されますし、言霊として放った内容というのは、まわりまわって自分の深層心理に刻まれると考えています。
蛭川:なるほど
野田:よく頭の中だけで整理して終わったというのは、教訓化にはなっていないのではないかと思います。
蛭川:心身一如という、心で思うことと言葉で表現することが表裏の一体関係ということですかね。
野田:そうですね。言葉にしてみることは非常に重要です。私が経営者の方に必ず確認するのは、そこで何が分かったのか、何をすべきなのか、何をしないのか、きちんと言葉に出してもらうということですね。
蛭川:言葉に出して相手の反応を見る。それによって出した言葉をブラッシュアップしていく。そんなループでしょうかね?
野田:そういったやり取りはなかなか一人ではできないので、ワークショップを通じてだとか、コンサルティングの現場で例えばコーチング、そういったことが有効だと思います。
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