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箱入り娘佐賀に帰る 〜Bリーグ実況デビュー編〜
箱入り娘の導入はぜひこちらを。
・いざ帰国
週末に高校生の大会の実況を新潟で終え東京に戻った翌朝、羽田空港から佐賀空港へ飛び立った。Bリーグ実況デビューは地元佐賀県での月曜と火曜のナイトゲーム。帰省のときは福岡空港から唐津へという経路なので、佐賀空港へ降り立つのは実は人生で3度目。玄関の正面にバスが止まっていて乗れば佐賀駅に着くという流れ、素晴らしい!駅前でギリギリまで資料を作りアリーナへ向かった。SAGAアリーナは昨シーズンの開幕戦以来。佐賀県唐津市で18年間生まれ育った私にとってそこはまさに夢の国。地元のバスケットボール熱、キングスブースターの応援に心震わせながらも平常心、平常心、と言い聞かせた。しかし鬼の豆腐メンタルの船岡は試合前にお弁当が一口も食べられず(いつもは2試合連続で実況することが多いので何かしら食べるようにしている)フロアディレクターさんが栄養補助ゼリーとドリンクを持ち込んでくれることに恐縮しながらも4階の放送席へ向かった。
・2試合の激闘
昨シーズン準優勝の琉球ゴールデンキングスは3年連続ファイナル進出を果たしているまさに強豪。今季はメンバーの入れ替えがありながらも「良い時も悪い時も全員で戦う」まさにキングスカルチャーが深く根付いた強さをみせている。東アジアスーパーリーグにも参戦、非常にタフな日程のなかレギュラーシーズン5連勝中の勢いそのままに佐賀の地へ降り立った。一方の佐賀は今季唯一の新加入となった日本を代表するシューター金丸選手の活躍も光り12試合を戦ってきた。佐賀県出身の角田選手が今季の開幕ゲーム京都戦GAME2のあとに「僕が先頭に立って佐賀のバスケを盛り上げていきたい」と話していた姿が印象的で若きエースの決意を感じさせた。その角田選手の前節の離脱、ハレルソン選手の離脱もありとアクシデントに見舞われながらも勝率を5割とし、昨季4戦4敗の琉球から勝利をもぎ取れるかという注目の試合となった。
結果は琉球の2勝。琉球は7連勝となりここでも強さをみせた。月曜は6千人、火曜は5千人を超えるファン・ブースターの皆さんがSAGAアリーナへ集結。会場のボルテージは試合の展開に沿うように加速し割れんばかりの声援のなか興奮と期待が入り混じる会場で試合は行われた。
・ご縁とご縁が繋がって
佐賀バルーナーズの金丸晃輔選手、山下泰弘選手は明治大学の先輩である。金丸選手の怖いくらいのシュート力は間近で観てきたし、山下選手は私が現役のときは東芝でプレーをされていたので当時からよくやり取りをさせていただいていた。ちなみに、山下選手と宮永ヘッドコーチは一緒に何度か大学の練習に来てくださったこともある。先輩おふたりとは会場でご挨拶させていただき、金丸選手のひとり54得点伝説で盛り上がった。(2008年のvs順天堂大戦で金丸選手は3P15/18の54得点取っている)直属の先輩のあたたかさは胸にじーーーんと沁みました。
解説の川面剛さんとのご縁は高校生の時まで遡る。当時bjリーグのライジング福岡に所属されていたのだが、唐津市出身の千々岩利幸さんがチームにいらして確かそのつながりで唐津市文化体育館に試合を観に行った。(私は怪我で松葉杖だったので余計に覚えている)高校生の頃に試合を観ていた方と放送席でご一緒させていただくのは大変感慨深く、大学バスケ、九州繋がりなど沢山お話させていただいた。
そして、私と佐賀バルーナーズとの出逢いを振り返りたい。地元にチームができるという嬉しいニュースを聞き東京の地でその動向を陰ながら追っていた。大阪で天皇杯を戦うということで九州へは少し難しいが大阪へならと日帰りで応援に駆けつけた2018年12月。今思い返せばその試合もvs琉球ゴールデンキングスでご縁を感じる。まだロスターも少ないチーム、私の母校の先生も帯同されていた体制だった。あれから数年、この夢のアリーナで数千人の声が響くなか試合が行われていると思うと地元のバスケ熱の高まりが楽しみでもあり嬉しくもある。
・まさに帰る場所である「ホーム」アリーナ
アリーナの存在の大きさを感じた2日間でもあった。「ホーム」とはまさに帰る場所、みんなが待ってくれている場所、なのだと心から感じた。間違いなく会場の声援は選手の背中を押しているしチームの士気を高めている。逆にいうと、アウェーの地で自チームの応援に大勢の人たちが駆けつけてくれることの心強さは計りしれない。そう改めて学んだ今回のSAGAアリーナの熱気、キングスブースターの声援は強烈だった。今回のSAGAアリーナ、昨年夏のW杯の際に訪れた沖縄アリーナはまさにチームの「ホーム」でありその意義を痛切に感じることとなった。
・驚いたこと
正直船岡は少しビビっていた。昨シーズンのBリーグファイナルでは中継のリポーター・インタビュアーを担当させていただいたのだが、割れんばかりの「ゴーゴーキングス」に圧倒された。琉球の持つ強さ、このキングスカルチャーは間違いなくこのファン・ブースターの皆さん一丸となってのものだと感じる。ちなみに昨季アルバルク東京とのクォーターファイナルも有明アリーナでGAME3まですべて会場で取材をしたがここは沖縄なのかと見紛うような時間もあった。
Bリーグ初実況となった今回の2ゲーム。試合後には各種SNS、とくにXには沢山のコメント、メッセージをいただいた。そのほとんどがなんとキングスブースターの皆さんからのものだった。アウェイの試合を配信でご覧いただいてのことだと思うがそれにしても本当に本当にありがたく胸がいっぱいになるようなお言葉を沢山頂戴した。もちろん、他にも配信をご覧いただいた皆さんからのあたたかい言葉が並び恐縮するとともに、放送席に座らせていただく責任と覚悟の思いで背筋が伸びる思いがした。
・箱入り娘の新たな決意
感無量。そのひとことに尽きた佐賀の夜。正直余裕はまったくなかったけれど地元デビューとなった今回、なんとかその務めを果たさねばと思った。我がことのように応援してくださった方、喜んでくれた方、夜遅い時間にも関わらずメッセージをくださった方、本当に沢山のサポートのおかげで私は放送席に座ることができる。もちろん実況者としてのスキルも経験もまだまだでやらなければいけないこと、課題は山積みである。反省点ばかりだった2試合を振り返り改善していかなければならない。そしてまた決意を新たにした。実況を始めたときから変わらない信条「視聴者さんの目線を忘れない・コートに立つ選手、チームの皆さんに最大限のリスペクトを・感謝の思いを持って臨む」この3つを引き続き大切にし、1試合1試合の重みを感じながら次の試合へ繋げていきたいと思う。
Bリーグ実況が決まりさらには地元でのデビューになることを母に電話で報告をした際、これまでの感謝とこれからの決意を伝えると「あなたが頑張ったからです。あの時のみーちゃんに教えてあげたいね」と言ってくれた。泣きに泣いた。行きたかった高校も諦めたし、怪我でコートを離れることにもなったし、本当に沢山のことがあったけれど、すべての経験のおかげで今がある。あの日診察室で泣き崩れた箱入り娘へ、その涙の意味が変わる日がいつか必ず来る。
そういえば母校、唐津東高校の受験の面接では「唐津のバスケを盛り上げたいです」と口にしたらしい。なぜ「らしい」なのかというと私自身は覚えておらず、卒業式の日に野球部の顧問だった森先生が教えてくれたのだった。昔から涙もろかった私は高校の卒業式ではダントツで泣いていた。そんな私に先生が声をかけてくださった。森監督、通称、森監!今更ながらありがとう!
・そしてまたここからがスタートである
さまざまなカテゴリーの多岐にわたる大会の実況を担当させていただく。ひとつとして同じ試合はない。そのゲームに、チームに、選手に思いを馳せ言葉を紡ぐ。画面の向こうのあなたへ届くように真心を込めて。まだまだやるべきことは沢山あること自体が幸せなのだと日々感じている。夢はみるものではなく、叶えるもの。目標は立てるものではなく達成するものである。そして、壁は見上げるのではなく乗り越えてゆくのだと、これからも挑戦し続ける人でありたい。感謝の思いを胸に、まだまだ旅は始まったばかりである。
#Bリーグ #実況
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